バラルフドダンジョンのボス戦3
ユカリ、いや俺もフェルセもナツミが放った苦痛を与えるヒールに警戒している中、マジシャンスケルトンモナークの痛みに模がいているのをただ、眺めている。
「いやいや、ヒールだよ。 ヒール。 回復するのが普通じゃん」
「ナツミのはわからないよ。 何しでかすか」
少ししょぼくれているナツミは、自分の腕にあった傷に手を掛けてブツブツ言っている。
「フェルセさん。アイツなんで苦しんでいるんでしょうか?」
「もしかして、ナツミのヒールが弱点なのかも」
「ねぇねぇ。 見てよ。 傷回復したよ」
白い煙で腕に傷があった所が、跡形もなく治っていた部分をユカリとフェルセに自慢しながら見せつけていた。
ナツミの腕を横目で見るフェルセとユカリ。
………………
…………
……
「今回、アイツ。 回復魔法が弱点のようですね」
「そうね。 冥王さまアイツにリジェネを掛けてみてください」
俺は、マジシャンスケルトンモナークにリジェネを掛ける。
『グォォオオォォ!!』
更にもがき苦しむマジシャンスケルトンモナーク。
一定時間訪れる回復毎に、目の光が大きく発光し悲痛な声を荒らげてもがき苦しんでいる。
「ねぇねぇ。 私、回復した……」
まだ傷があった所を見せているナツミは、次第に細々と呟きしょげている。
大きく口を開き痛々しい咆哮をあげている。
マジシャンスケルトンモナークが、威嚇しているようにみえた。
「ナツミ。 どんどん回復魔法掛けてよ」
「……うん。 うん? わかった!!」
今まで落ち込んでいたナツミは、ユカリに声を掛けられて笑顔になり回復魔法を掛ける。
――――ん?
「ちょっと。 私じゃない!!」
ユカリは、ナツミを睨む。
「ち。 ちがうの?」
「今までに話……。 アイツにどんどん掛けて!!」
ヒール!ヒール!ヒール!
魔力が尽きるまで掛け続け、ナツミはヨロヨロしながら自分の杖で体を支えている。
すると、大きく両腕を広げ口から白い息を、まるで煙突から出てくる煙のように吐いている。
胸部にあった十字の光が消えると、一時停止したようにマジシャンスケルトンモナークのありとあらゆる光がパッと消える。
「ユカリ、今よ」
「はいっ」
へとへとになっているナツミを後にして、剣を持ち切り掛るフェルセとユカリ。
ボロボロと崩れおちる骨の欠片。
徐々に削られるマジシャンスケルトンモナークの体力。
だが、胸部の光は消え、沈黙をしたままだった。
勢い増すフェルセとユカリのユカリの攻撃。
だがマジシャンスケルトンモナークの体から何やらカタカタと音が伝わってくる。
休む間もなくフェルセは攻撃の手を休めてないが、ユカリは一瞬手を緩めマジシャンスケルトンモナークの全貌を見るかのように離れていた。
次第に、カタカタという音が大きくなり体が小刻みに振動している。
ナツミもファイアボールやアイスバレットなど放って攻撃をしていた見たいだが、マジシャンスケルトンモナークの小刻みな振動で弾かれていた。
マジシャンスケルトンモナークの胸部が光り出す。
「離れて!!」
フェルせの掛け声に反応してユカリとナツミは、直ぐにマジシャンスケルトンモナークからかなり離れ距離をとった。
「何?」
「骨がミシミシっていってるじゃん」
すると、胸部の光が大きく激しく金色に光、部屋全体をその光が包み込んだ。
「きゃぁっ!!」
「まぶっしっ」
マジシャンスケルトンモナークの光が、フェルセにユカリとナツミの影さえもかき消し俺も目を瞑ってしまう。
まず、一声を出したのはフェルセだった。
「なにこいつ……」
「さっきよりも」
「うぁ、これヤバいんじゃん」
マジシャンスケルトンモナークの胸部から放たれている黄金の光が、骨をも金色に光らせていた。
そして、動き出した目も黄金に輝き口から白い息を吐いて俺たちを見る。
さっきまで二本の腕が、更に左右一本ずつ生え奇妙な動きをしている。
「こいつ、物理攻撃も魔法も効くみたい」
「やったじゃん。 わたしの攻撃効きまくりぃ」
ユカリの鑑定結果に、ナツミが喜んで早速、ファイアボールを連発する。
それを見ている俺とフェルセ。
ただ、マジシャンスケルトンモナークも無反応の顔で、腕だけが奇妙に動いていた。
「えっ。 えー!! 効かないじゃん」
「弱すぎな……。 だけじゃない!?」
「弱って!!」
しょげるナツミ。
ユカリは両手で剣を握り、マジシャンスケルトンモナークに突進をする。
綺麗に斬撃が、胸部の肋骨に入るが、塵を巻き上げる事もなく弾かれて、ユカリはバランスを崩す崩す。
バァッ!!
マジシャンスケルトンモナークが、大声を発する。
よろめいていたユカリが、マジシャンスケルトンモナークから弾かれ飛ばされた。
「いったぁ」
「大丈夫? ユカリ」
「大丈夫……」
大声で衝撃波が発生されユカリが、弾き飛ばされたみたいた。
胸部にある黄金に輝く十字の物体が、上下に揺れている。
カチリと金属音が、微かに聴こえた途端。
グギャァァァァアアァ
フェルセの剣が綺麗に弧を描く。
マジシャンスケルトンモナークの奇妙に動いていた二本の腕が地面に落ちる。
目を大きく光り出すマジシャンスケルトンモナーク。
そして、元々あった手から金色に光る玉を浮かび上がらせた。
『金色の閃光』
白い息を吐きながら、手に浮かべた金色の光玉が、弾けるように光だし一本の光の線が、フェルセを襲う。
その光の線は、床を焦がし深い溝を掘る。
フェルセはその光の線を避けるように交わす。
だが、マジシャンスケルトンモナークも、切り落とされた二本の腕の恨みか、熱心にフェルセを狙う。
金色の光玉が微かに光を失い、魔力か集中力なのか途切れて一瞬消えかかる。
その隙を見逃さないフェルセ。
更に生えていた二本の腕を床に落とす。
ギャァァァアアァアァ!!
苦しい声がこの部屋全体に響き渡る。
金色に光る目が、ギョロギョロと動き、白い息を吐き散らすマジシャンスケルトンモナーク。
だが、胸部に輝く十字の光は、衰えていなかった。