バラルフドダンジョンのボス戦2
フェルセの言葉を聞いたユカリは、頷いていたがナツミは、首を傾げる。
「えっ? 魔法……。 違う。 剣効かないって事?」
「そうね。 私とユカリの剣での攻撃は、効かないって事ね」
「私は、攻撃魔法無いから牽制するだけしか出来ない」
ため息を漏らすフェルセとユカリだが、それを聞いていたナツミは、二人を交互に見た後、急に声を張り上げた。
「えっ、えぇぇぇ!! 私しか活躍出来ないじゃん。 っていうか私重要人物じゃん」
そんな会話をしている所にマジシャンスケルトンモナークが、再び手を前に出して白い息を吐き漏らす。
『ホォール、ルーム。 ライトニングストライクゥッ……』
だが四方八方から電撃の線が発生しているが俺たちがいる結界内には流れてこない。
「ナツミ! 何でもいいから魔法使って!!」
フェルセの言葉に頷いたナツミは、マジシャンスケルトンモナークに杖の先端を向ける。
「ファイアボール!!」
……
「アイスバレット!!」
……
全く効いていない。
マジシャンスケルトンモナークは、ニタッと笑うも結界を破る為に電撃の魔法を解いていない。
「ウィンドカッター!!」
ナツミの放った真空の刃が、マジシャンスケルトンモナークに当たる。
結界の外でバチバチと電気の線が小さい波を起こしながら動いていたのに、真空の刃がそれを切り裂き悲鳴がほとばしる。
「これが弱点!!」
ナツミが指を鳴らして歓喜の声を上げる。
その声もマジシャンスケルトンモナークの悲鳴によって直ぐに上書きされた。
マジシャンスケルトンモナークの十字の光が消える。
その時、フェルセが二本の剣を握り、マジシャンスケルトンモナークに切りかかる。
更に悲鳴を上げ苦しんでいる。
ブオォォォ。
フェルセの攻撃に続いて、ユカリも両手で剣を持ち振り下ろす。
胸部内にあった光が消え斬撃に苦しむマジシャンスケルトンモナークは、よろよろと後退する。
「こいつ、光ってない時物理攻撃効くんですね」
「多分、そうだと思って攻撃して見たんだが」
ユカリは、目を輝かせながらよろよろと遠ざかるマジシャンスケルトンモナークに、そのまま剣を両手で持ちながら追撃を図る。
だが、よろよろしていたマジシャンスケルトンモナークが、急にピタリと止まり口を広げ聞こえない声で、この大きい部屋全体を揺さぶる。
「ユカリ!!」
ナツミの声はユカリに届いたのか、パラパラと砂埃が天井から落ちてきたのかユカリは駆けている足を止め、フェルセのいる所まで戻る。
大きい口を広げているマジシャンスケルトンモナークの胸部から再び十字の光が、燃えるように光る。
その光は緑色に発光していた。
「次は……。 緑」
剣を構え臨戦態勢を整えつつも、息を切らしているユカリが呟く。
白い息を吐き、ニタッと口を半開きしてわらうマジシャンスケルトンモナークは、目の部分からも緑色の光を浮かばせ、ゆらゆらとこちらに迫る。
「ストーンバレット!!」
加速する石礫数発をナツミが、放ち勢い良くユカリとフェルセの頭上を通過し、マジシャンスケルトンモナークの頭蓋骨や肋骨に命中する。
あまりにも早い攻撃でユカリが、目をひん剥きながらナツミの方へ振り向いている。
「ナツミ、攻撃はや……」
ユカリの言いかけと同時に冷たくて苦しむ声が部屋に響く。
「やった!! 見事弱点命中」
「マジで……」
苦しむマジシャンスケルトンモナークを確認して納得するユカリは、直ぐに攻撃をしていたフェルセに気づき、続いて攻撃をしていた。
骨が折られ、またはヒビが入っているマジシャンスケルトンモナークは、攻撃を回避に徹していた。
フェルセの攻撃を受けても、ダメージが少ないのに引っかかる俺だが、多分フェルセは、神力を使ってない。
単なる、神界の金属で出来た武器を振るっているに過ぎず、神界の金属だからと言って世界の理に反する事は出来ないのだろう。
だから異世界ならではのスキルとかの特殊効果範囲の影響で、フェルセの攻撃がそれほど、ダメージを与えないものだと思っていた。
「それにしても、こいつなかなかしぶとい」
「インフレ起こした、スマホのゲームのボスみたいじゃん」
「なにそれ?」
「あれだよ、出た時はまだ数えられる数字じゃん。 でも何年か経つと数字の桁半端ないゲームって事〜」
フェルセとユカリが、マジシャンスケルトンモナークに牽制し武器を構えたままの所にナツミが、近づく。
マジシャンスケルトンモナークが、白い息を吐き、歯を噛み合わせ不気味にカタカタと鳴らす。
勢い良く灯ってた胸部の十字の光が、今回はずぅっと白い光が十字に光る、
そして、今まで目の光が、瞳を映し出していたが、今回は白目が光黒い瞳が出来上がっていた。
「今度は、白い……」
「白の反対、弱点て黒?」
「ナツミは、適当にありったけの属性がある魔法放って。 ユカリはそのまま私と攻撃で」
「フェルセさん了解」
「姉さん。 了解っ」
ナツミは、杖をかざしながらファイアボールやアイスバレット、ウィンドカッターなど各属性の魔法を放つ。
ユカリも、分かっていそうだがマジシャンスケルトンモナークに切りかかっていた。
だが、二人の攻撃は虚しくダメージを与えてない。
むしろ、マジシャンスケルトンモナークの口から白い息が漏れ、ニヤニヤと下顎を動かし笑っていたのだ。
「物理攻撃は、やっぱりダメ」
「なんなの! 魔法効かないじゃん」
こちらに向かって迫ってくるマジシャンスケルトンモナークと間を取る為、フェルセとユカリにナツミは後退してくる。
マジシャンスケルトンモナークは、静かに右手を上げ、吐いている白い息の量が増える。
『ホワイトスモーク…… スパーディングペイン……』
マジシャンスケルトンモナークの右手のひらから白い球体が現れたと思いききや、それが直ぐに破裂する。
破裂音が壁に反響しユカリとナツミは、耳を押さえていた。
そして、その破裂した球体から白い煙が流れ、瞬く間にこの部屋を白い煙が立ち込める。
「いっ!!」
「この白いのぉっ! イタッ」
俺には全く感じないが二人にはこの白い煙が、痛いらしい。
フェルセも俺と同じく痛みを感じていない。
「なんなのっ。 痛すぎじゃん!!」
「メイオウさんの魔法で何とか、傷回復してるけど……」
ユカリとナツミの声が聴こえけど、白い煙で視界が遮られている。
「二人は回復に専念して」
「フェルセさん……。 私たち回復魔法なんて」
「冥王さまが……」
フェルセの声が聞こえなくなるが俺が、二人を回復すればいいと思ってたら。
「ユカリッ! 私だって回復魔法あるよ」
「使えるの?」
「勿論だし!!」
痛みを喰らっているのに元気に元気に声をだすナツミに、不安が抜けないユカリの弱々しい確認。
「俺が、かけるぞ!!」
「大丈夫!! 私がやります。 メイオウさま」
「ナツミ。 ここは!」
「任せて」
白い煙で何も見えないが、少し先で光が発する。
多分、ナツミの回復魔法だろう。
その光が、消えると。
「どうだ! 私の回復魔法。ヒールは!?」
「なっ……。 なにも起きないよ」
「へ?」
『グギャァァァァアアァ!!』
マジシャンスケルトンモナークのの悲痛が、部屋全体に響くかのような大きい声が聴こえる。
そして、白い煙が、晴れてくると頭を抱えて苦しむマジシャンスケルトンモナークが、迫ってきていた。
その近くにいたフェルセは、突然現れたかのように、目の前にいたので驚いて跳ねるように避けていた。
「苦しんでる……」
「私の魔法で?」
「じゃないの?」
「だってヒールだよ。 回復だよ」
「……」
「私の回復魔法って。痛くするって事?」
ユカリが、ナツミを横目で見ながら肩を抱え「やめて……」とボソボソと呟いて体を引いていた。