バラルフドダンジョンのボス戦1
あのミノタウロスを倒し奥の扉から鍵が開く弟と共に、ギィィィとゆっくり扉が開く。
扉の奥から白い煙なのか流れ込んでくる。
冷気を感じている俺だがナツミが身を抱えて。
「ちょっと、寒くない?」
「うん、あの部屋から」
フェルセが、コツコツと足音を鳴らして「さぁ、ささっと進みましょ」奥の部屋に進む。
ミノタウロスから何もドロップ品が現れなかったのが少しだけ不快と、態度に現れている。
フェルセについていくユカリとナツミ、そして俺もここにいる必要は無いのでついて行く。
薄暗い部屋に入ると、中に白い息を吐いている一体の魔物がいる。
出会って直ぐに鑑定をしているユカリは「ま、マジ?」と口を塞ぎ、ナツミは口を開いたまま無言だ。
そう、白い骸骨に額に赤い宝玉を飾った冠を被り、黒いローブを纏っている。
そして、肋骨が丸見え見えでその中から薄らと光る玉が見える。
腰から黒いが綺麗に刺繍が、縫われた足首まであるスカートを履いている。
手に持っている杖は、大きな水晶と思える玉があり装飾が施されている。
眼球のない目のところから炎のように赤く光が灯る。
俺も、鑑定の結果で分かったが、ユカリが「マジシャン、スケルトンモナーク!!」と強そうな名前を発する。
ナツミが「あんなの反則じゃん。 アンデッドなのに火属性の攻撃に耐性があるんあんて」と口にしそれが部屋に響く。
マジシャンスケルトンモナークは、息をするように肩が動いているが、こちらに攻めてこようとはしない。
「ユカリ、ナツミ!!」フェルセの声に、ビクッとする二人。
それを気づかずに話を進めるフェルセ。
「アイツ、どんな魔法使うか見たいから、私と冥王さまは観戦するよ」と後ろに下がる。
でもその時に、「冥王さま、二人に支援魔法をお願いします」と言ってきたので俺は、二人に物理攻撃力向上、物理防御力向上、移動速度力向上に神経伝達向上それとリジェネを掛ける。
ブヒョォォォォ。
マジシャンスケルトンモナークの口がゆっくりと開き、白い息が吐かれると共にその音が、不気味な空間を生み出していた。
突然、左右の壁に青白い炎が灯る。
そして、壁伝いに次々と炎が点き次第に奥が分かるようになった。
「この部屋こんなに広かったんだ……」
「広すぎじゃん。 あの骸骨ライブでもする気なん? これ広すぎじゃん」
如何にも最終場所でありボスの部屋と思わせる。
青い炎が、灯っているが見るからに壁は、薄い青さで所々綺麗だが、良く分からない絵画が飾られている。
俺が、眺めていたらマジシャンスケルトンモナークの冷たく囁く声が、壁に響き奥まである青い炎が、一斉に揺れる。
「見て、あれ!!」
ユカリが、ゆびを指す方向にマジシャンスケルトンモナークの胸部にある光る玉が、中で十字に変化し赤く輝く。
駆ける音が部屋に響くと既に、フェルセが二本の剣を抜きマジシャンスケルトンモナークに迫る。
『ディシードマットフレイム……』
マジシャンスケルトンモナークは、白い吐息を出しながら冷たく囁きながら右手を前に出す。
離れいるフェルセを含む俺たち全員の足元に赤い炎が、絨毯のように現れる。
「ぎゃあぁぁーーー!!」
「きもっ、あっちぃぃー」
炎が、人の腕となり何かを掴むかのように燃え上がり、ユカリとナツミの足を掴む。
「冥王さま、早く!結界とか……。 うごぉけ……」
フェルセも、足を捕まえられていて動けない状態と思っていたら剣で次々とフェルセの周りに群がって生えてくる炎の腕を、突き刺し時には切り刻んでいた。
「……おう」
ユカリとナツミは、炎の腕を上手く払いながら避けている。
熱い炎の中、ナツミが氷の魔法で上手く熱を防いでいた。
俺は、敷き詰められた炎を消すように結界を広げる。
フェルセは、再びマジシャンスケルトンモナークに迫る。
距離を取るマジシャンスケルトンモナークは、不気味に笑いながらフェルセを見ていた。
ユカリもフェルセに続き駆け出し、マジシャンスケルトンモナークに向かう。
「アイスバレットォォ!!」
ナツミが、氷の弾丸を放つ。
避けるマジシャンスケルトンモナーク。
負けずと何発もアイスバレットを放つナツミ。
既にフェルセもユカリも、マジシャンスケルトンモナークに近づいていて攻撃をしている。
フェルセとユカリの複雑な剣の斬撃を、怯む事無く笑顔を浮かべながら回避しているマジシャンスケルトンモナークは、少し油断していた。
フェルセとユカリが、マジシャンスケルトンモナークから離れる。
二人の姿で隠れていたアイスバレット四・五発の弾が、マジシャンスケルトンに当たる。
目の赤い光が、一瞬大きく輝くと同時に胸部内にある赤い十字に光る物も光り次第に消えていった。
その時、天井や壁から埃が落ち振動が、徐々に伝わる。
マジシャンスケルトンモナークは、俺たちに向かって口を開いている。
光が消え動かないマジシャンスケルトンモナークを見ているフェルセとユカリは、構えを解かず距離を一定に保ったまま。
「うぉっしゃあぁぁ!! 私の魔法で倒したじゃん」
ナツミは、そう言って近くにいた俺に向かってピースしている。
ただ、フェルセとユカリは剣を下ろさない。
少しだが、未だに壁の青白い炎が揺らめいている。
そして、埃や塵がパラパラと落ちて来ていた。
「二人とも、私の魔法でトドメさしちゃぁ……」
『シャァアアァァァ!!』
ナツミの浮かれていた顔が、マジシャンスケルトンモナークの悲痛な叫びで目を丸くする。
冷たく感じる悲痛な叫びが、次第に大きくビリビリと俺たちに伝わってくる。
少し揺らめいていた壁にあった青白い炎が大きく揺れる。
マジシャンスケルトンモナークの悲痛な叫びが、止まると大きく白い息を吐き胸部にあった十字が黄色く強く発光すると同時に、目の部分も黄色く光る。
『ブヒョォォォォ』
俺たちに睨むマジシャンスケルトンモナーク。
「私の気持ちをっ!! かぁ、えぇっ、せぇぇ」
ナツミは、先程とは違い違い大きな氷の弾丸を連続で数多く放つ。
その氷の弾丸全てが、マジシャンスケルトンモナークの直前で粉々に砕ける。
それを見ていたフェルセとユカリは、再び剣を振るって斬撃を繰り出す。
それを難なく交わしているマジシャンスケルトンモナークは、白い息を漏らし口を開く。
『ホォール、ルーム……。 ライトニングストライクゥッ』
この部屋、壁や天井、床の溝が光輝く。
すると、天井や壁や床から無数の電撃の線が走る。
「いっ、っってぇぇ」
無数の電撃の線を、全て避けることが出来ず体の中を通してしまっているユカリとナツミは、悲痛で怒りが篭った声を上げて耐えている。
俺は、結界を張って全員を守る。
ナツミは、習得していた回復魔法でユカリと自分を回復しているが、直ぐに回復し終わっている、
電撃の攻撃が、静かに終わると再び、距離を空けるマジシャンスケルトンモナークは、ほくそ笑んでいる。
「チッ。 アイツなんで私の攻撃効かないのよ」
フェルセが、自分の持つ剣とマジシャンスケルトンモナークをチラチラと見ていた。
「私も、何度もアイツの体斬っているんですが……。 ナツミの攻撃を受けた時のようなダメージ負ってないんですよね」
ユカリも持っている剣の刃を通して目の前の敵を睨んでいる。
「すると……」
「ですね」
「な、な、なんなのアイツ。 さっき効いてた私の魔法全く効いてないじゃん! 炎の魔法使ってたと思ったら今度は電撃だなんて」
ナツミは、プンスカと目くじら立てて、ユカリとフェルセの元に近づく。
俺も近づいて行くとフェルセが、口を開く。
「アイツ、さっきのミノタウロスと同じように弱点変えられるヤツだな。 しかも属性攻撃だけじゃ無く、物理攻撃も……」