バラルフドのダンジョン最下層3
茶色いミノタウロスから再び青いミノタウロスに変わる。
先程の茶色いミノタウロスもだが、青いミノタウロスの傷は消え全回復した。
「なんなのこいつら。 直ぐに弱点変えてきたと思ったら全回復してるじゃん」
「なんか、入れ替わっているみたい……」
ユカリとナツミの意見が的を得ている。
弱点を入れ替えるように見せかけて実は、入れ替わっていた。
弱点を付かれたミノタウロスは、どこかに移動し傷を癒し全回復ミノタウロスと入れ替わる。
それは、単に鑑定スキルで見てれば固有名が、違っていたから分かるものだと思っていたんだけどな。
「い、今更?」という言葉が届いたのか、ユカリとナツミはその言葉を言ったフェルセを見る。
「気付いてたんですか?」
「姉さん、分かってたら言ってくれても良いじゃん」
「鑑定で見てるんだから分かってると思ってたから」
「えっ。 鑑定……。 あっ」
「ユカリ、わかったの? だってこいつミノタウロスじゃん」
「ほら、よく見てよ」
「う〜ん、ミノタウロスだよ。 ミノタウロスって」
何度も違った方向を見ては再びミノタウロスをみて、首を傾げているナツミを見ていたユカリは、「もしかして鑑定のレベル低いんじゃ……」
「鑑定レベル?」
「やっぱり! ナツミこいつブルーミノタウロスっていうの」
「ブルー!? だから青なのか!!」
………………
…………
……
ここにいる皆固まってしまった。
勿論、目の前にいる青いミノタウロスもナツミに視線を留めたまま、動きがとまる。
この静まり返った部屋の中で、最初に声を上げたのは、この状況を作ったナツミだ。
「なになに? 青だからブルーでしょ。 ブルーだから青なのって当たり前じゃん。 何これ?」
「いやいや、ブルーって言ったら普通『だから弱点火かぁ~』とか言うと思ってたのに」
「ユカリ、弱点なんてさっき分かったんだから関係なくない?」
「ナツミは、青空が青い。 頭痛が痛いって言っているもんだよ!」
ユカリからの反論にムッとしたナツミは言い返す。
「はっ? 青いミノタウロスがブルーっていってるのとどう…… 違う……?」
ナツミは、今までユカリから視線を動かさなかったのが、言葉の最後で歯切れが悪くなり少しづつ視線を逸らしている。
「そんなことより、コイツを倒さないと」
フェルセの声に我に返るユカリとナツミに、そしてブルーミノタウロス。
見た目からして名前がわかりやすいってこちらとしては、話しやすいよな。
しかもこのブルーミノタウロス、攻撃方法は全て物理攻撃のみ。
そして、咆哮による恐慌状態にするだけだ。
後は、火属性以外の耐性持ちだ。
今までの見ていて、弱点攻撃すると入れ替わる仕組みみたいだな。
俺は、そんな分析っぽいことをしながら、支援は終わっていたので待機状態だが、嫌な予感がしたので「弱点を付くと入れ替わるぞ!!」と大声で呼び掛けるが、その嫌な予感は的中する。
「フレイムストーム!!」
俺の言葉に気づく前に、す早く魔法を使うナツミの声は部屋に響く。
業火に包まれるブルーミノタウロスは、突然現れた火にビックリしたのか、唸り声をあげる。
再び床が、光り輝きだした。
「よっしゃぁぁ! 弱点っ」
「えぇーっ! ナツミ、いまメイオウさんの言葉聞かなかった?」
ユカリが鬼の形相のようにナツミを睨んでいるが、当の本人は何が起きたのか分からない顔をしている。
「あのね、ナツミ。 ミノタウロス弱点喰らうと直ぐに入れ替わるんだよ」
「そんなの知らないし。 もう少し早く言ってくれても良いじゃん」
二人が言い合っている最中、とてつもなく喚き散らしている汚い声が聴こえてくる。
ウギョアァォォ!!
光の中に包まれたミノタウロスが、ゆっくりと床に吸い込まれていく。
だが、フェルセの剣と共に赤い血が弧を描き床に飛び散っている。
徐々に吸い込まれていくミノタウロスは、反撃も出来ず、ひたすらフェルセの斬撃を浴び悲痛な叫びを上げている。
ユカリとナツミはその光景を凝視していながら微動だしない。
すると、何がが綺麗に通ったような音がこの部屋を包む。
スパーーーン。
ゴロゴロ
そう、ブルーミノタウロスの首が、砲弾のように打ち上げられ床に転がっていった。
その顔は何か恐ろしい者を見たかのように、青い顔が更に血が引いいて青くなていた。
床は、光り輝くもブルーミノタウロスの血に浸されている。
その中、赤いミノタウロスが現れるが、ブルーミノタウロスの首が転がっているが目に入り、一瞬だが、目を丸くしていた。
「ユカリ、ナツミ!」と俺が大声で呼びかけると、今の状況を把握したらしく武器を強く握りしめ構えた。
二人は既に赤いミノタウロスを鑑定済み。
「レッドミノタウロス……。 ナツミ分かっているわね?」
「えぇ。 あいつに氷の魔法使わなきゃ良いんでしょ」
二人が、武器を構え体制を整えレッドミノタウロスに立ち向かう。
しかし「うん。い……」「電撃の魔法をぉ……」とユカリとナツミは、声を詰まらせていた。
それは、既にレッドミノタウロスの腕や脚、胴体至る所から血が噴き出している。
アガガガガァァァ
喉を唸らせ、立つだけがやっとのレッドミノタウロスは、目の前にいるフェルセを睨む。
目を動かすだけでも苦痛の表情を浮かべている。
そして、力振り絞ってなのか大きな咆哮を上げた途端、頭と首が左右に、まるでダルマ落としのように落ちる。
そして、胴体はそのまま、背中から倒れ、地面が揺れ埃が舞う。
「いつの間に……」
「……」
ユカリとナツミが呆気に囚われていると、再び床が光り輝き模様が浮かび上がる。
光はミノタウロスを形取り、茶色いミノタウロスが現れる。
二本の剣を鞘に収めたフェルセが、「ユカリとナツミで倒せるんじゃない?」と二人の横を通り過ぎて俺の近く前で来る。
「ユカリ。 弱点の雷撃は?」
「たぶん、大丈夫使っちゃって。 交代なしだと思うから」
「了解!!」
ミノタウロスの攻撃を交わしながら斬撃を見事に入れているユカリと、その隙をついてナツミは、電撃の魔法であるライトニングボルトを放っている。
電撃の魔法を喰らっても床は光らないしあの、模様も現れない。
ミノタウロスは、状況を理解したのか鼻息を荒くし、ユカリだけ集中して攻撃をしている。
ミノタウロスの持つ菜切り包丁とユカリの剣が激しくぶつかり合うが、動作が大きいミノタウロスに対し、それよりも細かく動けるユカリは手数多くしてミノタウロスに傷を負わせる。
その傷からナツミの電撃魔法が入り、傷口を大きくさせて血が大量に吹き出してきた。
次第に、激しくぶつかり合っていた金属の音がしなくなり、多くなってきたのはミノタウロスの悲痛の声。
それも直ぐに無くなり、ミノタウロスは白目して膝から倒れる。
刃が上になっている歯切り包丁に倒れ、首がゴロゴロと転がり壁に当たる。
喜ぶ二人に、次第に消えるミノタウロスの体。
ガチャりと奥の扉をみる俺たちであった。