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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
166/173

バラルフドのダンジョン最下層2

 ユカリの目から一滴の涙が、こぼれ落ちた。

 その瞬間、悲観していた顔から何が乗り移ったような鬼の形相へ変わる。

 それと同様にユカリは、剣の腹でミノタウロスの菜切り包丁を防ぎ受け流す。

 力一杯に振り下ろした武器が、地面に刺さりバランスを崩すミノタウロス。

 隙を逃さなかったユカリは、ミノタウロスの首へ刃を入れる。


「やった?」

「うそ!? 思いっ切りやったのに」

「ユッ! ユカリ離れて」


 ギリッと目を動かしユカリを捉えているミノタウロスの首は、少し血が出ている程度で、かすり傷みたいに思われてそうだ。




 ユカリは、急いでミノタウロスから距離をとる。

 離れていくユカリに、再び咆哮をほとばしる。


「きったっねぇー唾。 撒き散らしてじゃねぇ!」


 ライトニングボルトを三発放ち、ミノタウロスが、ユカリに近づくのを阻止しようとする。




「あの、冥王さま」

「なんだ?」


 フェルセが、今この現状をガッカリした顔をして俺に近づく。


「アレ倒しても良いですか?」

「えっ? ユカリ達があんなに一生懸命戦っているのにか?」

「ここまで来る時にレベル上げとスキル獲得して、あんなに頑張って倒しているんですけどね」

「だから、あれだろ。 あのミノタウロスも頑張って倒して貰おうとしてたんじゃ……」

「あの、ミノタウロス。 魔石無いっぽいじゃないですか。 やる気無くて」


 牛の魔物ミノタウロス、見た目も然る事乍ら、行動さえ武器で攻撃の完全に魔法やら使わないとみえる。

 それを感じ取ってフェルセのモチベーションが、ガクッと落ちてしまっているみたいだ。

 それに、ユカリ達が中々倒せないでいる事にフェルセは、少し苛立っている。


「なら、観てるだけでなく少し手伝ってみれば良い」

「それじゃ、冥王さまも」

「俺も、コイツであのミノタウロスを……」


 フェルセは、ゆっくりと手のひらを俺の前に出し。


「いえ、冥王さまは、回復と支援だけで」

「ちょっ!」

「さぁ、行きますよっ!」


 怒りの形相をしているミノタウロスの渾身の一撃が、ユカリに振り下ろされる。

 だが、そこにフェルセが、二本の剣で軽々受け止める。

 ミノタウロスの攻撃が来ないユカリは、恐る恐る目を開けるとフェルセが、武器を弾き返しミノタウロスは、よろけながら尻もち着いていた。


「フェルセさん!」

「早くこいつを倒すわっ」

「そんじゃぁ! ライトニンッ」


 絶好のチャンスが来た事にナツミが、腕を振り回し魔法を唱えようとする。

 しかしフェルセが「それ、ムダっ」とナツミに怒りを飛ばす。

 突然の事にナツミの目は丸くなっている。


「それじゃなく。 火の魔法を」

「えっ?」


 ナツミは、呆然としているのは勿論、ユカリが「さっき全く効かなかったですよ」とフェルセに届かないような小声で細々と呟く。


「鑑定でみて! さっきの茶色いのとは違うから」


 ユカリとナツミは、起き上がってくるミノタウロスを見ていると「あっ!」と二人の声が漏れる。


「それにユカリ! 聴こえてるからね」


 フェルセは、起き上がったミノタウロスの溝落ちに蹴りを入れ、再び奥の壁まで吹き飛ばす。


 苦しそうに四つん這いになりながら立とうとするミノタウロス。

 そこにナツミが、「フレイムストーム!!」とこの部屋響くほどの声を荒らげる。

 片目が半分だけ開き、肩を使って呼吸を整えているミノタウロスを中心に真っ赤な炎が渦を巻きながら包み込む。

 今までの咆哮とは違い、絶叫で苦痛の悲鳴が炎の中から聴こえくる。



 すると、再び部屋の床に模様が浮かび上がり光り輝く。

 ナツミの魔法が消えると同時に、火傷で爛れているミノタウロスが姿を表すが、その瞬間徐々にあおい体が赤くなる。

 床の光が消えるとミノタウロスは、火傷を負った部分や、ユカリの与えたダメージさえ無くなる。


「ちっくっしょぉ!」


 ナツミは、自分の与えたダメージが無くなってしまった事に腹が立ったのか眉間にしわ寄せて「フレイムストーム!!」と怒りをぶつける。

 赤いミノタウロスに炎の渦が、取り囲む。

 だけど、ミノタウロスは、ナツミの魔法を無視してゆっくりとこちらに近づいてくる。


「なんでよっ! さっき効いたじゃん」


 フェルセが、ため息するなかユカリが、「ナツミ。あれさっきのと違うから」と大声でいうとナツミは、ジーッとミノタウロスを見ている。


「なっ! 何でよ!?」

「アイツは、弱点を入れ替えできるのっ」

「地面がボァっと光ると、弱点変わるってわけ?」


 ユカリとナツミが、言い争っているなか俺は、ユカリとナツミに能力向上の魔法とリジェネを掛けておいた。


 まぁ、こんな時だけど後衛で支援するラノベがあったな。

 ちょっと違うけど、状況は少し近そうだから、右の手のひらを前にかがげ楽しんでいる。同じ黒い服だし。

 赤いミノタウロスが、咆哮を上げる。

 咆哮によって壁や天井から砂埃がボロボロと崩れ落ちる。

「またコレか……」と三度目になれば慣れたという素振りをするナツミは、ユカリに目を配っている。


「茶色は電撃で、青色が火だったから。 今度は氷じゃない!?」

「そんなのわかってるって」とナツミは杖をかがけて杖の先端に魔力を込めている。

 ユカリが、赤いミノタウロスに真正面から突撃していた。

 赤いミノタウロスとユカリの激しい激しい武器のぶつかり合いをし激しい火花が散っている。

 俺がかけた魔法で能力も上がり傷さえ回復しているユカリとナツミは、最初にこの部屋へ入ってきた以上に活発である。


「ユカリ!!」


 ナツミは、ユカリにどいてという合図をする。

 だが、大きい声が届いたミノタウロスは、ナツミの方を鋭い視線を送る。


「こんな所まで直ぐに来れないっしょ!! アイスバレット!」


 氷の弾丸が、赤いミノタウロスに数多く当たるとそこから血が垂れてくる。


「よしっ!」


 唸り声をあげる赤いミノタウロスは、持っている武器である菜切り包丁を地面に刺しナツミに睨みを効かせる。

 すると、再び地面に模様が浮かび上がり光り輝いてくる。

 赤いミノタウロスの体が光り輝き、そして茶色いミノタウロスが現れた。


「最初の色に戻った」


 茶色いのミノタウロスが、ユカリ立ちに向かい腰を下ろして口を開く。

 その瞬間に、ナツミは「サンダーボルトッ!!」と電撃の魔法を放つ。

 咆哮をあげようとしたミノタウロスは、その動作が悲鳴と変わる。


「こいつの弱点!」と、ナツミは魔法をアピールするが、その時再び地面が輝いていた。

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