表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
165/173

バラルフドのダンジョン最下層1

 あの、姫という女槍士とそのパーティー戦乙女の使徒が、俺たちを追ってくると思っていたのに、全くその気配すら無い。

 ブルータルオーガに全滅まで追い込まれたんだ、この先進むには無謀と思って引き返したのか、はたまた追っては来ているが追いつかないだけなのか。

 分からないが、俺たちは最下層っぽい所に着いた。

 何故ぽいのかと言うと、今まで殆ど土壁だったのが、ここに来て壁がブロックになっている。

 しかも壁に掛けられている光源が、均等に並べられてる。

 そして、ここまで脇道も無く一本道で広い部屋に出た。

 天井も高く、何より少し豪勢な感じで柱や壁に飾り付けされたり、向かいには金銀宝石等散りばめられ装飾された扉がある。


「これ、完全にボスの部屋じゃん」

「でも、奥に扉があるよ」

「あの奥は絶対に財宝やら、そんなのがあるだよ」


 ナツミは、駆けて部屋の中央までたどり着こうとしていた。

 俺やフェルセにユカリも、歩きながらナツミを追いかけて行くと。



 バタン!



 俺たちが来た方入口が、閉まる。


「扉なんてあった?」

「合ったんじゃないの?」


 部屋の中央付近に近づく俺たちは、ナツミとユカリの会話を聴きながらも来た方を見ている。

 確かに扉なんて無かった気がする。

 元々開いていたからな。

 地面が急に輝き出す。


「なにこれ?」

「図のよう…… な」

「みんなその中から出ろ!」


 フェルセはいつの間にか発光している所から回避していた。

 ユカリとナツミも、急いで出ている。

 発光している所に居ない俺は、円が描かれそれが発光しているように見えていた。


 ブオオオオオォォォォッ!!


 一体の魔物が姿を見せると同時に咆哮を上げ壁、天井が揺れる。


「な、なんなのよアイツ」

「牛なのに立ってるじゃん!!」


 二本の角を生やした牛の頭に、二本の足で直立し、牛本来の前足は人と同様に腕と手になっている。

 しかも、オーガと同じような筋骨隆々とした体だ。

 そして、ブルータルオーガと同様に巨大な菜切り包丁を片手で持ち、うっすらとこちらを見ている。

 フェルセが、平然と目の前にいる牛の魔物を見ながら呟く。


「ミノタウロスね」

「えっ? ミノタウロス?」

「牛の魔物じゃん」


 ヴゥォォォォオオォォ!!


 再び、ミノタウロスが咆哮を上げ、こちらを威嚇してくる。

 ミノタウロスは、菜切り包丁の先を引きずりながら、ゆっくりと目線を逸らさずに向かってくる。


「ユカリとナツミで戦ってみる?」

「姉さん入らない?」

「ナツミやってみよう。 いけるかも!」

「いやいや、ムリっしょ。 レベルち……」

「いけるでしょ」

「いける。 うん、やつレベル低っ」


 フェルセは、ゆっくりとミノタウロスから遠のく。


 両手で剣を構えるユカリを前衛に、ナツミは後衛にて杖をかざしている。

 再度、ミノタウロスは、菜切り包丁を担ぎ、この部屋を震わせる程の雄叫びを上げ、激しい足音を立てながら迫り来る。

 重たそうに見えるミノタウロスの攻撃を捌き又は、打ち合いその音は次第に大きくこの部屋に響く。


 怯む事無く、対等に戦っているユカリは、ナツミの合図と共にミノタウロスから離れる。


「どいて!!フレイムストーム」


 熱風と共に炎がミノタウロスを包む。


 ブゥオォォゥッ。


 一瞬声を荒らげるミノタウロス。

 だが、その声は直ぐに止まり、ミノタウロスを包む炎の渦は、次第にユカリへと近づく。

 ミノタウロスの持つ菜切り包丁が、包まれている炎をかき消した途端、ユカリに駆け寄り振り落とす。


 それを真っ向から受け止めようと構えるが、ミノタウロスの力任せに振り下ろした攻撃に押され吹き飛ばされた。

 しかし、吹き飛ばれたユカリは、地面に落ちる前に体勢を整え、地面を蹴って剣を突き立てながらミノタウロスに跳ぶ。


「アイスバレット!!」


 氷の弾丸がミノタウロスに迫るユカリを追い越し、ミノタウロスは弾き返す事も出来ず傷を付ける。

 ユカリの刺突をミノタウロスは、武器で防ぎ、払い除ける。


「ナツミ、氷の魔法使えるようになったの?」

「さっきね。 全属性特化ってのが増えてね」

「私も、増えたけど。 あのミノタウロス強くない?」

「レベル私たちの方が高いのに」

「もう一度みて……」とユカリがミノタウロスに鑑定を使用し、一緒にナツミもジーっとミノタウロスを睨んでいる。


 ブォッ!!

 汚いヨダレを撒き散らして吼えるミノタウロス。


「なんなのアイツ」

「あれが本当のステータス?」


 俺やフェルセも、この戦いが起きた時から気付いていた。

 ミノタウロスのスキルに、戦闘民族という項目があることを。

 そしてそのスキルは、今ユカリが使用出来なくなっているのと同じ。


「アイツ、なんで私のスキルを!!」


 剣を構えミノタウロスに突進していくユカリをナツミは、「ちょっ、ユカリ!!」と止めようとしたが、届かず。

 両手で持った剣を振り落とし、薙ぎ払い力一杯ミノタウロスに打ち込んでいる。

 その攻撃さえミノタウロスは、受け流し、払い、交わし続けている。


「サンダーボルトっ」


 ナツミの声と共に放たれた電撃の弾が、ミノタウロスに直撃。

 苦痛の雄叫びを上げるミノタウロス。

 そこにユカリの剣が、ミノタウロスの脇腹を切り裂く。

 苦しんでいるミノタウロスの反撃が来る前にユカリは、次々と斬撃をいれる。

 そして攻撃が効いた事を見逃さないナツミも、更に追い詰めるようサンダーボルトを休む間もなくミノタウロスに放っていく。


 片膝を着き、菜切り包丁を杖代わりにして、体の至る所から出血して、苦痛の顔をしながら息を整えるミノタウロス。

 ユカリとナツミは、息を休む間もなく攻撃していたが、ミノタウロスが膝を着いたところで体勢を整えつつ休んでいる。


「あと少し……」

「よし、叩き込むっ。 サンダー……」


 ブゥオォォゥッ!!


 迫るユカリと魔法を放つナツミに向かって吼えるミノタウロス。

 地面が模様が浮かび上がり光る。

 そのミノタウロス、血が乾きいつの間にか傷も消え、静かに呼吸をし、青い眼光を放ち、次第に体が青く染め上がる。


「なに? なんなの?」

「アイツ、青くなってじゃん」


 そして、再びミノタウロスは、この部屋全体に振動させる程の咆哮を上げ、ゆっくりと前進し菜切り包丁を頭上に掲げユカリに近づく。


「あ、あぁぁ……」


 少し、後退りはするが、恐慌状態に陥ってしまったユカリは振り下ろされる菜切り包丁の刃を見つめ、涙をこぼした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ