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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
159/173

バラルフドのダンジョン1

「ダンジョン」

「この中に高位な魔法使うっていうヤツが、いるのね」

「勇者って所あんちゃんと姉さんに、確り見せてくれよ。 自称勇者」

「ぐぬぬぬっ」


 ナツミは、眉間にシワ寄せてコベソを睨んでいる。

 それを見てコベソは、笑っている。


「街の外、しかもダンジョン前なのに何でこんなにも行商人がいるんだ?」

「あんちゃん、そりゃ儲かるからな。 あわよくば冒険者が、持ち帰ってきたドロップ品を買い取れるかもしれんからな。 ワシもその一人だぞ」

「意地汚いオッサン」

「誰が意地汚いだ。 商売としてどこにチャンスがあるかわからん」


 俺とフェルセは、ダンジョン前にいる。

 来る前は、本当にあるのか不安だった森の中。

 その中に大きい岩山があり、それがダンジョンだった。

 しかも、行商人が店を開いている。

 出店も出ていて、いい香りが広がっているが、何故か森の中の魔物は近寄ってこない。


「メイオウさん、フェッ……。 フェルセさん行きましょ」


 ナツミが、ダンジョン前で準備運動しているが、ユカリは、ひょこひょこっと俺の所にきてそう言ってきた。

 だが、ユカリは、フェルセの顔を見た瞬間直ぐ小走りでナツミの方に行ってしまった。


「高位な魔法使うって言われたら、どんな魔石持ちなのかワクワクしますね」

「あぁ、そうだな。 しかしだなフェルセ」

「なんですか?」

「険しい顔になってるぞ。 リラックスしろ」


 魔石と言う言葉につられてなのか、フェルセは怒っているような顔をしている。

 ユカリが、一目散に離れたなのはそういう事だった。

 そして、コベソが、恐る恐る俺たちに近づいてくると、小声で話をしてきた。


「あんちゃんと姉さんにお願いが……」

「魔石でたら全部寄越せとか無いわ」

「それで無くてあの二人と、はぐれないようにお願いします」

「なんでだ?」

「まぁ、色々です。 色々」

「ふん。そんな事お安い御用よ。 だけど、魔石は譲れないよー」

「本当にですか? 姉さん。 魔石も譲って欲しいんですけどね」


 高らかに笑うコベソの後ろには、ユカリとナツミが、近づいていた。


「なーに、オッサン。 笑ってるんだ」

「取引の話だ。 あんちゃんと姉さんにお前ら二人。 四人パーティでこのダンジョン挑んでこい」


 入らない本人であるコベソは、腰に手を置き胸を張ってダンジョンの入り口に向かって指をさす。


「オッサン威張るな。 だけど、私達は、元々そのつもり。 強い二人いるだけで安心だもん。 ねっユカリ?」

「うん、そうだね。 メイオウさんとフェルセさんが居れば心強い」

「ワシは、また街に戻るからな。 宿で待っとるぞ」


 コベソを乗せた馬車は、この場を去っていく。


 幌から少し乗り出してコベソは、軽く手を振っているが何故か顔は、引きつっているようにも見える笑顔だ。


「やっと行ったわ。 あのうるさいオッサン」

「ナツミ。 そんな事言わないっ」

「それでも、お前達二人のこと案じていたぞ」


 俺は、ナツミにコベソの心配してた事を言うが、聞く耳さえ持たないのは、若さゆえかな。


「案じてもケチはケチ」

「ナツミぃー。 メイオウさん、フェルセさん行きましょ」

「ここのダンジョン何がでるの?」


 トゲのある言葉を放つナツミに、頭を抱えているユカリは、フェルセの質問に悩んでいる。


「うーん。 わからない……。 です」

「ユカリ。前に入ったじゃん」

「そうだけど。 多分、フェルセさんの聞いているのは奥にいる魔物だと思う」

「そりゃそうよ。 魔石よ魔石。 あと魔剣……。 冥王さまの持っているものよりも良い物を」


 最後の言葉は小さくボヤくようにモゴモゴしてたが、それを狙ってさっきから真剣な眼差しをしているんだな。


「とにかく、入らないと始まらん」

「そう。 冥王さまも良い事言うっ」

「良いことって……」


 進んでダンジョンに入っていくフェルセに続いて、ナツミとユカリが進み、俺はその後に続く。

 ダンジョンに近くにいた古参な感じがする冒険者達が、俺達の方を見て何やらヒソヒソと話をしたり、ほくそ笑んでいる。

 俺やフェルセには、会ったことの無いヤツらなのだから、多分ユカリ達の事だろう。

 ユカリとナツミは、気にもせずにダンジョンへ向かう。

 ゴツゴツした岩山に、ぽっかりと大きな口を開けているダンジョン。

 そういえば、俺自身この世界のダンジョンに入るのは、初だ。

 正直ウキウキする反面、コベソが気に掛けるほど、ユカリ達の事が気になる。

 こういう時って何やら、いちゃもんつけられたりするんだろうな。

 そうこう言ってるうちに、俺たちはダンジョンに潜る。



「中々、現れない」

「ダンジョンの中、明るいんだな」

「メイオウさん、初ダンジョン?」

「そうだな」


 ナツミと会話している俺。

 ナツミの口調に慣れたのか、最初会った時に思っていた不快感がない。

 タメ口しか出来ないナツミが、何故か『さん』を付けていた。


「ダンジョンは、人を誘き寄せるんだって。 だから明るいってあの城のヤツらが言ってたな」

「城のヤツらってログムのか?」

「いや……」

「メイオウさん。 その話は後で……」


 ユカリが、困っていたナツミをフォローするかのように割って入ってきた。

 色々見渡してはいるが、このダンジョンは、想像通り普通の洞窟。

 岩肌と同じで、ゴツゴツした壁に床もそれなりに舗装されている。

 人が四、五人横並びで歩いても壁に触れられない程、通路は広い。

 そして、ただ広い天井がドーム形した部屋にたどり着く。


「こりゃぁいるね」

「ええ」


 ユカリとナツミが、武器を構えて恐る恐る部屋の中心に近づく。

 そんな状況を気にもせずにフェルセと俺は、いつも通り歩いていた。


「メイオウさん、フェルセさん。 そっちに近づいたら!!」


 ドッスンーー。


 ユカリの声が、部屋に反響し始めた瞬間、何か落下しその振動音が、ユカリの声をかき消し部屋全体に響く。

 そして、カサカサっと擦れる音をさせてはいるが、歩みは静かだ。

 その迫ってくる物体は、黒光りし、立派な角を生やした正に、カブトムシの魔物。

 カブトムシは、カブトムシだが俺が少し見上げるほど大き過ぎるカブトムシだ。

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