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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
156/173

出国いざヒューズへ

 ヒロアクツ商会の幌馬車に乗り込んだ俺とフェルセは、コベソに頼みヒューズの勇者であるユカリとナツミを回収しそのまま街の外へ向かう。

 アークデーモンは、フェルセの蹴りによって、すっ飛ばされて気絶しているのか全く動きが無い。


「ところであんちゃん。 アレはなんだ? でけー魔物に見えたが」

「アークデーモンとか言ってたな」

「姉さん。 ほんとか? グレードデーモンでもヤバいのに、アークデーモンって」

「そうか?」

「何呑気にしているっ!」

「ナツミ?」


 コベソと話をしている所に回復してきたナツミが、割り込んでくる。


「お前達なら倒せたはずじゃ」

「そうなのか。 あんちゃん?」

「いや、なんとも言えんが。 倒したとしてもユカリ達の力には、ならないだろう」

「関係ないわ。 アレをのさばらせたら、街の人達が危険に」

「それは無いだろう」

「何故言い……」

「ヒューズの姉ちゃんよ。 あの国の人々は、既に帝国に落ちてるんだぞ」


 今度は、俺とナツミの言い合いにコベソが割って入ってきた。と言うよりは、この状況を収めるようにしていた。

 そんな状況の中でも、フェルセは、先程アークデーモンから抉りとった魔石を見ている。


「でも、アークデーモンの素材欲しかったけど、良しとしよう」

「何が、良しとしようですか! あんなのに関わってたら命幾つ合っても足りません」


 コベソの陽気な言葉に、三人ほど乗っていたヒロアクツ商会の一人が笑いながら答えていた。

 そんな中、不思議と街を出る事を誰にも止められる事無く、そのまま街道を進んでいる。


「衛兵とか街の騒ぎで居ないし、しかもあれだ。 変な術に掛けられてたから、多分今頃倒れてたりしてるんじゃないか」


 俺の気になっていた事を話すコベソは、俺の顔をみてニコッとする。


「これからどうするんだ?」

「このまま、ヒューズに向かう。 この国に居ても何も出来ないからな」


 コベソは、外の状況を見渡した後、御者の方に向かい何か話しているし、ユカリとナツミは戦いの疲れなのか横たわって寝ている。


「フェルセ、魔石どうだった?」

「一つは、爆発の魔石ですよ。 爆裂のと言った方が面白いかも。 でもう一つは……」


 ガタン!!


「どうした?」


 フェルセの言いかけた所で、荷台に衝撃が加わる。

 コベソは、御者に確認している。


「いや、わかりません。 小石乗り上げたのかもしれないです」

「街道だからと言って安心出来ないからな。 気を付けろ」


 先程の衝撃が嘘のように馬車は、平常運転している所でフェルセは、魔石を見せてきた。


「冥王さま、で。 もう一つが……」


 ガタン!

 ゴトン!


 再び、この荷台に衝撃が、起きる。

 今度は、左右交互に揺れだした。

 コベソが、確認の為か御者に聞いている。


「おい、また何か乗り上げたのか?」

「いや、何にもですよ」

「おい、これ、ライトは後ろにも付いているのか?」

「は、はい? 魔灯……。 ライト、付いてない筈ですよ」


 暗闇でも、馬車を走るのに必要な魔灯と言われるライトが、この馬車には付いている。

 進行方向に付いているのが普通で、後方に付いているとしたらそれは、王族や高貴の馬車ぐらいだろう。

 そんなやり取りをコベソと御者が、している。


 すると、

 ガタン!


 再び、幌が揺れるほど衝撃が起きる。


「おい」

「何にも、乗り上げ……」

「違うっ! こっちはなんでこんなに明るいんだっ」

「知らないですよ!」


 御者の投げやりな言葉とコベソの言葉につられ、俺もコベソと同じように後方から外を見る。


「明るいな」

「あんちゃん。 確かに明る過ぎる」


 コベソの言う通り、確かに過ぎる。

 月が照らす明かりよりも、何か光を照らされているようだ。


「あれ、じゃない?」


 地面には不自然な影が写る。

 その影は丸いが、その影の物体は、馬車の後方に居ない。

 フェルセが、指でその影の持ち主を指す。

 黄色く、大きい一つ目の魔物、イビルアイだ。

 そいつは目玉から発光していながらも、視線はこちらに送りながら空を飛んでいる。

 荷台に寝ていたユカリとナツミが、起きて俺達に声掛けてきた。


「さっきからドンドンと。 うっ、さいな」

「何かあったんですか?」

「イビルアイが、着いてきて」

「あれだ」


 フェルセが、初めにユカリ達に気づく。

 そして、コベソが、イビルアイのいる方を指して、ユカリとナツミは覗き込む。


「あれなら……。 ファイアー…… ボール!!」


 ナツミは、持っていた杖の先端をイビルアイの方へ掲げる。

 杖から火の玉が、イビルアイを目掛けて放たれた矢のように噴射される。

 だが、イビルアイは難なく交わし、当たらない。


「くっそぉ〜!これでっ!」


 ナツミは、ファイアーボールを何度も何度も怒りに任せながらも、数えるのが面倒臭くなるぐらい放った。


「ハァ、ハァ……。 なんで当たらないの」

「と言うか、ヒューズのお主」

「なによ、おっさん」

「おっ……。 まぁいいが、お主、ファイアーボールしか無いのか?」

「!!」

「あああっあるわよっ」


 コベソの落ち着いた口調でナツミに聞いている。

 だが、慌てふためくナツミは、何やらブツブツいって考えているようにしている。

 そんな中、ユカリが後方の方を指さす。


「み、みなさん。 あれなんですか?」

「あれ?」

「なんじゃ?」


 俺も、後方へ目をやると、何か向かっていている。

 光が当たらず、影に包まれた何かは、こちらに飛び跳ねてくるかのように迫ってきている。


「まぁ、見えなければこれで……」


 フェルセが、後方から迫ってくる何かに人差し指だけ向ける。

 すると、無数の爆発が起こり馬車にまで爆発の突風が舞い込んでくる。


『ギョォェエエエ!!』


 聞いた事のある声が、悲痛な叫び声を静かな大地に響き渡る。


「アークデーモン……」

「あれがアークデーモンか」


 ユカリとコベソは、目を凝らし後方を見ている。


『おっ、おのれぇー!勇者ドモ』


 アークデーモンの怒号と叫ぶ振動と共に俺達に伝わる。

 コベソとナツミが、崩れ落ちる。


「これが、アークデーモンか……」

「ちくしょう」

「ナツミ!」


 ユカリは、辛うじて持ち堪えているように、少し震えている。

 再び、フェルセがアークデーモンに向かって、今度は手のひらを向ける。

 深紅の槍が、フェルセの前に十本現れる。

 その槍は、透明の炎を立ち上げ、景色と共にアークデーモンさえもユラユラと揺れている。


「私の話、邪魔しやがって!!」


 そうボソッと吐いた途端、十本の深紅の槍が次々と噴出され、アークデーモンに迫る。

 突き刺さった槍は、対象に引火し爆発するんだが。


『ぐぶぇっ』


 アークデーモンの情けない叫び声が届いた後、深紅の槍が十回爆発し、火柱が聳え立つ。

 多分だが、アークデーモンの声は、爆発によってかき消されたのだろう。


「コベソさん、大丈夫です?」


 不安な声をした御者が、コベソに尋ねていた。


「ああ、大丈夫だ。 お前は」

「いや、何か凄い爆発多くて何がなんだか分からんですけと、必死で走ってますよ」

「それで、良い」


 よく見ると、御者は、前だけ見てて他の二人は寝ていた。

 こんな状況なのに、良く気が付かないもんだ。


『おっ、おっ、おのれェェェ! ヒューズのっ! 勇者ァァァ』

「あんなに喰らって、まだ生きてやがる」

「タフなんですね」


 ユカリとコベソが、感心しているが、徐々に俺達が乗っている幌馬車とアークデーモンの距離が広がっている。


『お前らァー! 生きて逃がさァァァン……』


 アークデーモンの叫び声の最後の方は、俺達に届かない。

 そして、既にイビルアイとアークデーモンは、俺達とはかなり離れていた。

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