ログム国ダンジョン入口前戦い1
俺とフェルセは、ユカリ達とグレードデーモン六体が戦っている所に入り込む。
「ユカリ!」
「フェルセさん、メイオウさん!」
「神が入れば、私達の勝利は確実ぅー」
ユカリとナツミは、苦戦しながら俺達が入ってきた事に歓迎をする。
「グレードデーモン六体は、キツそうだね」
「ええ、しかも悪魔系の魔物は連携やら協調が無いのに。 コイツらにはあるんで、更に厄介なんです」
「ところであの狼のような人は……。 ケンジくん?」
「そっそうです。でも良くわか……。 貸したんでした」
「でもケンジくんが狼になった所までし―――」
『何をゴチャゴチャ話しとるっ!!』
バスタードソードを持ったグレードデーモン一体が、地面を抉るかの如く振り落とし、フェルセとユカリの会話に割り込んできた。
フェルセとユカリは、咄嗟の判断でそれをバックステップで交わす。
「ユカリ達は、半分。 三体よろしく」
「えっ?」
「こっちの剣と盾と杖のグレードデーモンは、私と冥王さまで……。 まぁ私でやるから」
「わっ、わかりました」
納得してフェルセを見ているユカリに、ナツミの声が入る。
「ユカリ!」
バスタードソードつまり剣を持ったグレードデーモンは、口を半開きに不快な笑顔しながら剣先を向けてユカリに迫る。
『俺らの方が本命を貰えるとはな!』
『っ、仕方がねえな、まぁお前ら冒険者の話乗ってやるわ』
片方の剣を持つグレードデーモンがそう言い目配りすると、その近くにいた盾と杖を持つグレードデーモンが頷き三体ともフェルセと俺に不気味な笑顔し睨みつけてきた。
『グェッ、フェッフェッ冒険者がいくら集まろうが。 我等には敵わねぇよ』
『フェッフェーッ。 そうだとも。 この国の冒険者は、弱い!我等にキズを負わす事が出来ても、そこまでだぁ』
剣と大盾のグレードデーモンが、人を見下すような態度と目をしながら笑っている。
『この国の冒険者は、獣人とてランクがB止まり。 ランクAが居たらヤバいけど、グェッフェッフェッ』
杖を持つグレードデーモンが、剣と大盾に続いてゲスな笑いをする。
そして、胸の辺りが赤茶色く発光し、持っている杖の先を俺達の方に傾け大きく口角を上げる。
すると、俺達の前で赤茶色の光が弾け眩い光と爆風が、俺達を包み込んでいく。
俺は、いきなり光り突風が吹き付けるものだから目を瞑り、腰を引くして風に仰がれないようにした。
『グェッフェッフェッ、我がエクスプロージョンの威力! 苦しんどるわ』
杖のグレードデーモンが、笑うとそれに釣られ剣と大盾も笑い出す。
たち込められた粉塵と煙が、一瞬にて振り払われる。
フェルセが、二本の剣を一振していた。
「冥王さま、あの杖いただきですよ」
『ナッヌッ! 我が魔法喰らっても……』
杖のグレードデーモンが、目をひん剥いて口を半開きにしている。
『お主、エクスプロージョンのレベル下げたな! 侮りやがって』
『我が盾でヤツを止めとく! 今のうちに魔力を貯めろ』
杖のグレードデーモンは、瞑想するかのように杖を両手で持ち目を閉じる。
「冥王さま、盾と剣お願いします」
「あっ、わかった」
そう言った途端、グレードデーモン達に突進するフェルセは、先ず盾に向かって行った。
『我が盾ヨ!!』
盾の縁が緑色に光る。
盾のグレードデーモンは、地面へ突き刺すように置いた盾をフェルセに向け構える。
俺は、何故か、その光に引き寄せられるような、引き込まれるように見詰めてしまう。
「チェストぉぉぉー」
フェルセが、勢い良く盾にキックをぶちかました。
盾のグレードデーモンの頭が、グラッと後ろに揺れる。
キックの衝撃で大盾と共に後ろ跳ね飛んで地面を転がっていく。
『ナッヌ』
『グググ、盾ごとオレを吹っ飛ばされるトハ……』
立ち上がろうとする盾のグレードデーモンを見ている剣のグレードデーモン。
『おい、見てないで、アブッ』
『よくも仲間をっ』
フェルセの突撃の前に盾と剣のグレードデーモン。
すぐに近くに居ることがわかったのか、剣のグレードデーモンは、バスタードソードを力任せに振り下ろす。
フェルセの二本の剣のうち、黒い剣がグレードデーモンの剣とぶつかり合うと思いきや、空振りをする。
いや、ぶつかり合う金属音は一瞬した。
『うぎゃぁぁぁぁアアアア』
ユカリ達の方から苦痛を告げる低い声が聴こえる。
その声に気を取られ目をやると、ユカリ達と戦って攻撃を防いでいた盾のグレードデーモンが、持っていた大盾を放し首からドス黒い血飛沫を撒き散らしている。
『んっ、うーんテメェッ!!』
こちら側にいる剣のグレードデーモンの方に睨みと怒りを放ってきた、ユカリ達側にいる盾のグレードデーモン。
その盾のグレードデーモンの首元には、バスタードソードの刀身が見事に突き刺さっている。
こちら側の剣のグレードデーモンが持つバスタードソードは、見事にフェルセの剣によってへし折られていたのだ。
フェルセは、振り切った黒い剣の反動で、体を横に回転しもう一方の白い剣で、剣のグレードデーモンの脇腹へ斬撃をいれる。
『剣のようニハ……。 プヘッ』
普通の冒険者でも簡単にキズを負わすことが出来ない、強固な肉体を自慢していたグレードデーモン。
だが、フェルセの持つ剣は神界の金属アダマス。ファンタジーの世界では、アダマンタイトと呼ばれる金属を使った剣で、どのような物でもいとも簡単に切れてきまう。
もちろん、それは、この世界で硬い魔物でも、アダマスより硬度が低ければ簡単に真っ二つにできる。
『アバババァァァア』
剣のグレードデーモンは、口か泡を出し真っ二つになった胴体からはドス黒い血が滝のように溢れ出る。
そんな事を気にする事無く、フェルセはハイスピードで突進を乗せて強烈なキックを、立ち上がっていたグレードデーモンの身構える大盾へ入れる。
大盾は、激しくは爆発音を交えて粉々に砕け散る。
その衝撃で、再び盾のグレードデーモンが吹っ飛び地面を転がり倒れる。
激しい衝撃に、立ち上がろうとする素振りすら、見せない盾のグレードデーモン。
横たわっている盾のグレードデーモンへ、フェルセが飛び乗り二本の剣を突き立てる。
フェルセは、ぐるっと時計回りに一回転する。
『グッ、ギャァォォォオオオ』
盾のグレードデーモンは、目をひん剥きながら口から泡をだし、絶命の悲鳴を上げ終える。
フェルセは、奥にいる杖のグレードデーモンを瞬きもせずに見る。
その杖のグレードデーモンは、フェルセの眼光に気付き、数本後退りをする。
「逃がさん!爆発の魔石ぃぃぃぃ」
杖のグレードデーモンに向かって怒鳴り吼えるフェルセは、二本の剣を振りかざしながら駆けて行った。