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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
149/173

ログム国スタンピード7

 自称帝国の勇者である七三分け金髪ナルシストは、前髪をサラサラ指で払いながらもグレードデーモンに剣先を向ける。

 それに対して自称ヒューズ国の魔王の部下だと名乗るグレードデーモン。

 空中に飛翔しながら戦えば良いものを、何でわざわざ地面に降りるのかと不思議でならない。

 更に付け加えてしまえば黄色い目をした魔物イビルアイと共に、自称帝国の勇者とその仲間を倒せば効率がいいと思うのだけれど、それもやらない。


「ちょっ……」

「ナツミ待って!」

「何でよ!?」


 自分が正式な勇者と自覚しているナツミは、ツカツカと自称帝国の勇者の方へ歩いていくが、それをナツミの腕を引っ張って阻止するユカリだった。

 ナツミの腕を引っ張ったままユカリは、俺とフェルセの所にきて聞いてくる。


「彼も勇者なんですか?」

「さぁ、でも勇者っぽくは無いわね」

「私達とは全く違う。全然オーラっていうの、ぶわっ〜っと、なんだアレ…… 雰囲気よ、雰囲気が無いじゃない」

「なによぶわっ〜っとって!」

「インスピレーションっていうの。アレが無いのよ」


 ナツミの曖昧な感覚の説明にユカリが、頷きはするがちょっとだけ不安になっているようで眉間にシワがよりそうだ。

 そんな中、フェルセが自称帝国の勇者と自称ヒューズ国のグレードデーモンと戦いを観ようと言い出した。


「芝居みたいになりそうだけど、見てみようよ」

「そうですね、勇者ならどんな戦法や戦技使うか見てみたい」

「アイツ、持っているの剣だから私には……」

「でも、仲間とか使いそうだし。あの勇者も何かしら使うんじゃない?」

「魔物いないし、そうだね。観とくか」


 ユカリとナツミに、フェルセは、腰を下ろすのにちょうど良い瓦礫を見つけてソコに座り観戦モードに入っている。

 因みに俺も、ハルバードを杖代わりにして寄りかかって観ている。

 ほとんど街に火の手は消えていて、兵士やギルド職人と民間人が、消火活動や救命活動をしており、流れてくるのは若干異臭がだけ。

 あとは、建物が焼け焦げてたり、崩れかかってる状態で、魔物は既に目の前に居るグレードデーモンとイビルアイだけだった。



「グレードデーモンよ、我こそ真の勇者! これをぉぉ見ろぉぉぉ」


 七三分け金髪ナルシスト自称帝国の勇者が、持つ剣を高らかに上げると刀身が白く光り輝く。

 まるで照明のように、この場を明るく照らす。

 その眩しさにグレードデーモンは、左手で眩しさを遮るように顔の前に出す。


「まっまさか! そぉっのぉぉ〜剣はぁぁ〜あ〜っ」

「そぉぉぉだぁ〜! これこそ我が国サフヴァリフ帝国に伝わるぅぅ勇者のけぇぇ〜ん〜」



 ユカリとナツミ、そしてフェルセが目で確認しあっている。


「何で急に歌っている様なミュージカル口調になったの?」

「うわっ、汚ねー声だな」

「しかもさ、イビルアイが空高くいるんだけど……。 あれ、アイツらを照らしてない?」


 フェルセが、イビルアイの行動に気づく。

 確かにイビルアイが八方から中心にいる帝国の勇者とグレードデーモンの動きを目から光を出して照らしているので、俺達は良く見えている。

 でも、その光景はまるで、ミュージカルを観てやってみたいと言う初めて芝居をやる人の練習を観ているようだ。



 光り輝く剣の柄を両手で持ち構えている帝国の勇者。

 グレードデーモンは、眩しさに慣れたのか、手で隠す事をやめ睨み、間合いを取っている。



「我こそ帝国の勇者ぁぁ〜。我が仲間と共にぃぃ〜貴様をぉ〜討ち取らぁぁん!!」

「雑魚がぁー。何人いよぉぉ〜とぉっ、我のぉぉ敵では〜無いわぁ!」


 すると帝国の勇者の仲間なのか、すこし離れていた所からいかにも魔法使いって格好をしている男性が、二・三歩歩勇者に近づく。


「私はぁー勇者の仲間のぉ〜魔法使い。我が魔法でっぇー、苦しむがぁぁい」


 魔法使いが、いかにも持ってそうな杖をグレードデーモンに向けると、杖から十本ほどの火の矢が現れて相手に勢いよく飛んでいく。

 飛んで行った火の矢は、グレードデーモンに当たりはするが、全く効いてないようだ。


「そんなぁぁぁっ弱い魔法なんてぇ〜、私にはっ通用しなぁぁい〜」

「私の勇者の仲間よぉぉ、みんなで~っ、この世界をぉぉ、平和にぃーするんだぁぁ!」


 魔法使いが、出てくる前の所から七人出てくる。

 鎧がフルプレートで大盾持ちが二人と、動きやすそうな鎧にバスタードソードを持つ二人が勇者の前に出てくる。

 そして後二人の魔法使いも、最初に出てきた魔法使いと同じ立ち位置で止まっていた。


「このっグレードデーモン〜のっ、攻撃をぉぉ防げると思うか〜」


 グレードデーモンが、拳を振りかぶりバスタードソードを持つ、帝国の勇者の仲間に攻撃をする。

 すると、大盾持ちが直ぐにその間に入り、グレードデーモンの攻撃を防ぐ。

 その隙にバスタードソードを持つ二人がグレードデーモンを斬り付けと、その後方にいる魔法使い三人が、同時に火の矢の魔法を放っている。


「私のぉぉバスタードソードをくらいやがれぇ〜」

「三人でぇ〜、あいつに喰らわせてやれぇー火矢の雨をぉぉ〜」


 行動した後に歌い始めているバスタードソードを持つ二人と魔法使い達。

 俺とフェルセ、ユカリにナツミは、この演技や演出が初心者ド素人がやったと思われるミュージカルを観てイライラしている。

 ユカリとナツミなんて○✕ゲームをし始めてるし、フェルセもそれを見ていた。

 すると、周りの冒険者や兵士、救護している人達は、目を輝かせながら関心している。


『おい、勇者達歌いながら戦ってないか?』

『すごいな、流石勇者だ!』

『やはり、勇者様は豪華絢爛ではないと』

『何と煌びやかで華やかだ!勇者の戦いがこんなにも凄いとは!』

『これが、魔王や悪魔と勇者の戦いか……』


 グレードデーモンに攻撃が通ると、周りから賛美の歓声が上がる。



 ――――おいおい、そんな訳ないだろ。


 歌いながら戦うって集中出来ないし、力も完全に入らないだろ。

 俺がそう思い始めると、フェルセ、ユカリとナツミも手を止めて周りの人達の声に唖然としていた。


 ド素人のミュージカル、帝国の勇者一行とグレードデーモンの戦いは、武器や魔法等のぶつかり合いが激しくなる。

 そして、歌のリズムやメロディも、次第に激しさを増してきた。

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