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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
145/173

ログム国スタンピード3

 先程よりやや強そうな魔物が群れをなして、冒険者達がアイテムや経験欲しさに戦っている。

 会場にいたログム国王に声を掛けた商隊とは違う、もう一つの少数商隊にいま冒険者達が、数体の魔物と戦っている。

 リザードマンも先程より体が大きく、オークも棍棒にトゲがあったり肌が少し茶褐色になっていた。

 それ以外もコブリンには魔法使うコブリンメイジ、顔が見えない赤く光っている目しか見えず灰色のローブを纏っている魔法使いなど、新しい魔物がいた。


『おい、さっさとそんなヤツら倒してしまえ。 兎に角、アイテムだ!』


 戦闘をした事がなさそうな体型をしている一人の男が、身を潜めながら戦っている冒険者達にむかって怒鳴っている。

 少し俊敏なリザードマンの斬撃や、皮膚が硬くなった茶褐色のオークの力任せに振り回す棍棒に、中々攻めることが出来ない商隊の冒険者。

 その二体だけでなく、彼らの前には八体ぐらいのリザードマンやオークに魔法使いがいるからである。

 その商隊を横目に俺は、向かってくる魔物をハルバードで粉砕していくが、先程より力をかなり抑えているのは言うまでもないし、もちろんアイテムはすぐに回収している。

 俺は迫ってくる魔物を倒して先に進んでいく。

 魔物が沢山いる方に行けば、このスタンピードが発生した原因であるダンジョンに着くと思っているからだ。

 すると、フェルセが慌てて血相を変えながらこっちにやって来て俺の後ろに隠れる。


「どうした?」

「ああああああああぁぁぁ」

「なんだ?」

「あれ、ムリムリムリムリムリ」


 フェルセが、やってきた方に目をやる。すると怯える原因のヤツらがいたのだ。

 それにしてもデカい。

 虫系魔物が、時々様子をみるのか立ち止まっているが、こっちに迫ってくる。

 足が沢山あり、剥き出しになっている眼球が赤く光、胴体が白と黒にシマシマのように見える。

 目の前にいるのは一体のスクティゲラ。いわゆるゲジゲジだ。


 ガサガサ


 ガサガサ


 ガサガサ


 胴体の周りに張り巡らされた何本もある足が、小刻みに不可解な動きをし向かってくる。


「ギェェェエエエ!」


 俺の後ろにいるフェルセは、服を引っ張りながら震えている。


「虫系魔物はこのタイプしかいないんだな」

「なななっこんなの沢山いたら逆にぶっ殺していますよ」

「ならやればいいのに」

「イヤですよ。見てるだけで……うぇっ」


 ブルっと震えて俺の後ろに隠れてしまった。


「服引っ張られると動けないんだけど」

「うぅー」


 ハルバードも振るう事が出来ない状態。

 不規則にうねうねと何本も足を動かして迫ってくるスクティゲラ。

 俺も見ていてだんだん気持ち悪くなる。

 見た当初コイツには何の思いれもなかったが今では気持ち悪い。

 左手を前に出した瞬間、バチバチっと発光するスクティゲラ。足は様々な方向を向いて焼け焦げ動きが止まると消えていった。アイテムが現れるが見ずに直ぐに回収した俺だ。

 それを見たフェルセは、ハッと何かに気付き引っ張ってた服を離して俺の前に出てくる。


「これなら、私でもいけーる!」


 スクティゲラ三体が、ガサガサと俺達の方へ向かってくる。移動速度は、さっきのより少し速いようだが、そんな事を見てたら急に三体に火の手が燃え上がって消えていった。

 フェルセの手には赤い魔石が光輝いている。炎の魔法をつかっていたのだ。


「これなら、近づかなくてもぶっ倒せるわ!」


 現れてくるスクティゲラと距離を取りながら炎の魔法【クリムゾンランス】を巧みに使い連続で魔力を溜めては、ぶっ放して目の前にいる魔物を蹴散らしていた。

 いつも通りのフェルセに戻ってくれてひと安心と胸を撫で下ろしたが、本当にそれで良いのかと言うちょっとした不安もある。

 今のところ、まぁ良いかな。

 奥の方からゾクゾクと現れて迫ってくるスクティゲラを、フェルセの【クリムゾンランス】が突き刺さり一気に燃え上がって、スクティゲラはもがき苦しんでいる。それを見てフェルセは、腰に手を当て笑っていた。

 すると、後ろから


「おいおい、お前ら!」


 先程、八体ぐらいの魔物と戦ってた冒険者の影に隠れていた男が、握り拳に人差し指を立てて上下に軽く動かして俺に近寄ってくる。

 軽く顔や衣服が汚れているが、身なりは高そうで動きやすそうな格好をしているし、まん丸いコベソの体型にも似ている。


「この辺りはわしらが受け持っているんだ! なーに勝手に倒してくれてるんだい?」


 近寄ってきた男が俺の目の前にやってきたので、少し顎を引いて男を見る。

 よく見ると靴はブーツのようだが踵の部分が厚いし、靴底も厚い。軽く四、五センチはあると見える。


「倒したのヤツのアイテム返せば…… んー…… 許してやっても良いんだがなぁ〜」


 この男は、腕を組んでチラチラ見て俺に変な言い掛かりを付けてきてきた。

 そもそもそんな事知らんし、持ち場なんて話も聞いていないし、たった八体で止まっていたヤツらに渡す義理も無い。ハルバードを振り回して碌に戦っていない俺だけど、それは違うよな。

 すると、男の後ろから冒険者達がやって来て、一人リーダーらしき鎧を纏い短髪で馬顔の男が、俺に詰め寄ってくる。


「そうだ、この場所は俺達の持ち場だ! ここで取れたアイテムは俺達の物だ。だから返せ!」

「倒した人の物では?」

「ここは俺達の持ち場なんだ、お前らが勝手に入ってきて、勝手に倒して、勝手にアイテム横取りされた。 おかしいだろ!」


 リーダーっぽい馬顔の言葉に、身なりの良い丸い男と後ろにいる冒険者達が頷いて俺を睨む。


「冥王さま、何してるんですか? この先に凄いのが……」

「おい、姉ちゃんも。ここわしらの持ち場だ。 ここで取れたアイテム返してもらおう」


 丸い男が、女と見るやリーダーっぽい馬顔の男の前に、ニヤつきながら現れる。


「はっ?」


 フェルセは、少し眉間にしわ寄せて男と冒険者達を見る。


「そんなヤツら構ってられん。 フェルセ行くぞ」

「あっ…… はい」


 俺の発した『フェルセ』という単語に馬顔の男や何人か反応をしている。

 それを感じてない丸い男が、その場を離れて先に進む俺達に向けて怒鳴る。


「おい、穏便に済ませようとしてやっているんだぞ! おい、お前たちヤツらをやってしまえ!」

「それは!」

「なぁに! 魔物にやられた体にすれば、どうにでもなるわい」

「相手、双翼で……」

「そうよ、ね? 何言ってるんだ!ひょろっとした男と女では無いか!やってしまえ!」


 丸い男が、先に進む俺達に届くように大声で冒険者達へ言っているが、リーダーっぽい馬顔の男は、やはりベテランなのか、フェルセの名を聞いて少し戸惑っているし、その仲間もザワザワしてもたついている。

 フェルセが、目を輝かせながら俺に早く見せたいのか少し小走りになっていたので付いて行く。


 すると、上空から獣のような、鳥のような甲高い『ギャァオオォォォ』と鳴きながらか羽の着いた蛇のような影が俺達を通過する。


「この先に、ワイバーンやら少しランクの高い魔物がいるですよ。 今の普通の……」

「今の」

「普通のだから気にしなくても……。 あの人達もいるし」

「そうだな」


 この後ろには殆ど魔物居ないし、彼らの持ち場らしいので俺達は先に進む。

 後ろの方で何やら恐怖の声や怒りの声など、絶叫や悲鳴が建物に反射して聴こえてくる。



 人が生きるのも死ぬのも自然の摂理だし、運命であるし、神が人を助けるのは破滅という運命を回避する時や、気まぐれな時である。

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