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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
143/173

ログム国スタンピード1

 グレードデーモン。

 全身赤茶色の肌、黄色い眼、無駄の無い筋肉質の体型、コウモリの様な大きい羽、残念なのは素っ裸。

 あの系統は、無性なのが多い。それにしても何故だが、服を着るという意識がないのは不思議。

 そんな事をすっと流してユカリ達が、出ていった行方を見ている。


「冥王さま。 わたしも……」


 窓から出ようとするフェルセの腕を掴み、俺は食い止める。


「なっなななななななな――――」

「ダメだ。 アレはユカリ達が何とかしてくれるだろ」

「……また、略奪されるのかと……」


 フェルセは、顔を赤くしている。


「いや、ここ三階ぐらいの高さだから」

「あっ…… そうですね……」



 涼しい風が、この部屋に入ってくる。

 街は少しずつ火が上がっていて、逃げ惑う人、悲痛を上げる人の声が風と共に入ってくる。


「でも……」

「フェルセ。言いたい事はわかる。だがこれは、自然の摂理だ。起こるべきして起きた現象だ」

「目の前の人々が、苦しんでいるのを見てられないわ!」


 ん?


 あれ、俺の思っていた事とは違う。

 人が死ぬ事で冥界の仕事量が、増えるから少し減らすとか。冥界の仲間思いかと思ってたら……。



 俺の背後からコツコツと歩いてきた、ログム国王を気づいてフェルセと共に振り返る。


「名だたる冒険者と見受ける。すまぬが、二人どちらか助けに行って貰えぬか?」

「ログム国王よ」


 ログム国王の後ろからコベソが、険しい顔をしながらやってくる。


「ヒロアクツ商会の…… コベソ……」

「そのお二人さんは、うちの護衛だ。勝手に話をしてくれては困る」

「だが……」

「交渉ですな。 このケーキ…… いやこの会場にあった作り方を、うちに教えてもらおう」

「それなら……」

「あと、ヒロアクツ商会との取引についてだ!」

「そそれは……」

「ヒロアクツ!それは汚いぞ」


 ログム国王が、悩んでいる脇から側近がコベソに怒鳴り散らしてきている。

 コベソが、ゆっくりと腕を組みながらどっしりと構える。


「この料理に関しては……正直! うちの料理研究家が調べればすぐに作れる。 現に何種類かケーキなど流通させておる」

「……」


 そう言えばプルーフの街だっけかな。

 フェルセとギルド職員が食べてたのはヒロアクツ商会のやつなのか?


「技術面の提供及び、流通の自由化だ」

「わ、わかった」

「こ国王……」

「仕方がない…… 今は民を一人でも救う事が一番だ」

「あんちゃんに、姉さん…… よろしく頼みます」


 満面の笑みで俺たちに言ってくる、コベソの顔はさっきより肌の艶が増している。


「誰一人冒険者とか居なくなるが、大丈夫なのか?」

「安心ですぜ。 トンドがこの部屋に魔除のヤツを各隅に置いている」


 俺が、不安の一部を確認するとツヤ肌の良いコベソが、更に満面の笑みでこぶしを握った状態から親指を上に立てた仕草であるサムズアップを俺に向けてしている。

 トンドも併せてサムズアップをしていた。

 俺は、窓から飛びだしてと身構え、躊躇しているフェルセに声を掛ける。


「フェルセ、行くぞ」

「ここから?」

「その方がカッコイイだろ?」

「……」

「あんちゃん! 姉さん!」


 コベソが、急に慌てた顔をして、俺たちに駆け寄ってきた。


「アレらダンジョンのモンスター…… 魔物だろ」

「そうらしい……」

「なら、何かアイテムやら落とすはずや…… 出来る限りでええ、強そうなヤツいたらアイテム持ち帰ってくれ」

「ああ」


 俺は頷き返事をしたら、コベソがにんまりとし「あんちゃん、姉さん。 頼みますね」と返してきた。

 俺は、窓から外を眺めて辺りの様子を確かめる。



「……」


「…………」


「………………」



 俺は、表情を変えず、静かに踵を返し、この部屋から出る為扉に向かう。

 それを見たフェルセは、飛び出そうと窓にしがみついていたが、慌てて俺に着いてくる。

 コベソやログム国王やらこの部屋に残っている人達は、無言のまま俺たちの行動に視線を向けていた。

 何も無かったかのように表情を変えなかったフェルセが、部屋を出た辺りで俺に聞いてくる。


「どうしたんですか? 冥王さま」

「……」


 フェルセの声が届かないようにしている俺は、無言のまま来た順番を思い出して駆け足で外に出ようと下の階へ向かう。

 何度もフェルセから聞かれるが耳に入らないようにしている。

 城内には兵士やら人はいたが、声を掛けられる事もなくすんなりと外に出る事ができた。


「どーしたんですかぁー?」


 外に出ると街には人の悲鳴やら掛け声が相次いで聴こえ、魔物の暴れている音や声も多く聞こえてる。

 後ろから声を掛けてくるフェルセを、一瞬だけ見て居るか確認した。

 そして、俺は少し高めに飛び跳ね、軽やかに美麗な着地をしフェルセを見る。


「フェルセ、行くぞ!」

「……もしかして…… 窓から飛んできたフリですか?」

「……」


 俺はフェルセの言葉を無視して、街の中心街へと駆け足で向かって行く。

 だがフェルセは、俺に聞こえるように横に近づいて聞いてくる。


「ぜっぇたい、窓から飛んできたフリですよね!」

「フリでは無い! 実際に飛んできたからな」

「イヤイヤ。その行動…… ムリですって!」

「ムリじゃない」

「真剣にここまで降りてきたじゃないですか! みんなにバレバレですって」

「あの高さから飛んできたら、足痛くなるじゃないか!」

「私てっきり、神力使って飛ぶのかと思ってましたよ」


「……」


「わ、忘れてましたね!」

「忘れてないわっ! アレだアレ――――」

「アレって?」

「そんなに神力使っちゃぁいけないから、使わなかったんだよ」

「怪しい〜」

「フェルセ、魔物がいるぞ」


 少し大きめなコボルトが六匹ほど、鋭い爪で街の人達に傷を負わせていた。

 救う為、俺とフェルセは、コボルトの首を各三匹ずつ一瞬で切り落とす。


「あのー、助かりました」

「ああ、早く逃げるといい」


 俺が、そう言うと直ぐに立ち上がり傷を負った者と共に城の方へ逃げて行った。


「フェルセ、良いか!」

「カッコつけようとする冥王さま、なんですか?」

「良いか俺は、カッコつけようとしている訳では無い!」

「では、何なんです?」

「勇者と同じように飛んでいったら、俺たち勇者と同じ様な力を持っていると、思われるじゃないか!」

「良いじゃないですか、それ」

「俺は!目立ちたくないんだよ。 だけどなあの会場にいた冒険者よりは目立ちたい」

「……」

「俺はな、勇者とか魔王とか関わらず、普通の冒険者として依頼書取って受けたりとか、やってみたいんだよ」

「何となくわかる〜」

「だろ! まずは、あのダンジョンのモンスター? 魔物? 共をぶっ殺してドロップ品を根こそぎ貰うぞ」

「コボルトは、小っこい魔石でしたね」

「魔石でも何でも倒して、倒して、ひたすら集めるんだ!」


 鬱憤を晴らす為に俺は、見えた魔物をひたすらハルバードで倒してはドロップ品に変えて集めて行く。フェルセもなんだか楽しそうに魔物を切り刻んでいる。

少しずつですか冥王のフラストレーションが、溜まってきました。

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