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冥王さま異世界に憧れる。  作者: なまけものなのな
ヒューズ編
138/173

あーぁあああー

 日が沈みかかり、すっかり空はオレンジ色に染まりかけ、月が輝こうと夜空になるのを待っている。

 そんな時刻に俺とフェルセは、帝国に入ってからここまで護衛も兼ねて同行してきたヒロアクツ商会を束ねているコベソとトンドに会いに、彼らの宿に向かっている。


「なんで、彼らに会いに行くんですか? 明日でも良いじゃないですか?」

「アイツら、何を考えているかわからんけど、帝国を出るんだ。何か打ち合わせとかあるなら早めにやっといた方が良い」

「冥王さま、事務的ですね」

「フェルセに、頼ると勇者や魔王が出てくるから、アイツらに頼るんだよ」

「勇者や魔王は、私のせいでは有りませんよー。 あれは、エリスが悪い。 エリスが」

「おい、いくらなんでも未だに、エリスがアテナを含めた三人を恨んているとは思わないんだけどな」

「冥王さま、女の執念は、根深く、油のようにギトギトまとわりついて、深ーい闇の様に心の中で広がっていくんですよ」


 怪談話を話しているような口調と表情で、俺に悟らせようとしているつもりのフェルセだが、その口調と表情で俺は笑いながらも「悪い悪い」と言いそれでも笑ってしまった。フェルセは少し話を逸らそうとして、


「もぅ、エリスかどうか分からないけど、天使が動いていると言う事は、絶対に神界に関わっているヤツが問題を起こして居るんですよね」

「まぁ、そうだな。俺はもしかしら魔界の者も絡んでいると思っているんだけどな」

「魔界の者ですか? いくらなんでも冥王さまに楯突こうとする輩は居ないんじゃ……」

「俺ではなく、多分ゼウスに楯突こうとしてるんじゃないか。魔界には堕天使のアイツがいるから…… なんだっけ?」

「アイツですね」


 フェルセは、含みを持たせてそのまま話を止めている。何故ならコベソとトンド達が泊まっている宿に着いたからなのだが、あの堕天使の名前が、喉に突っかかっている感じがしている。すぐそこまで出てるんだけどな。

 宿の中に入るとロビーにコベソとトンドとその仲間がいて、ソファに腰掛けながら話をしている。コベソが俺たちを発見したみたいで、


「おー、あんちゃん達。 ちょうど良かった、探しに行こうとしても昼間全く見かけなかったしな」


 俺は、コベソ達に昼間の事を話をしているが、コベソとトンドに何人か青ざめた風に顔を下げる。顔色が良くないコベソが、小声で声を出して俺に聞いてくる。


「あんちゃん、赤い頭巾を被った女と言ったな?」

「あぁ、赤ずきんだ」

「あんちゃん達、よく生きて帰ってきたな」


 コベソの顔を見て俺は、赤ずきんを被ったレッドフーディの事を教えて貰っている。それは、昔から魔王が出現する同時期に現れる赤ずきんの女の子。出会ったら最後、一瞬で消されるらしい。


「出会ったら消されるなら何故、赤ずきんの話が伝わるんだ?」

「昔の話だから分からんが、なんでも魔王を倒した勇者が、その赤頭巾の女の子と戦って相討ちになったらしい。それで分かったんじゃないか?」


 トンドが、俺の疑問点に対して理由を教えてくれるが、そんな雰囲気では無かったけどな。


「あんちゃん、居ないんだろ? 赤頭巾。 なら、それは、置いといて明日の話だ!」


 静まり返ったみんなを持ち上げる為、元気よく声を出すコベソに惹かれるようみんなが、顔を上げていた。


「明日は直ぐにここを発つ。 そして隣国ヒューズに行きたいが、国境閉鎖中だそこでだ……」


 ソファの中心に広い机があり、そこには地図がある。全く地理を覚えて居ない俺にとって有難いって思ったよ。でも俺のコンソールシステムにマップ入れた筈だ。あんまり見ないし見たら面白くないから頭から外れてたけどね。

 その地図見ながらコベソはある地点に指をさす。


「ここ、隣国でもあるが小国のログムに向かう」

「マジですか? ログムって言ったら亜人の国じゃないですか?」


 コベソ達の部下一人が、手を挙げて質問してくる。


「確かに、亜人の国だが、そんなの関係ねぇ。 ヒューズも多種多様の国だ。 今まで来れなかった東の国の商圏を奪う時だ」


 コベソが、熱く唱えているとそれに向き寄せられるかのように部下達全員が拳を上げて「おー!!」と叫んでいる。冷静沈着そうなトンドも燃えているように天井に向かって拳を突き上げていたよ。


「コベソ、何か亜人の国というか、亜人だと何か問題なのか?」

「いや、過去に差別とかあってな。亜人は優しいヤツらなんだがそこを付け入れる悪い奴がいて一悶着があった訳さ。 その国は既に帝国の領地となっているんだがな。 その一悶着は未だに根強い蟠りを残しているんだ」


 少し、悩み気味に話すコベソだが、手を一回叩き解散しみんなをそれぞれの部屋に向かわせていた。


「何か必要な物とかあるか?」

「いや、あんちゃん達が入れば何も無い。必要な物は俺達が用意するから気にしないでくれ」


 それを聞いて、明日またこの宿の前に行くと約束をし、外にでる。

 ずっとソファにくつろいでいたフェルセは、俺の後に続いて外に出てくる。


「あー、亜人の国ですね。 亜人と言えばやはり獣人ですか?」

「亜人と聞くだけでファンタジーになってきたな。異世界冒険とはこういう物だよな」

「獣人って殺すとどんな魔石落とすんですかね?」

「おい、殺すな! 獣人、亜人と言っても人間だぞ。 出会ってすぐに斬りかかるなよ」

「人間なんですかぁー。 てっきり魔物かと思ってましたよ」

「嘘つけ!」


 俺はジトっとフェルセを見るが、目を泳がせているのがよく分かる。コベソ達の宿からだいぶ離れて後少しで俺達が取ってある宿に着くとニコニコしながらフェルセは俺に問う。


「冥王さま、思い出しました?」

「何が?」

「ほら、堕天使の……」


 何故今聞く?と思いながら俺は、少しフェルセを睨み、悩みに入る。


「ここまで来てるんだ……。 ルー、ルー、ルー」

「キツネでも呼ぼうとしているんですか? 冥王さま」

「ニット帽被ってないし、口とんがらせて言ってもない。 フェルセが、そんな質問してこなければ!」

「そのドラマを観ているんですね?」

「閻魔が感動するから是非と言ってきてな。観てたぞ」


 北国を舞台にしたヒューマンドラマだ。役者が変わること無く長編ドラマで俺は当時ハマってたぞ。


「今は、その……。 なんだ、堕天使の。 ヤツの名だ!」

「冥王さま、ルシファーですよ。 ルシファー」

「あっ、あー。 そうなんだ、そうだったな。 うん」

「もしかして、冥王さま? 知らなかったんですか?」

「神界の、しかも魔界に堕ちたヤツの名前なんて覚えてない」

「一応、神に一番近い力を持った天使だったんですよ!」

「しらん、兎に角。明日やっと帝国抜けるぞ」


 俺は、帝国という言葉に気を取られ過ぎて、レッドフーディが現れたという事は魔王が存在していると言う事に何も気にしてはいなかった。

読んでいただきありがとうございます。


すんなりと帝国を抜け出せそうな冥王一行です。

次回は亜人の国ログム。


これからも応援よろしくお願いします。

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