おおがらす
バサバサと翼を広げ大きく見せてくるおおがらす。
カーカーと大きい嘴を大きく開け威嚇してくるおおがらす。
俺とフェルセが、少しずつほんの一歩二歩と近づくにつれ、その行動が大きく激しさを見せる。だが、少し変だと感じたので。
「フェルセ、こいつら攻撃してこないぞ」
「ですね。なんだか近づけさせないように見えますね」
「どうするか?」
「冥王さま、油断大敵ですよ。このおおがらす、実は……」
「実はってなんだ?」
「ようすをみている」
「――――そうだな。 でどうする?」
「はぁ、冗談ですよ。でも向かってきたからには倒してもいいんじゃないですか? 埋葬地にくる魔物を追い払う依頼ですから」
「そうだったな。倒すか」
「冥王さまのこうげき、おおがらすAです」
俺は溜息をついて一番左にいるおおがらすへハルバードを一突きすると、おおがらすは大きく翼を羽ばたかせ回避しようとするが、俺の突きが速かったようでおおがらすの頭を吹き飛ばし、首から血が噴水のように出て翼を広げた胴体は後ろにゆっくり倒れていく。
それを見ていたと思える二匹のおおがらすの内、順番的にBのおおがらすは翼を羽ばたかせ空へと舞い上がろうとする。だが、
「フェルセのこうげき!!」と叫びながらおおがらすの胴体に剣を突き刺して地面へ投げ飛ばす。
ピクピクッと体を痙攣させてながら地面をのたうち回るおおがらすB。その地面は次第に赤く染まる。
「おおがらすBにかいしんのいちげき」
「なんだか、楽しそうだな」
「楽しくないですよ。キマイラ倒した次がおおがらすって…… ゲームだったらバランスおかしい過ぎです」
おおがらすBは痙攣も血が出るのも止まり息絶えたようだ。最後の一羽であるおおがらすは、既に空へ飛んでいて旋回している。
「もぅ一羽は?」
「空だ」
旋回していたおおがらすは、いきなり急降下を始めて俺とフェルセに突っ込んでくる。
俺とフェルセは、それを難無く交わすがおおがらすは、再び空高く舞い旋回している。多分だが俺たちの様子を見て攻撃を仕掛けようとしているんだろうと俺はそのおおがらすを眺めていた。
「あんな高い所いたんじゃ、攻撃出来ないよな」
俺はフェルセに言言いながらもおおがらすが飛んでいる様子を見て空を見上げている。突然、おおがらすの動きが不自然になりまるで乱気流に飲み込まれたと思っていたら、更に火がおおがらすの身を焼き焦がして地面へと墜落した。
フェルセの方を振り向くと、魔石を持って手をおおがらすが空に向かって手をかざしていた。
「空にいれば安全なんて思わない方が良いわ」
それは、ごもっともだがなんでフェルセは、直ぐに仕留めようとするんだろうな。最後のおおがらすは、何かしようとしてたかもしれないじゃないかと思ってたらフェルセが、奥の方を見ている。
「冥王さま、あれ何ですかね?」
「あれ? 俺の倒したおおがらすに普通のカラスが群がって…… 食べてるな」
「マジでぇ!」
フェルセは、嫌悪の情がもよおす顔をしながら身を震えている。
おおがらすの死体に三・四羽群がっていると普通のカラスは、翼を広げ甲高く鳴き始めたと思った時には、既に大きくなり俺たちの方を振り向いていた。
「おおがらすに成ったぞ」
「食べるだけで……」
フェルセが倒した二羽のおおがらすにも数羽群がっていた。その数匹のからすも大きくなりクァークァーと、重なり合う鳴き声がこの埋葬地を囲む木々に反射して響きあっている。
既に大きくなったカラスが、俺へとかなりのスピードで突撃を仕掛けてくる。俺は、ハルバードで突き刺し串刺ししたおおがらすを地面へとほおり投げた。何度も翼を動かし血も噴き出してい悶えてるおおがらすに、再び木から数羽群がって食べ始める。
その時既にフェルセも二・三羽のおおがらすを倒していたが、それにもカラスが集まり死体をつっついている。
倒しても倒してもカラスが、集まり死体を喰って再び、おおがらすになるし、何故かカラスが減りそうな気配がしない。
「冥王さま、結構倒したけど……」
「あぁ、だけど、まだまだ気配消えなんだよな。いつまでたってもキリがないぞ」
俺の見渡せる範囲で数十羽の骨しか残ってないカラスの死骸が、あちらこちらにある。
「魔石も無いし……。突撃か飛んで回避か、それしか攻撃してこないから――――」
「俺たちは、避けるか殺すかのどちらかしかないな。ガンガン行く必要すらない」
更に十数羽倒したところで群がるカラスが少なくなったような気がした。だが、それはこの後起きる前触れだった事にこの後わかる。
「カラスが、減ってきましね。夜までかかるかと思ってましたけど」
「まだ真昼間だからな……。でもなフェルセ」
「冥王さま?」
「俺の感じ方かもしれんが、カラスの気配……。数減ったように思えないぞ」
「今あそこにいるカラス。前なら三・四羽だったのが一羽か二羽ぐらいですよ。完全に気配見失ってぇー」
最後の言葉を残してフェルセは、目を丸くしてカラスの方を見えている。それは、さっきまで死骸だった骨だけのカラスが、目を赤く光らせて翼をはためかせて、俺たちを見る。そして口を広げ「ガァーガァー」と鳴き威嚇してくる。
俺は、骨だけのおおがらすを睨みつけてながら見ていると頭蓋骨の目が合った所や隙間や穴から赤い輝きが出ている。頭を吹き飛ばしたおおがらすも、何故か頭は再生していて、他の骨だけのおおがらすと同じように羽根をはためかせていた。
「羽も無いのに、良く浮いてられるな」
「魔法ですかね、赤い光だけど炎属性の魔石じゃないと見たっ!」
骨だけのおおがらすに突進し粉砕していくフェルセを見て俺は、頼もしいなぁと思ってましたけど、実際俺の所にも一羽攻撃をされた。だけど、骨だけのおおがらすの攻撃は、おおがらすと全く同じような動きになっている。
骨だけのおおがらすとおおがらすにカラスが、閑散して俺たちに狙いを定めて攻撃を仕掛けてくる。だが、俺やフェルセの攻撃は、単に潰すだけだからなんにも変わること無い。
「ガァーガァー」
「カーカー」
「ギャーギャー」
おおがらすや骨だけのおおがらすに木々に隠れている普通のカラス共が、俺たちを威嚇するのに鳴いている。それが各々勝手に鳴いているため不協和音であり耳障りでしかない。
そして、俺の周りには少しだけだが、赤い魔石が散乱すると共におおがらすの死骸に群がっては、それを俺はハルバードを使って退治している。
一読ありがとうございます。
天候不順なこの時期、たまにですがカラスを散見します。
最近、地域のゴミ回収の大きいカゴに入るカラスがいました。ネットが邪魔をして出れなくなったカラスを助けるのか、もう1羽のカラスがネットを嘴でまくり上げて出れなくなったカラスをたすけてました。
本文とは、全く関係ないですがそんな事あったなと思っただけです。
今回おおがらすを思いついたのは、昔お墓参りにカラスが居たのを思い出したからです。
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頑張っていきます。