ニフライの依頼
俺とフェルセは、二フライの街で一夜明け冒険者ギルドの真ん前に立っている。もちろん宿は、コベソ達とは違い冒険者ギルドの近くにある宿で、部屋は個別なのは当たり前だ。
日が昇って間もないが、昨日コベソ達と食事を取ったお店の料理が絶品で、本当に戦地なのかと思えるほどだった。
何故、俺達は冒険者ギルドにいるかと言うと、帝都へ荷物を運んでいた馬車が本日二フライに到着するという事なので、それまで自由行動なのだが、やる事を探しに冒険者ギルドに入って依頼を探している。
だが、良くみていると『傭兵募集』『護衛依頼』が多く今まで見てきた冒険者ギルドにありそうな依頼が無い。
俺は、組まなく見てはいるのだが、そんな時フェルセが、一枚の依頼書を手に取り俺に見せてくる。
「これ怪しすぎません?」
覗き込むようにその依頼書に目を通してみると……。
「なんだこれ? 戦死者の埋葬地巡回!?」
「ちょっと気になるんで聞いてきますね」
フェルセは小走りでカウンターにいる受付の人に依頼書を見せながら話を進めてる。俺も直ぐにカウンターに付いて話を聞いておく。
「これですね。 これ、街外れにある戦死者を埋葬してある共同墓地があるんですがね。 魔物が近づいたら追い払って欲しいと言う依頼なんですけど……」
「なら、兵士にやって貰えば良いのに」
フェルセの返しはご最もだが、困惑気味に眉をひそめている受付の人が返す。
「この依頼、実は国から依頼で…… 兵士に…… とにかくうちの冒険者ギルドに依頼があったので貼ってます」
返答になってないが、受付の人は声を張り上げて伝えてきたけど何かありそうだな。
「これ、何か隠してない?」
フェルセが、チラッとギルドカードを受付の人に見せると黙って流そうとしてた顔から一変、深い溜息を吐いて告げてくる。
「実は、埋葬地からアンデッドが現れるそうです。本当かどうか分かりませんが。 前までは兵士の人が巡回してたんですけど、何人もの姿が消えたと話がありまして……」
兵士の人が居なくなって怖くなったから、冒険者ギルドに依頼してきたと言う感じかな。そして、なんでも街を警護している人が動いている何かを見たと話があり、埋葬地から離れよとしないみたいと受付の人が話してくれた。
「埋葬地から離れなければヤツらは襲ってくるって事ね」
「はい、仮にアンデッドがいたらですよ」
「冥王さま、この依頼受けましょう」
くるりとフェルセが、俺の方を振り返り目をキラキラ光らせている。少し疑問があったので俺は受付の人に尋ねる。
「そうだな。で? やはり夕暮れ辺りからの行った方がいいのか?」
「うーん。 そこは分かりかねますが、警護の人は日中に目撃したと言ってたので、時間は関係ないかもしれません」
「それじゃぁ、これやるわっ!!」
フェルセは、いきなり受付の人に向かって張り切った声を出して依頼受諾をする。いきなり来たものだから驚いて返事をして慌てている。
街を出て北東に進む俺達は小様々な砂利で舗装されている道を歩く。受付の人がこの方向に戦死者の埋葬地いわゆる墓地画あるそうだ。徐々に近づいているのが何故かわかってしまう。
それは、直立でなく妙に歪み曲がりあった木が沢山生えて、いかにも心霊現象が起きますよと言う雰囲気の場所が目に入る。
その木々に黒い塊が実っていると思っていたら『カーカー』と鳴き声が聴こえて烏かと認識する。埋葬地に近づくと烏が数匹羽ばたき出し飛んでいく。
「ホントに魔物なんてくるのか?」
「受付の人も街の門まで来て、この場所指さして『あっちの方でーす』だけの案内ですもんね」
「もしかしたら、アンデッド系魔物出るかもな」
「出ても倒すだけだから良いんですけど……。 埋葬地って言うから墓地を想像してたんですけどね」
墓地と言えば墓地だが無作為に墓標と思える丸太が、地面に突き刺さってはいるけど、それには死者の名前が書かれていない。
「ホントに埋葬だけして、それっきりみたいだな」
「この、杭なんて朽ちすぎてますよ」
埋葬地の真ん中までウロウロしながら歩いていると周りに生えている木々の葉が風に揺られ不気味な雑音を鳴らし辺り一面空気が変わる。烏達が何かを勘づいたのか『カーカー』と威嚇する様に鳴き出した。次第にその鳴き声は大きくなるとフェルセが空に向かって指を指す。
「冥王さま、上!!」
その声に俺は見上げると太陽の陽射しに紛れて黒い影しか捉えられないが、三羽の鳥の姿が埋葬地の上を自由闊歩の様に飛び回っている。
「眩しい…… けど、あれカラスですよね」
「嘴がそう思える。鳴き声がカラスだしな」
「あれって……」
「おおがらす」
「って事は!『おおがらすがあらわれた』ですよ」
「それ、コマンドだ。 たたかう、まほう、アイテム、逃げる。 どれ選ぶ?」
「もちろん、たたかう、ですよ。 ガンガンいこうぜですよ冥王さま」
空を待っている三羽の大きいカラスを見ていると、太陽の光を遮っていて一瞬見逃していたが大きいカラスが何やら大きな石らしき物を次々落としてくる。
「危なっ!」
大きな石かと思っていたが、大型獣の魔物と思える頭蓋骨を落とし、高い所から落としたせいか少し地面に少しめり込んでいる。
そして旋回しながら落とした頭蓋骨の上に乗る大きいカラスは、成長仕切った豚もしくは猪程の大きさだ。そんな大きいカラス三羽は、羽根を羽ばたかせながら、嘴を大きく広げ癇に障る鳴き声を辺りに響かせて、俺たちを威嚇している。
「冥王さま、ココから戦闘ですよ」
「やけに、はりきっているな」
フェルセは、白と黒二本の剣のうち白い剣だけ持って構えている。俺もハルバードを持ってるけど構えず少しずつだが大きいカラスに近づく。
「あのおおがらす低ランクの魔物ですよ。 なのに立ち向かってくるなんて何かありそうじゃないですか?」
「何かありそうじゃ…… 無ーい! あってたまるか。 と言うかあれの名前…… おおがらすなのか?」
「そうですよ。 おおがらすです」
「アハハ」
てっきりカッコつけてビッグクロウかと思ってたんだけど、辺りにいる烏もカラスってこの世界で正式名称なのかな。
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