二フライ駐屯地
二フライの街に入ろうと進んでいた俺達を乗せているコベソとトンドの商隊は、軍隊の駐屯地へ路線を変える。
積んである武器や薬を卸す為である。だが、見つかったら問題じゃないのか?と思ってたら。
「あんちゃん、普通ならここを遠ざけて街に入ると思うだろ。だが、敢えて近づくのが…… 灯台もと暗しと言うだろ? でも、荷物降ろすのはここなんだよな。どのみち兵士に会わないといけないしな。 見つかったら見つかったで何とかなるだろう……」
曖昧な回答をするコベソは、堂々と御者の後ろに立ちながらそとを眺めている。
「兄さん達は、見つからないと思う。 手配書とか帝都から届くのに時間かかるしな。 俺たちみたくこの魔法道具すまぁとぼん持ってないから伝達遅いはず。 ただ……」
トンドは、意味深な間を残しながら立ち上がり、コベソに近づき同じように立ちながら外の景色を眺め始めた。トンドの解答は、あながち間違ってないと思う、だけど帝国の通信網がしっかりして、伝達手段が早い道具を使ってたら問題だよね。
そんな事思ってたら軍隊の駐屯場所へ着く。そして入り口から普通に入ろうとしたら、見張りの兵士に槍で遮られ止めされられた。
「おい、お前らここを何処だと知っての事か?」
「街は向こうだ、許可もなく勝手に入ろうとするな!」
威張りきった態度でこの馬車に近づく兵士にコベソは、馬車から身を乗り出して見張りの兵士に睨みつけて口にだす。
「お前らこそ、このヒロアクツ商会の馬車だと知っててその言動か?」
「お前らの事など知らん。 引き返せ!」
「ほら、引き返せ!」
追い払うように手を振り出し兵士達は、にやけながら「ほらっ、ほらー」と言ってくる。しかし後ろから目の前の兵士より数段上品な格好をしている兵士がこちらに駆け寄ってくる。
「お前ら!!なんの騒ぎかと思ったら」
「たっ、隊長!?」
慌てふためく二人の兵士達が、目をきょとんとしながら状況が読み込めずにいると、隊長の激が飛んでいた。
「お前らにも言っておいたろ!数台の馬車が来たら報告しろと。 しかもヒロアクツ商会ならお通ししろと……。 すみません、ヒロアクツ商会の方々ですか?」
「あぁ、そうだが。ここ入っても良いのか?」
「もちろんです。お前ら何ぼさっとしてる、持ち場につけ!」
見張りの兵士は、落ち込みながらそそくさと走り持ち場に戻って行った。
そのまま駐屯地の中に入り、コベソとトンドに彼らの部下は武器等の荷物を降ろしている。
俺とフェルセは、その光景をただ見ているだけであった。
「すみませんな。ご迷惑をかけて」
「いやいや、この地でヒロアクツ商会の名は、あまり知らないでしょうな。仕方がない事ですな」
「そう言っていただけると……」
隊長の人も汗拭きながら笑顔で返事をしている。荷物を降ろす作業も終わり出発する準備が整ったようで、俺とフェルセは空かさず荷台に乗っている。コベソは、隊長と話しながら別れを告げてこの駐屯地から二フライの街に向かって走り出した。
「――――やはり、伝達されてないな」
「そうだな。 姉さんが双翼のフェルセと分かるぐらい堂々と居たのに、何も言われなかったな」
確かに、兵士達はコベソとトンドの荷物を降ろしたり検品したり、また、兵士達は訓練や作業をこなしていたが、俺たちに何も気にかけてなかった様に今思えてくる。
「二人の事、多分だが護衛か俺達の従業員か、そんな風にみえたんだろうな。 二フライを出発するまで大丈夫だろう」
コベソが、荷台で高笑いしていたら、俺とフェルセに聞いてくる。
「そう言えば、あんちゃん達は俺やトンドの……。 ヒロアクツ商会の名を知らんのか?」
そう聞いてきたので素直に手を横に振って否定すると、フェルセも同じような動作をしていると、コベソとトンドは軽いため息を吐いた。
「やはり、そうだよな。ロムケの街で依頼を受けて貰ってから薄々と感じてたんだが……」
「俺の名は分かるがコベソの名を聞いたら、大体の冒険者な構えてしまう程なのにな」
「双翼のフェルセ姉さんも知らんとは、まだまだ世界は広いと言う事だな。 ガッハッハァー」
また高笑いするコベソをよそに、トンドが自分達の事を話してきた。
「兄さんと姉さん。 俺達ヒロアクツ商会は帝国に支店はかなり前に訳あって撤退したが、他の国には至る所に店を構えている商会なのだ。しかも……」
「しかも! 独自の生産工場や研究施設を持っている商工ギルドNo.1の商会なのだぞ!!」
話の途中にコベソが、割り込んで自分の商会を自慢げに話してきたらトンドは、何故かほっと胸を撫で下ろしているそんな感じだった。
「今回、帝国に収めた武器防具や薬…… 利益ほんの少しだな」
「そうだな、帝国に俺らの名を売って、やはりヒロアクツ商会が必要だと思われれば良いけどな」
「戦争なのに、仕方ねぇな。 種まきと考えて於けば何かあるかもしれん」
そんな二人が会話をしていたら御者の人が「二フライ入りますー」と言いながら検問を通過し馬車が止まる。俺は荷台から降り背伸びをして体を解しながら街の雰囲気を眺めていた。
「あんちゃんと姉さん、明日一日この街で待機ですよ。 明後日出発で、そのままヒューズに入ろうと思います。 よろしいですか?」
フェルセの顔をみて、頷いてきたので、俺はそのまま「あぁ、俺とフェルセはそれで大丈夫だ」と返事をする。
「では、明後日の朝ここに集合で。 我らはこの宿に滞在するので何かあったら言ってください」
コベソが、指してきた宿は、極一般的などの街にもあったような佇まいの宿である。辺りを見渡しているとトンドがしっかりと声を出してながら説明してくる。
「戦地近いだけあって普通なら避難する人が多いと思うんですがね。 何故か活気が溢れるぐらい賑わっているんですよ。 冒険者ギルドもありますからね尋ねて見てはいかがですか?」
トンドの話の中にあった冒険者ギルドというキーワードを耳に入れたフェルセは、移動中の時よりも数段目を輝かせていたよ。
読んでいただきありがとうございまする。
次回は二フライの冒険者ギルドで
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