勇者ユカリVS冥王2
無数の金属音が、辺りに響いているのを俺は気にすらしていない。多分だが俺の近くにいる2人も気にしてなく、ただ剣を振るって攻防を繰り返している。そんな俺もユカリに加担してフェルセに攻撃をしている。
俺のガントレットでユカリの動作が遅くなっている筈だがあまり変化してないようにも見える。ユカリの動きは、魔法にて速い動作をしてフェルセに猛追している。
「メイオウさん、このままじゃ……」
「ユカリ、少し速くするよ」
「フェルセさっ!」
フェルセの剣捌きが、速くなり2本の軌道が4本、6本と倍に増えていく。その斬撃をユカリが持つ剣で防ぎきれず弾くのだけで精一杯に、フェルセとユカリの攻防が、逆転する。
勿論俺も、突きを繰り出しているがそれを弾きつつ流してユカリへと、斬撃の勢いでユカリは擦り傷を追っていく。
「いゃっ。はっ!」
「ユカリ、冥王さま。ここから私のターンっ!!」
「何を言う。ユカリ、一旦下がって回復しろ――――」
「えっ?はい!!」
「―――ここはフェルセを抑える!」
ユカリは、大きく返事をしてすぐ様この場から離れる。俺はフェルセの流れるように扱う2本の剣の刃をハルバードで捌いているとすぐにフェルセも俺からは遠くに離れ手を出して俺の静止する。
「ちょっ……。冥王さま」
「フェルセ、どうした?」
「なんで私と冥王さまが、戦うんですか?これユカリの――――」
俺は、熱くなってたらしい。フェルセの言葉に事のことを忘れていたからね。
「――――熱くなりすぎてますよっ!」
「やっちまったな。アハハハ」
誤魔化す為に笑っておこう。
「何笑ってるんで……」
「フェルセさん、メイオウさん。周り……」
離れてた2人が近づき辺りを見渡していると勇者のヤスユキとマサキ、そして共に行動していた冒険者達がこっそりと観ていた。
「鈴木さん、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫」
駆け寄ってくるヤスユキが心配しながらユカリに、声をかける。
「まさか、鈴木さんここまで強いとは……」
「ああ、俺もビックリしたよ。冒険者ランクAのフェルセさんとあそこまで対等に戦えるのって」
マサキも近寄ってきてユカリに声を掛けている間、後ろの方で冒険者達が小声でざわついているけど確り聴こえてるんだよね。
「アイツのランクたしかEだろ?」
「もしかして強いヤツで今までギルドに所属してないんじゃね」
「あんな細いんだぜぇ、付与魔法とかに助けられてるんだよ」
など、最後のヤツ失礼だなと思いつつも、無視をしながらフェルセは、ユカリに話しかける。
「体動かしてどうだった?」
「フェルセさん。死王と戦っても居ないのにグダグダ考えてたのがおかしくて」
「あっ!すみません、すみません」
奥にいた冒険者達を、かき分けて俺達のいる所まで息を切らしつつカボチャの様な帽子を押さえながら走ってくる王の従者は小柄で袖が広がった着物の様な服を着ていた。
「はぁ、はぁっ。勇者様方こちらにいたのですかぁー」
従者は、中腰になり倒れそうな体を膝に手をついて呼吸を整えているよ。
「今回の戦争にて国に仕官している神官数名を各部隊に配置し聖魔法の補助をさせると王から勇者達に伝えてくれとありました、後……」
「それは、良かった。ね、鈴木さん」
「うん、これで勝てる見込みが増えたし」
従者が何か言おうとしてたのを遮りヤスユキは、ユカリを想っての事か笑顔だしユカリも笑顔で受け答えしている。
「康幸!イチャつこうなんて、させえねからなっ」
「し、しようなんて……」とヤスユキとマサキがある意味イチャついているけどそんな中ずっと「あのー」と数回繰り返している人がいた。
その人、従者は「あっのぉぉ!」大きな声を出してこの場にいる者がその声を出した従者へ視線を向ける。
「あっ、そんな、いきなり見ないでぐださっ」
従者は、恥ずかしくなったのか顔を赤くなりここにいる全員の視線からそっぽを向くと被ってたカボチャみたいな帽子が落ちる。
「うわっ、見ないでくださーい」
「クルクルしてる」
「天パー?」
2人の男勇者が、従者の頭を見てその言うが、天パーよりどこかの民族みたいな髪を束ねて貝の様に纏めている。
「この髪型凄いですね」
「これ、どうしているの?」
ユカリとフェルセも冒険者達にいた女の人も従者の髪型をまじまじと見ている。
「ひゃぁ!見ないで」
落ちた帽子を拾い上げすぐに被る従者はさっきよりも真っ赤になり少し涙目になっていたが「あっ、勇者のお二人!」とヤスユキとマサキに指をさす。
「王が、お呼びです。なんでも魔王に関してと言ってました。その付き添いの冒険者達様も一緒。さっきの王のテントへお願いします」
言ったらすぐにスタスタ歩きだした小さい従者が、更に小さく見える所で振り返って怒鳴る。
「ちょっと!みなさん、何しているんですか?着いてきてください」
従者は、笑顔でクイクイっとコッチに来てと手を振ると何故か勇者ヤスユキとマサキは向かっていき、続いて冒険者達もついて行く。勿論文句も出ていたが俺は流したよ。
「王は、何か発見したんですかね?」
「もしかしたら魔王とライルベルズ王の息子の件で何か分かったんじゃない?」
ユカリとフェルセの言ってた事だか、多分そうだろう。
「まぁ、あれだな。任せておけば大丈夫だろう、それよりユカリはどうだ?」
「えっ?あっはい。やはりスキルはまだ使えない……。でもレベル上がってますね」
ユカリは、レベル上がってやる気を出している。さっきまで暗かった顔が戦うにつれて変わるのは勇者としてなのか本人の素なのか分からないけど、明るくなって良かったのは事実。フェルセの機転も有難いかな。
「ユカリ、休見ましよ。あと少しで始まるんじゃないかなぁ」
「そうですね、休んで備えますかぁ」
フェルセとユカリは、そのまま用意されたテントへ向かうので俺も着いていこうとするとフェルセが振り返る。
「冥王さま、テント入っちゃダメですよ」
「なっ……!」
「そりゃそうでしょう。女の部屋に入るなんて失礼というか、変じゃないですか。行こうユカリ」
「あっ、はい」
2人そのままテントへ向かい消えていく。
そして、俺は少し冷たい風が吹く中、広い空き地にひとりぼっちでただずんでいる。
読んで頂きありがとうございます。
小柄な王の従者がどうなる?
これからも頑張って行きます。