進軍当日。何かおかしい?
1夜開けて遂に進軍する日が来てしまった。
だが、まだ俺とフェルセは自室に居て呼ばれるまで待機している。
「魔王を倒しに行くのに、大軍で攻めに行くんだな」
「よくあるファンタジーなら勇者と仲間数人で魔王の元に向かうのが定番ですよね」
「だろ、でも魔王の軍が国境まできているのなら軍隊で向かうのが普通か」
「噂では、軍隊はそこで戦い別ルートで勇者達は魔王の所に向かうらしいですよ」
「それって?」
「さっき言ってたファンタジーの世界と同じですね」
「何かでセリフがあったな……。 『勇者は暗殺者か?』と」
「勇者と数人で一国の主を倒しに行くんですからね、暗殺者が忍んで殺しに行くのと同じですね」
「そんな事言ってたらファンタジーの物語はつまらなくなるよなぁ」
「冥王さまは、どっちがいいんですか?戦記物ですか?」
「正直どっちでもいけるけどな、ライルベルズの魔王の軍隊に人はいるのか?」
「分からないけど、行けばわかるんじゃないですか?」
「もし、殺されてアンデッドとかになってたら面倒だな」
「面倒?」
「この世界を見ている輪廻課の担当は誰だ?」
「この世界……。 分からないです」
「俺もわからん」
「えっ?冥王さまでもわからないんですか?」
「そりゃそうだろう。数多くある世界なんだ、どの天使がやっているかわからん。たぶんヘカテーならわかるんだろうな」
「なんで、そこでヘカテーが出るんですか!!」
フェルセは、むくれて窓の外を見ている。
呼ばれるまで待機しているけど、そろそろいいんじゃないかと思ってたら突然フェルセが大声を上げる。
「冥王さま、冥王さま!」
「なんだ?」
「ユカリとか出発してますよ」
「なっ ぬ?」
「なぬってなんですか?冥王さま……」
笑って答えているフェルセだが、俺もなんでその言葉が出たのか分からないな。普通出ないよなぁと思ってたらトントン、と扉をノックされる。
俺は、返事をして開けさせるとやって来てた使用人の女性が、部屋に入ってきたらフェルセが、詰め寄って行く。
「ちょっと、みんな集まっているじゃない?呼ばれるの待ってたのよ」
「すみません、フェルセ様にメイオウ様―――」
使用人の女性が、改まって落ち着きながらこう言ってきた。
「――――勇者ユカリ様の要望によりお二人は、魔王討伐の軍から外させて欲しいと、その事を伝えに参りました」
「何故?」
「正直、フェルセ様が外れるのは痛いと思いますよ。原因としてら……」
使用人の女性が顎に人差し指を付けて俺を見てきたらフェルセも俺を見る。
「ありがとう、教えてくれて」
使用人の女性を、帰らせたら俺に迫ってくる。
「もおー、冥王さまがキチンとレベルあげてないから!!」
「なっ!フェルセ、お前が戦いに入れさせないからだろ?」
「そっ、そこは強引にはいるもんですよっ!」
「聞いただろ!」
「もぅ、今はそんな事話している場合じゃないんですよ―――」
確かに、過去の話をしてたって意味は無い。と言うより俺もフェルセも魔王や四天王の死王レッドフドも見たいから。
「――――冥王さまが、ユカリよりも強いってとこ見せれば良いんですよ。今から駆けつけて引導を渡してやるんですよ」
「何かちょっと違うような……」
「関係ないんです。勘違いしているユカリに気づかせるんです」
「思いっきりやってもいいのか?」
「最低限ですよ。あの黒いの無しです」
この世界の者に対して出す気は無いし、フェルセの言っている事も、ごもっとも。ちょい強い辺りで行こうと言うことでフェルセと俺は討伐軍が、いる所に向かって行く。
「ユカリ!!」
討伐軍の馬車に乗り込もうとしているユカリにフェルセは、指さしている。もちろんもう1つの手は腰に当てていた。
「フェルセさん、すみません」
「何が?」
「置いていく様な真似をして」
「どうせ、冥王さまが弱っちぃから置いていこうとしているんでしょ?」
確かにレベルの設定は、弱いが本人目の前に『弱っちぃ』というか?
「そうです。メイオウさんは、弱っちぃです。この先魔王と戦うのに何が起きるか分からないのです。いると迷惑なんです」
あまりにも酷い言われような俺だが外野の冒険者も『弱いやつは引っ込め』とか『どうせランクAのヤツに隠れてるだけだろー』すごいヤジが飛ばされてる。ちょっとイラってしちゃうけど大人の俺は、深呼吸して落ち着いている。
「本当に弱いと思っているの?だったら冥王さまと戦って、冥王さまが負けたら私も諦めるわ」
「わかりました。それじゃっ、メイオウさん勝負です」
馬車から俺の目の前に魔王討伐の為に用意されていた鎧を装備したユカリが、新しい剣を抜いてやってきた。
そんな俺も、ハルバードを取り出して睨み合う。
「メイオウさん、良いですか?」
「いつでも……」
俺がそう言った瞬間、ユカリの剣が俺の首を目掛けて切りつけて来ようとしたが、それをハルバードで防ぐ。
「次は……」
ユカリの剣が幾度なく俺に切りかかってくる。周りの冒険者や軍隊から『おお!』という声が四方八方聞こえてくる。
ユカリから放たれる斬撃の音が次第に多くなるがそれと伴ってハルバードから発生する金属音も多くなる。
全てユカリの斬撃を俺はハルバードで防いでいる。そんなこと思ってたらユカリが、攻撃をやめ俺から間合いをとって剣をかまえている。
「そんな事ない、私の攻撃全て受け止めてる……」
「そりゃ冥王さまだもん。まだまだ1歩も動いてないしー」
自慢気になっているフェルセだが、周りの人々が唖然としている。
「だって……」
ユカリの一言は、多分だけどレベルが低いのに私の攻撃受け止めてられるなんてという意味なのかなぁ。
「ユカリ、行くぞ!」
俺がそう言ったら剣をかまえている。俺はハルバードを横薙の一振をしてユカリの剣に当てると辺りに大きく金属がぶつかり合う音が響き、剣を持ちながら痺れているような顔をしてよろけながら後退する。
「いっ……!なぁーっ!」
よく分からない掛け声と共に俺に飛びかかってきて幾つもの攻撃を繰り出しては俺がハルバードで受ける、まるで強風と豪雨のような攻撃だ。
ユカリは、必死な目をしているし周りの冒険者達や軍隊の人々は声さえ出ずに、ただ俺達の攻防を見ている。
俺は、ユカリの攻撃を受ける為にハルバードを少し動かしているだけ。
こう考えている間でもユカリの攻撃が止まない。
攻撃が、通らないんだから諦めて出発しちゃわない?って考えてユカリを見る。何故か、俺と目があった瞬間俺から離れる。しかもユカリの顔が青ざめているような感じがした。
「わっ……。 わかりました」
良いながら剣をしまうユカリは、顔に汗をかいていた。
「冥王さま、やりましたね」
「あぁ」
「ユカリ、私達も行くわよ」
「私と一緒の馬車に……」
と言って俺とフェルセは、ユカリの後に続いて同じ馬車に乗る。
周りの冒険者達や軍隊の人達は、静まりかえっている。
もちろん幌馬車だけど、中は快適な感じはしなかった。
読んでいただきありがとうございます。
ここから新たしく章が変わります。
ライルベルズ編です。
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