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初夜に例のセリフを言われましたので言い負かしてみました  作者: もも


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3/3

後編

読んでいただきありがとうございます!

 旦那様が甘くなった。

「アンナは今日も可愛いね。これから散歩かい?一緒に行こう」この調子で朝から晩までぴったりとくっついてきて世話までやこうとする。


朝起こしに来るのも髪を梳かすのもドレスを選ぶのも旦那様になった。

私の専属侍女は離れたところで生温い目で立っている。仕事を取られてしまって気の毒すぎる。

流石に着替えやお風呂は手が出せないので、侍女がきびきびと活躍している。




「あの、お仕事をいたしませんか?大雨で崩れた山の斜面の補強とか道路を修繕とかやることは沢山ありますわよね。書類の見直しもありますわ。旦那様と一緒に考えたいのです。流された畑にも新しい作物が出来るようにしませんと。お仕事の出来る殿方ってとても素敵だと思いますの」


私は彼を煽てて仕事へと動かすことにした。


「うん、一緒にしよう。そろそろ泥濘んでいた土が乾いた頃だと思うんだよ。畑の排水溝の点検はさせてある。流された畑には水はけの良い土を入れて肥料を注ぎ込もう。まずは山肌をセメントで固めて道幅も広くしなくてはいけないね。植えるのは何がいいだろうか?」


「早く育つように種ではなく色々な野菜の苗を送りましょう。特産品になるものが良いですよね?領地は比較的涼しい所でしたわよね?」


「そうだが…やはり、芋か?」


「普段は乾燥しがちで涼しいなら、芋がよろしいかと思いますわ。万が一の時に蓄えがあると安心ですし」



こうして私達は莫大な投資をして芋の名産地として領地を立て直すことに成功した。種類も増やした。新しく整備された道路のお陰で輸送が捗り、鮮度を落とすことなく王都に運べている。領地での保冷所も作った。これで一年中食料には困らなくなった。領民が飢えることももうない。




「アンナは我が侯爵家の女神だ。もちろん私の唯一の女神であり天使だけど」

旦那様がとびきり甘い笑顔で、砂糖のように甘い言葉を惜しみなく囁いてくる。





契約の一年がもう少しで終わろうとしていたある日。


「この契約の継続はして貰えるだろうか?いや、言い直そう。私と結婚してください」


旦那様がその場に膝を付き蕩けるような瞳で私を見つめ、指先にそっとキスを落としプロポーズをした。

サファイヤの指輪を差し出し熱のこもった目で見つめてくる。


なりふり構わず縋って来た初日のあの日から、きっと情が湧いていたと思う。


「……お受けします」



「アンナ愛している。私の唯一。君だけしか愛さないし目に入れない」

旦那様は堪えきれないといった様子で、私を強く抱きしめ、肩に頭を乗せた。


「もう一度初夜をやり直させて欲しい。今度は間違えない。お願いだ!」

旦那様の低音ボイスが耳の側で聞こえる。


私は大型犬のように懐いてくる夫の髪を撫でながら頷いた。






 あれから旦那様は毎日のように甘い言葉を囁く。顔が良いって得だわ。

名優が舞台の上で囁いているように聞こえるのだから。


あんなに馬鹿をやらかしたのけれど元々頭は良かった。仕事の出来る男だったのだ。


夜会ではぴったりと私にくっついて離れない。表情が甘く崩れるのは私に向き合っている時だけだ。他人には一切興味を示さない。

その徹底ぶりのお陰で最初は煩いほど周囲からのあったやっかみや悪口もいつの間にか収まってきた。


「はあ〜今日も妻が可愛い」

私の部屋は彼の瞳色の様々な青のドレスや宝石で埋まりそうになっている。

離れた所に専用の衣装部屋が出来たくらいだ。

指にはあの時のサファイヤの指輪が光っている。

お揃いだと言って旦那様は同じ石でカフスボタンを作っていた。


「こんなに沢山のドレスいりませんわ」


「毎日着替えるだろう?違うアンナを見るのが俺の楽しみなんだ。今度は青に近い(エメラルドグリーン)でも良いね。君の美しい髪に似合うと思うんだ」



「嬉しいですけど、困った頃のことを忘れては駄目ですよ」


「分かってる。でも投資で儲けがしっかり出るようになったんだ。安心して貢がせておくれ。愛しいアンナ」


こうして私は最高に甘くて、とびきり誠実な旦那様を手に入れたのだった。

読んでいただき本当にありがとうございました。誤字報告ありがとうございます。感謝です。何度も見直しているのですが…。


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