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第一話 『あの日のショー』

前回の作品の精神的続編です。今回はメタでないと思います



あの日見たショーのことを、私はきっと生涯忘れない。


私の人生に、

強く影響を与えた日だった。



「愛衣、迷子になっちゃだめだよ?」


「わかってるー!」


人混みの中で、

私はお母さんの手を引っ張っていた。


ショッピングモール。


休日のイベント会場。


その日はたまたま、

買い物帰りに立ち寄っただけだった。


最初は、

別に興味なんてなかった。


ステージで、

何かショーをやっている。


それくらい。


でも。


「こんばんはー、心理誘導ショーへようこそ」


その声を聞いた瞬間。


私は足を止めた。



ステージの上には、

黒髪のお姉さんが立っていた。


綺麗な人だった。


でも、

怖い感じじゃない。


なんだか、

すごく楽しそうに笑う人だった。


「今日は、“人ってどれだけ思い込みに引っ張られるか”をやっていきます」


会場が少しざわつく。


お姉さんは、

客席を見渡しながら続けた。


「難しい話じゃないよ」


「みんなも普段からやってることです」


そのあと。


最前列にいた男の人が、

巻き込まれた。


「また来てる」


「うるさい!」


会場、

笑い。


でも。


そのやり取りが、

なんだかすごく自然だった。


男の人は、

負けたくないみたいに言い返す。


でも、

お姉さんは全部見抜いてしまう。


なのに。


嫌な感じがしない。


むしろ。


二人とも、

すごく楽しそうだった。



「じゃあ直感で選んで」


カード。


言葉。


連想。


誘導。


最初は、

ただの会話に見えた。


でも。


少しずつ。


男の人の反応が変わっていく。


「えっ、

なんでわかるの!?」


「顔に出てるから」


「ずるい!」


また会場が笑う。


でも。


私は、

笑うのを忘れて見ていた。


なんで?


どうして?


なんであのお姉さん、

わかるの?


人の心って、

そんな風に動くの?


その全部が、

不思議だった。



そして。


ショーの最後。


お姉さんが、

こう言った。


「心理学って、

“人を操る”ためだけのものじゃないです」


「“人って面白い”を知るものだと、

私は思ってます」


その言葉が。


小さかった私の胸へ、

妙に残った。



帰り道。


私はずっと、

ショーの話をしていた。


「ねえお母さん!」


「なんであの人、

考えてることわかったの!?」


「うーん、

心理学とかかなあ」


「しんりがく……!」


初めて聞く言葉だった。


でも。


なんだか、

すごくわくわくした。



それから何年経っても。


私は時々、

あの日を思い出す。


黒髪のお姉さん。


負けず嫌いな男の人。


不思議な会話。


楽しそうな空気。


あの二人は、

今もどこかで、

あんなやり取りをしているんだろうか。


そんなことを考えながら。


私は今日も、

学校で人を観察している。


「……で」


机へ頬杖をつきながら、

私は目の前の男の子を見る。


「悠真くんってさ」


「なんで“宿題やった”って言う時だけ、

目そらすの?」


「えっ」


ぴたりと動きが止まる。


私は思わず、

にやっと笑った。


やっぱり。


人の心って、

とっても面白い。


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