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灰色の世界で少女は色を灯す  作者: ハイバール ・レ
7/11

Ep.7 witch「魔女到来」

青年あまりの衝撃で少しの間体が固まる。

なぜなら、傀儡と呼ばれた男の頭が何処にもない。


頭が無い体はやがて、倒れ地面に大の字になる。


ドアがまたノックされる。

トン、トン、トン

機械音のような声が聞こえた。

「ノックノック、誰かいるかい?」

背筋が凍る。そして、青年は何か落ちる音を聴いた。


カラン


その音を聴いた青年は身の危険を感じ急いでキッチンに戻った。次の瞬間、銃声が二発鳴る。

バンッバンッ

自分が先程いた場所に鉛玉が通る。しかも正確に脳と心臓の位置だった。

「どうも魔女です、子供を攫いに来ました」


青年はこのままでは嫌な予感が起きると考え、テーブルの下に隠れていた子供達を腕で抱える。

「兄さん、おっさんは?!」

「後で説明する。とにかく逃げないと」

先に子供達を窓に脱出させ、自分も窓から脱出する。しかし遅かった。


バンっ

ドア越しから放たれた弾丸が青年の右足に当たる。

「がああああ!!」


窓になんとか脱出できたものの、右足が膝から消えて、痛々しいほどに血が流れ出した。

「兄さん!」

少年は酷く怯えているが、少女の目を未熟な手で隠している。


「私に構うな走れ!」

少年は危険な状況では大人の話は絶対だと学ばされていたため、少女と必死に森の中へと逃げる。


だが、ヤツはそう簡単に見逃す相手ではなかった。

キッチンの扉が開く

「どこに行くのかな?」

ヤツの体は黒い布で覆われハットを被っていた。顔を見ると鉄の塊。


魔女と名乗る者は正体不明の機械だった。


左手にはレボルバーを持っている。そしてもう右手には誰かの心臓を握っていた。

その心臓を窓に投げて、森の中へと走っていた少年の背中に当たる。

「ぐっ!」少年は少女とともに転んでしまう。


心臓はそのまま森の奥へと飛んで行った。


その光景を見た青年はその心臓が誰のものか一瞬で理解した。

「悪魔が!」

青年が怒りを露わにする。


その心臓は、状況を理解している青年なら、心当たりが一人しかいない

そう死んだハイルのだった。


魔女が話し始める。

「傀儡があっさりと死んだのは残念だったが、想定よりも早く終わらせそうで良かった」

ヤツはそう言い、顔は鉄の塊だが笑っているように見える。

「もうお楽しみはおしまいだな」

ヤツは銃口を子供達に向ける。

躊躇(ちゅうちょ)なく引き金を引いた。


バンッ



魔女「余計な真似をしたな」



青年の腹に大きな風穴が空いていた。

「ごふっ」

青年は口から大量の血を吐く。


やつの引き金が引く前に片足で立ち上がり子供達を庇ったのだ。

「これ以上、ごふっ、傷つけるな」

最後の力を振り絞って念の為握っていたキッチンのナイフを魔女に投げつける。


カンッ


無常にも跳ね返される。

フィリップの膝が地面につく。


(クソが、やっと自分の夢を見つけられたって言うのに、私はこのまま死ぬのか。もう少しだけあの子達のそばに居たかったなあ、ごめんな、弱くて、誰でもいいからあの子達の事助けて)

フィリップの肌が少しずつ冷たくなる。

フィリップ「神よ、どうかあの子達を救ってください、お. . 願い. . しま. . す」

フィリップは最後に助けを求め、視界が真っ暗に染まる。そして心臓の鼓動が消えた。



魔女「無駄足だったな、さあお前たち、こっちにおいで、殺されずに済むから」

魔女は窓から飛び降り、フィリップの体を蹴った。


少年「やめろ!!!」

少年は涙を堪えながらも少女にその光景を見せないように自分の胸に押し付けるように抱きしめる。

少女「うぅぅ」

少女は今までの光景を目にしていないが、何があったか想像がつく。


少年が叫ぶ

「お前なんか、俺が殺してやる!」


魔女は不敵な笑みを感じさせフィリップの方に話しかける。

「悪い子は死んで当然だよな?」

当然だが返事は無い


魔女は少年をうち殺そうとした。けれどヤツの手が止まる。なぜなら、自分の背後に何かがいる。

バンッバンッ

魔女は振り返ると同時に引き金を引く。

そこには誰も居なかった。


魔女は気のせいだと思い、また少年の方を向こうとした。

しかし見える景色が変わらない

「あれれ. . .? 」

魔女の頭が地面に落ちる。


魔女の後ろには、頭から血が滝のように流れるハイルが立っていた。

「. . . . っ」

右手にナタを握り、頭を抱えていた。


次の瞬間、ハイルは顔が見えなくなるほどドロドロな血を流しながら、目に見えない程の速度で魔女の体を切り刻む。


ザザザザザザザッ


魔女の鉄の体が地面に散らばった。

しかし魔女は人造人間。


「これは予想外だな傀儡!」

「残念ながら私はこれでは死ねないのだよ」


魔女は楽しそうだった。

「次はっ」


グシャ


ハイルは魔女の頭を潰した。

「ヒュー. . . 」

赤い息を吐く。

脅威は傀儡の手によって即座に掻き消された。


フィリップの体が目に入る。

「フィリップ、すまない」


ハイルはフィリップを持ち上げる。家から離れた場所にソッと寝かせた。フィリップの足を見て、着ていた服を一枚脱ぎ消えた右足を隠した。


顔の血を拭き落とし、子供達の方に向かった。

少年の仮面越しの目と合う。

「おじさん. . . 」

少年は今にも泣きそうだった。

「うわああん」

少女は我慢できずに泣いた。


ハイルはその二人に手を差し出す。

「. . . . 」


二人はハイルの手をぎゅっと握り締める。

少女「うぅぅ」

少年「. . . . . 」


ハイルは二人をフィリップがいる場所まで送る。


「見送ってやるぞ. . . 」

そう言い、薪を取りに行った。


二人だけになった子供たちは互いに手を繋いで、目の前の冷たくなった青年の姿を見つめる。

二人はこの世界がどれほど残酷なのか、また思い知らされる。


二人とも青年に別れの思いを伝える。


少年「俺は. . . 」

胸が裂けるほど苦しい。

少年「俺は、弱いよ」

少年「だって子供だからだ」

目から涙を流す。

少年「兄さん、俺絶対強くなるから」

少年「約束する」

覚悟を決めた瞬間だった。


少年は被っていた仮面を青年の顔に被せた。

口だけ隠しきれなかった。


少年の素顔は悔しさと寂しさで埋め尽くされている。燃えるように赤い肌、茶色の髪、子供にしては整った顔立ち。


少年の目に火が灯る。

少年「ありがとう」

その一言には沢山の思いが込められていた。


少女はフィリップの服を小さな手で握り締める。

「いかないで. . . 」

鼻水と涙を拭う


少女はフィリップの死を受け止める覚悟を決める。

「 ニイニイのぶんまでがんばるから」

必死に涙を堪える

「わたしもつよくなるよ. . . 」

涙がまた溢れ出す。

「うっ. . . 」


背後から大きい影が二人を覆う

大量の薪を持ったハイルが戻った。

ハイル「別れは言ったか?」

二人は誓う。

少年「約束した」

少女「ニイニイのぶんまでいきる」

ハイル「そうか. . . 」


薪をフィリップの周りに3人で囲うように積み上げる。

「. . . . .」

「. . . .」

「. . .」


石に弾の火薬を擦り付ける。

カチッカチッ

薪に火花が飛び散る。


バチバチ


一瞬で燃え上がり火の柱が目に映る。


その光景を目に焼き尽くす。


二人とも強い思いと悲しみを背負い、生きると心から誓った。


火が消えるまでフィリップの最後を見届ける。


「さようなら」


森に静寂が訪れる。

つづく









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