Ep.8 child of sinners 「罪人の子」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄8:15pm ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
星空の無い夜
少年が真夜中に特訓をしていた。
「356、357、358!」
悔しい表情をしている。
(俺がすぐに窓に逃げなかったせいで兄さんは死んだ)
あの出来事で行動出来なかった事を悔やんでいた。
フィリップが脳裏に浮かぶ。
「兄さんは子供だからって言うけど. . . 」
少年の動きが止まる。
「消えないでよ. . . ずっと一緒に居て欲しかったよ」
思わず涙が流れる。
「. . . ちくしょう」
涙を拭い特訓をまた始めた。
「359、360、361」
窓から眺めている人物が一人。
「. . . . . 」
何を思っているのかは本人にしか分からない。しかし、自分と照らし合わせているように感じる。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄10:47pm ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
少女は夢を見る。
空っぽな空間に一人ポツンと体を丸めて。
「. . . 」
そこにまた女性の人が少女の前に現れる。
「何かあったの?」
女性は少女に優しく抱きつく。
「. . . . 」
少女は女性の温かさを感じる。そして、今日の事を話そうとした。
「ねえさん、にいにいが. . . 」
思わず泣きそうになる。しかし女性は少女の口に人差し指をつけた。
「伝わっているよ、だからたくさん泣いて」
女性は少し強く抱きしめる。
「. . . うん」
少女は沢山涙を流す。
昨日まで一緒に過ごしていた大切な人がもう天国に行ってしまった。少女はまた置いて逃げたと思い込んでしまう。
「うぅぅ」
「よしよし自分を責めないで、大人になってもどうにもならない事が多いの」
「こわい」
「みんなが守ってくれるから大丈夫」
ニッコリと笑顔を少女に見せる。
「じぶんでまもる」
「ダ〜メ、一番若いんだから守って貰わないと。あと、その人の思いを忘れないで」
「うん」
「その人の分も生きて沢山その目で世界を見て欲しいの」
「. . . わかった」
自分が何をすべきか、そしてどう向き合うか女性が教えてくれた。
少女は女性の温もりを感じてその日の夜いっぱい泣いた。
少女の部屋にハイルが何かを持って入る。
「. . . 」
フィリップが一番大切にしていた本を少女の隣に置く。
その本のタイトルは「キラキラ星」
フィリップはこの本だけはいつも寝る前に毎日読んでいた。
空さえ見えないこの世界で唯一星が描かれている絵本だ。
フィリップは子供の時から星が落ちてくるのを待っていた。しかし、成長するにつれ、夢の中で見るようになった。
現実ではない夢なら沢山見られると思い始めたから。
ハイルはフィリップの思いが詰まった本を少女に託す。
寝ている少女の手が絵本に触れる。
「. . . . 」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄8:10 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
みんなが朝食を食べる。
「. . . っ」
「. . . 」
「モグモグ」
いつもより静かな時間が流れる。
ハイルが話す。
「今日村に行く」
「家はどうするの?」
「放っておく」
「. . . 」
少年は勢いよく朝食を食べ始めた。
「俺は、モグモグ、大きくなるんだ!」
「わたしも!」
「しっかり噛んで食え」
二人は食べ終えた後に特訓を始めた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄11:30 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
三人は家の外に出る。
ここにいつまた魔女が訪れるか分からない。
フィリップの墓の前で別れを告げる。
「兄ちゃん、俺が強くなった姿またいつか見せに来るから」
少年は体の包帯を外す。包帯を墓に巻き付けた。
「これで寒くないよ」
「沢山夢見てね」
この場所にまた戻ってくると誓った。
少女は自分の枕を墓に添える。
「いっぱいたのしいゆめみてね」
「ニイ二イの本ずっとたいせつにするからね」
少女はフィリップの思いを受け継ぐ。
ハイルはフィリップの大好物のサンドウィッチを添えた。
大人にとっては短い期間だったかもしれない。しかし、子供達にとっては忘れられない記憶になる。
雲がいつもより早く動く。
別れを告げた後、村に行く準備をした。
子供達は出発する前に家を眺める。思い出の詰まった場所。寂しくなるけど、この世界を生きる為、そして意思を受け継いで前に進む為にあらゆる困難に立ち向かうと決心する。
「行ってきます」
三人は思い出の場所を離れ、光が照らされない世界に足を踏み入れた。
「. . . 行ってらっしゃい」




