4 ナンパ料は千円
そんなこんなで俺達は、
下積先生が彼女と出会ったというバッティングセンターにやって来た。
そこは『坂石バッティングセンター』という所で、結構大きな所やった。
そして入口の横には
『百五十キロのマシンあります』
と書かれた看板が置いてあった。
俺としては下積先生の片思いよりもその百五十キロマシンの方に興味があるんやけど、
今回はそうは言ってられへん。
俺は傍らの下積先生に声をかけた。
「先生、ここなんですね?」
「ああ、そうだよ」
緊張した面持ちで頷く下積先生。
そんな下積先生に俺は、
「じゃ、行きましょうか」と言い、
坂石バッティングセンターに足を踏み入れた。
そして受付の所に行き、そこに居た白髪のおっちゃんに声をかけた。
「あの、すみません、ちょっとお聞きしたいんですけど」
「あいよ、何でっか?」
「ここに来る常連さんで、長い黒髪を後ろでひとつにくくった、
細身で背の高い女の人って居ます?」
「んん?・・・・・・ああ、もしかして沙夜ちゃんの事かいな?」
「ああ、多分その人です。ここにはよく来るんですか?」
「そうやなぁ、週に三、四日は来るなぁ。今日も来てるで?」
「ホンマですか!よかったですね先生!彼女来てるみたいですよ!」
俺がそう言うと、下積先生は緊張した様子で頷いた。
すると受付のおっちゃんは言った。
「兄ちゃんら、沙夜ちゃんに用があるんか?」
「あ、はい、ちょっと」
俺がそう答えると、おっちゃんは右の掌を差し出してこう言った。
「ほな、千円」
「ああ、入場料ですか?」
「ちゃうがな。ナンパ料千円」
「ナンパ料ってなんですか⁉
俺はべつにあの人をナンパしようと思ってるんとちゃいますよ!」
まあ、ほとんど同じようなモンやけど。
するとおっちゃんはあからさまに俺らを疑うような目をして言った。
「ま、ええけどな、ただ面倒な騒ぎだけは起こさんといてや」
「わかってますよっ」
俺はそう言い、下積先生とともにバッティングセンターの中に入って行った。




