表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/220

第87話「スラタロウの戦闘」

「あははははっ!」

「……ちっ」


 スラタロウの触手が踊っていた。

 体のあちらこちらから生やした数本の触手を縦横無尽に振り回して矢倉を襲う。矢倉は、バイクの機動力を駆使して攻撃を避け続けるが、反撃の隙がなく防戦一方の状態にいた。


「調子に乗ってんじゃねーぞ」


 矢倉は、手元のレバーを操作し、直後バイクの形状が切り替わった。

『エアロパーツ』と『スラスター』。

 噴出口から凄まじい空気が排出されて、バイクは大空へと飛び立つ。


「おー飛んだー!」


 スラタロウは、『バイクが空を飛ぶ』という出来事に感心した。

 矢倉は高くまで移動し、触手が届かない。このままでは逃げられてしまう可能性がある。

 だが、飛べるのは何も彼だけではない。スラタロウにも飛ぶための翼があった。

 すぐに八倉を追いかけようと翼を広げる。


「スキル『煙幕』」


 その時だった。

 矢倉が乗るバイクから、真っ黒い煙のようなものが出てきて、地上を覆い始めたのだ。


「ムゥ!?」


 煙は、あっという間にスラタロウの視界を遮った。全方位何処を向いても、一メートル先すら見えなくなってしまう。

 しかし、その状態でもスラタロウは余裕だった。


「なははっ、これで隠れたつもり?」


 そう呟き、スラタロウはスキルを発動した。

 スキル『第六感』。五感を超越したもう一つの感覚を働かせて、目に見えない矢倉の居所を探す。


「そこだぁ!!」


 スラタロウの触手が一直線に伸びた。

 煙が晴れたその先には、例の大型バイクがあった。肥大化した触手により、そのバイクの胴体には大穴が開き……。

 と、途端にバイクが消えた。


「あれ?」


 スラタロウは、予想できない事態に驚き戸惑う。確かに、自分の触手でバイクを破壊したはずなのに、それが部品すら残さず一瞬にして見えなくなったのだ。

 取り敢えず、改めて第六感で矢倉を探してみる。

 そして。


「あ、あれれ? 彼処……いや、彼方にも居る。あれあれ? 沢山の同じ人??」


 酷く困惑するスラタロウ。

 可笑しな事に、スラタロウの第六感には矢倉のバイクが幾つもあるように感知されたのだ。

 唖然としていたスラタロウは、背後から近付いてくる人影に気付かなかった。


「バッコーンッ!!」

「にゃあっ!」


 巨大な金属の塊が、スラタロウの体をボールのように打った。

 何事かと攻撃された方向を向く。

 見ると、金属の正体は人の背丈程もある大剣。それを手にしていたのは、おてんばそうな少女だった。

 スラタロウは、その少女に見覚えがあった。今日ショッピングセンターに出向いた際、フードコートで出会った三人組の一人だ。


(コイツは……)


 いつの間に近付いていた少女に、スラタロウは応戦しようと触手を構える。

 直後、背後から針のような物が伸びてスラタロウの体が突き刺された。


「っ!?」


 慌てて振り向くと、その隙にもう二箇所連続で刺し傷を刻まれる。

 触手で反撃しようとした頃には、既にそこには誰も居なくなっていた。



 スラタロウLV50

 HP3029/3071



 スラタロウは、自分のステータスを確認して目を見開く。

 僅かながら、HPが減っている。つまり、ダメージを受けたという事。

 ランク☆☆☆☆LV50の魔物にダメージを与えた。しかも、スラタロウですら対応し切れない剣捌きで。

 警戒対象。スラタロウが探していた『強者』が遂に現れたのだ。


「ムゥ! 煙が邪魔で見えない。こんなの吹き飛ばしちゃえ!」


 スラタロウは、数本の触手を扇いで風を吹かせる。

 たちまち、黒い煙は散り散りになり、スラタロウの視界は一気に開けた。

 見上げてみると、そこには同じ大型バイクが幾つも空を飛んでいた。瓜二つ、まるで『分身』でもしたかのようにそっくりだ。


(いや、其方よりも気になるには……)


 視線を下げて周囲を見渡す。

 スラタロウの近くに居るのは、大剣を持った少女。それだけだった。


(おかしい。もう一人居たはずなのに……何処へ行った?)

「余所見してんじゃねーよ!」


 上空から矢倉の声が響き渡り、同時に灼熱の炎がスラタロウを包み込む。バイクからマシンガンと変わり、今度は大型のバーナーのようなものが現れてそれで炎を吐き出したのだ。

 スラタロウは、触手を使ってバイクを叩き落とす。が、叩いた瞬間バイクは煙のように消えてしまった。


「偽物……!」


 空を飛ぶバイクは、やはり殆どが分身体。おそらく何かしらのスキルでアレらを作ったのだろう。

 そして、あのバイク。どうやら、普通のバイクではない。様々なギミックが施されている手品道具のような兵器なのだ。

 この分だと、これら以外にも切り札を隠しているはず。

 そう考えたスラタロウは、相手に先制を打たれる前に全てのバイクを落とそうと……。

 背後から針を突き刺された。


「ぎゃあっ! あーもう!!」


 苛立った様子で触手を振り回す。

 しかし、既にそこには誰の姿も見えない。針使いは超高速、或いは身を隠すスキルを発動してスラタロウの目を欺いている可能性が高い。

 だが、何れにせよ発見出来ない事には変わりない。隙を見せればさっきのように背後を取られて、背後を警戒していればバイクにやられる。

 圧倒的なステータス差があるはずのスラタロウは、敵の連携によって完全に翻弄されてしまっていた。


「ムムムゥ! もう怒ったぞ! こうなったら本気出しちゃうんだからなー!」


 そう言って、スラタロウに異変が起こる。

 泡立つように全身が震えたかと思うと、次の瞬間スラタロウの体が風船のような膨張を始めたのだ。

『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』


下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。


お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想 をいただけると嬉しいです

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ