第35話「雑魚戦余裕」
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「この辺りで、会長達が戦っていたんですね?」
「うん」
旧校舎方面。
部室棟を通り過ぎて、体育館の方まで進んでいくと、そこには大量のゾンビ達がひしめいていた。
おそらく、オーク達の襲撃と、その逃走時に遭遇したい魔物の大群にやられた人達だろう。こちらは、見事に動く死体と化してしまっているな。
「……酷い」
「また犠牲者が増えてしまいました。……魔物の大群が現れてから予想はしていましたが」
パン子先輩とアリサ先輩は、落ち込んだ表情を浮かべる。
正義感の強い人達だ。目の前にいる大勢の犠牲者にさぞかし心を痛めているのだろう。
「このゾンビ達の中に会長さんが混ざっていたりしていません?」
「え? ど、どうなんだろう?」
「一体一体調べていきましょうか。かなり数がいるので面倒ですけど」
ゾンビが人間を襲わないというのは調べ済みだ。俺の身を使って検証したからな。
俺は、堂々とゾンビの群れに近付き、それぞれの顔を見ていった。
「……駄目だ。会長の顔をもう忘れた。眼鏡かけているのは覚えているんだけどなー」
眼鏡キャラなんて、みんな同じ顔しているから見分けがつかないよ。どうしてああも無個性なんだろうねー。
「つ、翼く〜ん? そっち行っても大丈夫なの〜?」
「平気ですよパン子先輩。この通り襲って来ませんから!」
「え、え〜? 本当かな〜?」
パン子先輩は、恐る恐るといった感じでゾンビの群れの中にいる俺の元へと近づいていく。
「……! グォオオ〜!」
すると、一体のゾンビがパン子先輩に気付き、それに釣られるように他のゾンビ達もパン子先輩の方を振り向いた。
彼女の存在を感知したゾンビ達が、不安定な足取りでパン子先輩へと一斉に歩み始めたのだ。
「ほ、ほらぁ〜! 襲って来るじゃんか!」
「あれ? 何ででしょうね? パン子先輩、何かしました?」
「何もしてないよ〜!」
おかしいな。俺は、近づいても何も反応しなかったのに。……可愛い子にだけ反応するとか?
まあ良いや。スナッチして助けてあげるとしよう。
「スナッチ」
漆黒の鎖がゾンビ達に絡みつき、やがてゾンビは動きを止めた。
≪職業経験値を獲得しました。職業『モンスターマスター』のLVが18に上がりました≫
「先輩方。この中に会長さんは居ますか?」
「……えーっと。ゾンビになった人の顔って、なんか様子が変わっていてわかり辛い。知っている人でも見間違いしそう」
「確かに。生気が無いからですかねー」
「でも、多分この中には会長は居ないと思う」
「そうですか」
では、もしかしたら逃げ延びているかもしれないってことだ。取り敢えず、生存の可能性が出てきたな。
「そういえば、生徒会には他にも二年生の女子メンバーがいますよね? 確か……スメラギ先輩」
あのポニテの先輩の名前は何とか覚えていたぞ。
「ああ、唄歌ちゃんね」
「彼女は、会長の指示で生徒や先生の護衛役に。道中は魔物も大勢出会すでしょうから、今頃皆を連れて警察署へ向かっている……はずです」
「なるほど。生徒会のメンバーは、これで全員なんですか?」
「いえ、もう一人……。…………」
突然、アリサ先輩が口を噤んだ。
「どうしました?」
「い、いえ。何でもありません。それより、急いで会長を探しましょう。おそらく、この付近にいるはずですから」
露骨に話題を逸らされた。何か怪しいなぁ。
……まあ、良いか。興味無いし。
「取り敢えず、体育館の中から調べてみますか。もしかしたらここに会長さんが隠れているかもしれません」
そう言って、俺は体育館の出入り口へと向かった。
しかし、中は魔物だらけだった。数十体の魔物がウジャウジャと棲みついているのがここからでもよく見える。
「あーあーこんなに沢山。みんな、出番だよ」
「「「ギャギャギャギャー!」」」
俺の合図と同時に、仲間達が体育館の中に雪崩れ込んだ。
部室棟の倉庫から続き、第二弾。大掃除の開始だ。
但し、片付けるのは魔物達だがな。
「スナッチ合成スナッチ合成スナッチ…………ふぅ。片付いたぜ」
≪職業経験値を獲得しました。職業『モンスターマスター』のLVが19に上がりました≫
「え、えぐっ。まるで敵じゃないじゃん」
「我々がアレだけ苦労していたのに……。何故、貴方はあの時体育館に居なかったんですか?」
「そんな楽して強くなったみたいな言い方。俺だって、苦労してこの力を鍛えたんですからね?」
体育館を一掃し終えた俺は、中へと入る。
まあ特に変わった箇所は無い、いつも通りの体育館だ。
但し、だだっ広い空間に人が全然居ない静まり返っている状況っていうのは、何となく寂しさが感じられた。
さっきまで、ここに沢山人が居たんだけどなー。全員ショックで絶望し、下を向いて俯いていたけど。
「よーし! 会長さんを見つけるぞー。探せ探せー!」
これだけ人手が居れば、そんなに時間も経たず体育館中を探し回れるはずだ。
会長探しは、仲間達に任せて、俺はゲームの続きでもするか。
あ。充電していなかった。
「くっ! またコンセント探しをしなくちゃならないのか!?」
「何があったのですか?」
「ゲームをしようと思ったんですけど、充電が切れてしまったんです」
「ゲーム……。こんな状況でですか?」
「大丈夫。見張りはきちんと立てていますから、仮に誰かが近づいてきてもすぐに気付けますよ」
「そういう問題ではないと思いますが」
本来なら、今日は新作ゲームを満喫するはずだった。
それが、運悪く世界崩壊の日になってろくにゲームを楽しめないでやんの。嫌になっちまうぜ。
だから、少しの空いた時間でも有効活用しなければならないのだ。
それがゲームを愛する者の定め。
「広い体育館だし、どっかにコンセントくらいあるでしょう。少しその辺を……」
ガッシャーーーン!!
その瞬間、ガラスの割れるような音が俺の鼓膜を震わせた。
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