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第36話「影に潜む者」

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「おわっ! ビックリしたー!」

「上の階からですね。誰かいるのでしょうか?」

「もしくは、仲間がヘマして窓ガラスか花瓶を割ったか。……様子を見てみましょう」


 俺と先輩方は、音の鳴った方を目指した。

 上へと続く階段を上り、通路を歩いていくと一人のゴブリンが俺の前の現れる。アーサーだ。


「どうしたアーサー。何があった?」

「ギャー! ギャギャギャーギャグルブギョーギャギャー!」

「何を言ってるんだか全然分かんねー!」


 魔物語の翻訳機能欲しいなー!

 誰か魔物の言葉話せる人いないかなー?


「落ち着くんだアーサー。俺にもわかるように言葉でなく身振り手振りで伝えるんだ」

「ギャ?」


 アーサーは、俺の意思を汲み取ったのか手招きしながら道案内をし出した。

 何で仲間達は、俺の言葉が理解出来るのだろう? 俺は、みんなの言葉がわからないのに。

 あれか? 心が通じ合っていれば言語の壁も関係ないってこと?

 俺達が案内されるままに二階の通路を歩いていくと、アーサーはとある扉の前に立ち止まった。


「ギャギャッ!」

「ここに何かあるのか? 扉は……閉まっているな。よし、猪八戒の出番だ!」


 俺は、猪八戒を呼び出して扉の破壊を命じた。

 すると、猪八戒は拳を振り被って扉を殴る。殴る。

 それにより、施錠された扉は圧倒的なパワーによりひしゃげ、何発目かのパンチで遂に吹き飛ばされた。


「窓ガラスが割れている」


 部屋の中はロッカーが沢山ある場所。おそらく、更衣室だろう。

 そこの奥にある窓のガラスが見事に割れていたのだ。破片は、外側に散らばっているので、中から割られたと推測される。


「あ! 翼くん駄目だよ、ここ女子更衣室!」

「えっ。マジですか? それは失礼」


 どうやら更衣室は更衣室でも、女子更衣室だったようだ。それは、男の俺が中に入るわけにはいかないな。

 俺は、一歩踏み込んでいた足を引っ込める。


「もう。エッチなんだから」

「やめてください。他人を変態みたいな言い方するの」

「いくら非常時でも、女子のプライベートには配慮してもらうからね。ここは私達が調べておくから、翼くんは他の場所をお願い」

「わかりました。後で合流しましょう」


 俺は、先輩方と別の場所へ向かうことにした。


「ほら、行くぞアーサー。お前もオスなんだから、女子更衣室に入っちゃ駄目だ」

「ギャー」

「お前もだ猪八戒。お前……は、どっちなんだ? まあ、どっちでも良いや。一緒に下へ降りるぞ」


 この辺りの魔物は既に一掃している。仮に生き残りが潜んでいても、力を使える二人なら何とか出来るだろう。

 俺は、この辺りの探索を二人に任せて、下の階へと降りた。

 そしてコンセントを探す。


「多分、壁際の何処かにコンセントが……おっ! あったあった」


 ようやく念願のコンセントを見つけることが出来た。

 この機会を逃す訳にはいかない。俺は即座に充電器を取り出してコンセントに挿した。

 電源を入れると、ゲームのディスプレイが明るくなり、見慣れた画面が表示される。


「いえーい!」


 会長探しは、みんながやってくれているし、魔物の襲撃にも備えて見張りを立てた。

 つまり、安全圏が確保され、時間に余裕が出来たということだ。

 これでゲームを楽しめるぞ! この瞬間をずっと待っていた!


「よーし! 次こそ二つ目のバッジを手に入れるぞー!」


 俺は、チラリと体育館に設置されている時計を見た。

 時刻は、もうすぐ十八時だ。

 既に夕方。後一、二時間で陽が沈む頃である。


「そろそろ夕食の時間になるなー。それまでにリリーを見つけたかったけど、間に合うかなー」


 まあ、今はそれよりもゲームだゲーム。ずっと楽しみにしていたんだ。時間がある限りプレイしまくるぞー!

 俺は、自然と握る力が強くなってしまう手を抑えながら、ゲーム画面に集中するのだった。


 *****


 一時間後。

 一時間経っていた。気が付けば、一時間経っていた。

 会長探しのことなど完全に忘れていた。いやはや、流石は『スナモン』。子供達を夢中にさせる魅力溢れるゲームだぜ。


「すっかり外が紅くなってしまった。……先輩方、何をしているんだろう? まだ上の階にいるのかな?」


 あれから随分時間が経っているのに、アリサ先輩もパン子先輩も一向に俺の前の姿を現さない。

 不思議に思い、俺はゲームをしまい、二人を探してみることにした。

 取り敢えず、二人が調べるといっていた女子更衣室の方へ向かってみよう。


「なんか、血生臭いな」


 二階への階段を上ってみると、そこはかとなく不快な臭いが漂っていた。

 さっき来た時は、こんな臭いしなかったのにこれはどういう訳か。

 …………嫌な予感がする。


「アリサ先輩! パン子先輩! 何処ですかー!」


 大きな声で先輩方の名前を呼んだ。しかし、返事は無い。

 通路を歩いていくと、例の女子更衣室の前に辿り着いた。


「センパーイ! 居るんですかー! ……アーサー、扉を開けてくれ」

「ギャッ」


 指示を受けたアーサーは、ノブを回し、扉を開いた。


「…………これは」

「ギャギャー!」


 俺は、部屋の中の光景をマジマジと見つめていた。

 そこは、先程と同じくロッカーが沢山置かれている更衣室。しかしあまり使われた形跡がなく、そのせいかきちんと整理され、不必要なものは何も無い場所『だった』。

 しかし今、そこは異様な光景と化していた。

 床一面に広がる血溜まり。その中央には、二人の少女が倒れていた。

 一人は、長い黒髪の少女。もう一人は、やや髪を赤く染めたツインテールの少女。

 どちらも見覚えがある。生徒会執行部の二年生、アリサ先輩とパン子先輩だ。


「…………」


 彼女達は、血溜まりの中でピクリとも動かない。

 脈を測った訳でも、心臓の音を聞いた訳でもないが。

 ……これ以上なく死んでいるということは、誰の目にも明らかだった。

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