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第19話「戦略的撤退と異様な光景」

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「重症者多数!! 今の攻撃で前線がほとんど壊滅したぞ!?」

「は、早く回復を! 怪我をしたみんなを移動させないと!!」


 思いも寄らない敵の攻撃を見て、生徒達に一気に動揺が走った。


「落ち着け! 戦闘班は引き続き怪物と戦闘続行。出来るだけ攻撃を受けないように距離は保て! 残った者は、倒された生徒達を回収! 治療班の元まで届けろ!!」


 そんな中でも、生徒会長クズリュウは冷静だった。迅速に的確な指示を出して、状況の改善を目指す。


「いいかみんな!! ここを突破されれば、体育館内にいる多くの生徒と先生らが死ぬ! しかし、そんな事は絶対にさせてはならない!! そうだろう!?」

『はい!!』

「何としても奴らを撃退するんだ!! 気を引き締めろ!!」


 会長の一声で、生徒達の団結力がより一層強まったような気がする。

 まさに『鶴の一声』というやつだ。


(責任感強いなー。流石は生徒会長。でも、果たしてこちらに奴の戦闘力に敵う人材がいるのかな?)


 どれだけ意志が強かろうと団結しようと、オークの力は強烈だ。装備の効果でATKも上がっている。あの状態で繰り出される攻撃を受け流すのは至難の業だろう。

 まあ、さっきクズリュウ会長が使った技。あれに匹敵する技を連発出来るなら話は別だけど。


「くっ! なんて馬鹿力だ!!」

「お、おい!どういう肉体しているんだ、刃物が通らねえ!?」


 …………難しいみたいだな。

『ランク☆☆』オークのDEFを突破するには、生半可な火力では無理だ。先輩方が頑張って攻撃を与えているみたいだけど、奴らのHPはちっとも削れてはいなかった。

 クズリュウ会長も、さっきの技を乱発しない当たり、おそらく『回数制限』か『CT』があると予想。アクションゲームの鉄板だな。しかし、次の一発が発動出来る前に仲間の誰かが死にそうだ。


(やっぱり分が悪い、か。戦線が崩壊する前に逃げた方が良さそうだな)


 俺も、他のオークならいざ知らず、あのLV20のオークに対抗する術はない。

 或いは、ここにいる人達なら糸口が見つかるんじゃないかと期待していたけど、どうやら外れらしいし。

 奴の標的が俺に向く前に退散するべきだろう。


(そんじゃあ皆様方。健闘を祈ります)


 俺は誰にも悟られぬよう注意を払いながら、体育館を後にすることにした。


 *****


「あーあ。何とかあのオークを攻略する方法を探さないとなぁ〜」


 体育館を後にした俺は、仲間達と合流して拠点に戻ろうとしていた。

 体育館に残る生徒達は気掛かりだが、俺には祈ってやることしか出来ない。今の戦力じゃあ、まだまだランク☆☆を相手にするのは難しいし、何よりメリットが無い。

 戦況は悪く、あの調子じゃあ大勢が死ぬだろう。

 俺は、彼らの二の舞にならないように動かないとならない。…………が、俺はこの数時間働きっぱなしだ。そろそろ休憩したい。


「でも、コトノハさん。今ちょっと疑惑が浮上しているんだよなぁ〜」


 スメラギ先輩が教えてくれた例の話。公園に現れた少女のことだ。

 その子は、魔物を呼び寄せた後、屋上の方に飛んでいったと先輩は言っていた。そして俺は、校舎の屋上にコトノハさんがいたことを知っている。

 もし、仮にもだ。コトノハさんがこの事態を引き起こした張本人だったとしたら、俺の身も危なくなるかもしれない。何せこれだけの状況を作り上げたくらいだ。人畜無害そうに見えて実は滅茶苦茶強かったりするに違いないぜ。

 でも、コトノハさんは俺を見つけた時に襲ってこなかった。それだけで、何方にせよ俺とすぐに敵対する意思はないことは伺える。


「取り敢えず、コトノハさんとは友好関係を築いていった方が良さそうだ。下手に機嫌を損ねて殺されでもしたらたまったモンじゃないし」


 オーク達の戦闘力と比較するに、俺たちはまだまだ弱い。今後もっと力を蓄えていくためには、しばらくあの拠点でお世話になる必要がありそうだ。

 そんな訳で、俺はコトノハさんと更なる進展を目指すことを決意しながら、拠点のある本校舎一階へと入った。


「…………え? なにこれ?」


 一階に入り、中の様子を覗くと俺は唖然とする。

 何故ならその場所は、床や壁を覆い尽くすほどの、大量の『蜘蛛の巣』が敷き詰められていたのだ。

 驚くほどの白い糸白い糸白い糸。少しでもそれに触れたらあっという間に絡みとられて動けなくなってしまいそうだ。人間どころか、大型の獣すら容易く捕まえてしまうだろう。

 俺は、特別蜘蛛が苦手という訳ではなかったけれど、これだけの光景を見てしまっては思わず嫌悪感を抱いてしまう。小さい蜘蛛は、所詮虫を捕らえるための罠しか作らないから可愛いものだ。自分に影響を及ぼすのなら、まさに害虫というしか他ならない。


「おいおい。少し目を離した間に何があった? やったのは誰だ? ホワイトスパイダーか?」


 俺はこの光景を作り出した候補に、あの白蜘蛛モンスターをまっ先に挙げた。

 しかし、この辺りのホワイトスパイダーは、俺が目に付く限りスナッチしまくった。この短い時間でこれだけのことを為せる数が集まったとは考え難い。

 となると……別のモンスターか、あるいは俺が知らぬ『スキル』を持つ誰かの仕業か。いずれにせよ、これだけのことを為せる何者かが訪れたのは、間違い無いって訳だな。

 しかし困った。このままだと、拠点に戻れないぞ。……校舎の外に出て窓から侵入するか?

 俺が蜘蛛の巣に阻まれ、どうやって先に進もうかと考えていたその時だった。


「みー」

「あ。戻ってたんだ。お帰り」


 不意に、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 振り向くと、そこには疑惑浮上中の少女コトノハさん。そして……もう一人。見知らぬ少女が立っていた。

 絵具で染め上げたような真っ白い髪。透き通るような色白の肌をした、この学校で、いや、俺の人生で出会ったことのないような不思議な雰囲気を持つその少女は、俺と顔を合わせると、感情の無い瞳でこちらをじっと見てきた。

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