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第17話「怪しきヒロイン」

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「スメラギ先輩。会長のお側にいた、あのお二人は?」

「会計の『定峰ありさ』と、庶務の『飯塚ぱん子』。どちらも私と同じ二年生だ」

「いやはや、何やら揉めているようでしたね。ちょっと緊張しちゃいました。あの人達は、いつもあんな感じなんですか?」

「そんな事はないさ。ただ、今回は事が事だ。みんな、この状況なんとか良くしようと自分なりに正義を主張しているだけなんだよ」


 正義、ね。

 俺をふと後ろを振り返る。会長とサダミネ先輩、イイツカ先輩はまだ口論を続けていた。


「ところで、スメラギ先輩は議論に参加しないんですか?」

「私は、ただ決められたことを果たすだけだ。それに私は、自分で考えて行動するのがどうも苦手でな」

「そうなんですか。でも、案外そういう生き方も悪くないのかもしれませんね」


 誰かに敷かれたレールの上に乗るのは、きっと楽な人生だ。余計なことを考えずに済むし、将来の不安もない。

 最も、それが楽しい人生であるとは限らないけど。少なくとも、俺はそんな人生は御免だ。


「さて。では私は、もう一度探索隊の元へ戻る。怪物と接敵した後どうなったのか確かめに行きたい」

「お気をつけて。あ、そうだ先輩!」

「どうした?」

「いえ、実は俺が外に居た時、滅茶苦茶強そうな豚面の魔物を見かけたんですよ。其奴らについて、何か情報を持っていませんか?」

「豚面の? …………すまない、特にこれと言った情報はないな」

「そうですか。校内には、まだ沢山の魔物が彷徨いています。先輩があいつらに関する情報を持っていたらと思ったんですけど」

「ふぅむ。私が持っている情報など、めぼしいものは…………あ、いや待てよ」


 と、スメラギ先輩は何か思い出したように手を打った。


「何か情報があるんですか!?」

「大したことではないんだが、校内放送で全校生徒が校庭に集合された際に現れた例の子供に関しての情報だ」

「え、誰?」

「ほら、居ただろう。羽の生えた小さな女の子が突然空からやって来て、あの子が放った光によって生徒達があのような姿に…………」


 スメラギ先輩は、語りながら苦々しく顔を歪ませた。しかし、俺にはその話が珍紛漢紛だった。

 学校に羽の生えた子供? 謎の光で生徒が変貌?

 俺は、スメラギ先輩に詳しい話を訪ねることにした。一から十まで。

 俺は、適当な嘘でごまかしながらスメラギ先輩に話を促す。


「なに、腹痛でトイレに篭っていたから集合出来なかった? それで避難出来ずに外に居たのか。では仕方ないな、私が事の顛末を改めて教えよう」


 スメラギ先輩が話始める。

 そもそもの始まりは、例の校内放送だった。学校中に音楽が流され、全校生徒は教師達の指示に従い校庭へと集まった。

 原因の不審者は、すぐに捕縛されたらしいのだが、問題はその後だった。

 校庭に集まる皆の前に現れた謎の女の子。背中に四本の羽を広げる奇妙なその子は、何もないところから光の玉を生み出したかと思うと、それを生徒達に無作為に投げ飛ばした。

 光に触れた人達は、ゾンビとなり近くにいた別の人を襲い始めた。そして直後に、正門から大量の魔物が学校の敷地内に侵入したことで、校庭は大混乱になったという。


「他の皆は、怪物やゾンビ化した生徒から逃げるのに精一杯だったから気付かなかっただろうが、私は見たんだ。あの羽の生えた女の子が宙へ浮かび上がり、そのまま校舎の屋上へと向かって行くのをな」

「…………校舎の、屋上?」

「ああ。だから少し気に病んでいてな。もしかしたらあの子は、今も校舎内に隠れ潜んでいて、再び我々を襲う手筈をしているのではないかと。だから生徒会メンバーや教師達には、校舎には近づかない方が良いと言ってあるんだ」


 学校の校舎、か。

 しかし、俺はあの事件以降、校舎中を探索したが、そんな女の子は見つからなかった。

 いや、代わりに見つけた人がいたんだったな。そう言えば、その子とは校舎の屋上で出会ったんだった。

 …………どうやら、一度拠点に戻る必要が出てきたな。


「では、俺は会長からも言われた通り少し休みます。スメラギ先輩も、頑張ってきてください」


 勿論、休むなど嘘だ。ここで得られそうな情報は大体手に入れたし、俺は人目を盗んでここを離れて、拠点の校舎一階和室へと戻るつもりだ。

 そんな事はつゆ知らず、スメラギ先輩は俺の見送りに素直に応じる。


「ああ、君もゆっくり休んで………」

「か、会長ッ!! 九頭龍会長は居るかッ!?」


 するとそこで、体育館の外から大きな声で叫ぶ男性が玄関口から現れた。彼に続き、数人の男子生徒が建物内に入る。

 彼らには見覚えがあった。校庭で遭遇した、あの探索隊の先輩達だ。

 入り口付近で話していたクズリュウ会長は、彼らに気付き、叫んでいた先輩の元へと駆け出した。


「どうした、一体何があった?」

「ま、まず、落ち着いて聞いてくれ! 竹盛と井島先生が…………殺されたッ!」

「何だって?」


 あら、二人死んじゃったのか。

 竹盛って人は、アーサーが腹を切り裂いた人だよな。そして、隊の中に唯一居た教員が井島先生って人か。

 仲間達には、適当なタイミングで退散するようにと指示出ししておいたはずなんだけどなぁ。伝わっていなかったのか?


「竹盛先輩だけでなく、井島先生まで!? まさか、竹盛先輩の怪我を庇って…………」

「それだけじゃないんだ! 皇が一年生を連れて体育館へ行った後、また新たに化け物がやって来たんだ! 豚の姿をした!!」

「豚…………。それって」

「お、おいッ!! マズイぞ、彼奴ら追って来やがった!!」


 先輩方の内一人が叫んだ時、皆が体育館の外に視線を移した。

 俺達が目撃したその『人影』。いや、『豚影』?

 見覚えがあった。何ともまあ、随分お早い再会になる。


「ブルゥヒヒヒィィ…………!」


 ほんの一時間程前に、校舎の屋上で遭遇した三体のオーク達だった。

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