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第14話「泣きつく自己中」

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「…………見つけたな。俺とコトノハさん以外の生存者」


 俺は、人知れず笑みを作った。

 学校の校庭。そこで突如、俺の前に姿を現したのは、俺と同じ学校の制服に身を包んだ五人の生徒。そして、スーツ姿をした中年の男性…………おそらく教師であろう人物達であった。

 生徒陣は、どうやら全員二年生・三年生の先輩のようだ。誰も見覚えがなかった。

 そして教師。こちらの顔も憶えがな。

 もしかしたら、在学中すれ違っていたりしていたかも知れないけれど、全然記憶になかった。基本、俺という人間は、どうでも良いことは覚えようとしないからな。

 そしてその彼らだが、校庭で立ち尽くしている俺を発見するや否や、声を上げ出す。


「おいアレ! 誰かいるぞ!」

「近くにゾンビ達もいる! 急げ、救出するんだッ!!」

「おお〜い!! 大丈夫かァッ!!」


 …………どうやら、俺に向かって話しかけているみたいだな。そして凄い勢いでこっちに走ってくる。

 もしかしてあの人達、俺を助けに駆けつけて来ている? 確かに、俺の周り魔物だらけだし、ゾンビだらけだし。側から見たら、魔物達に追い込まれて襲われそうになっているように見えるのかも。

 え、どうしよう? こういう場合、どうするのが正しいんだろう?


 ……………………。

 俺は、しばし考えてみることにした。

 ……………………。


 そして考えること数秒。

 俺がとった行動は以下の通りだ。


「うぇ〜〜〜んっ!! 怖かったよぉ〜〜〜!!」


 必殺『嘘泣き』。

 俺は、悲劇のボーイを演じて彼らの元へ走り出した。そして、五人の生徒達唯一の女子生徒の胸の中に飛び込んだ。

 この女子生徒。校章から察するに二年生の先輩だな。

 先輩は、飛び込んできた俺の頭を撫でると、優しげな表情を見せた。


「辛かったな。もう大丈夫だぞ」

「うう…………ありがとうございます。あの魔物達に追われていて危うく殺されそうだったんです、ボク」


 そう言って、俺はアーサーやラムレイ、他のゾンビ達を指差した。

 アーサー達は、驚いていた。魔物の考えなんて読めないけど、多分驚いていた。

 ほら、今も「えっ? これ、どうすりゃいいんですか?」みたいな表情で、介抱されている俺のことを見ている。

 このままでは困ってしまうだろうから、俺は皆に指示を出すことにした。

 …………ふむ。襲われていたという設定なんだから、魔物がじっとしているのは不自然だよなぁ。

 よし、ここは一つ。仲間達にはこの人らを襲ってもらおうか!


(オイみんな! 構うことはない、こいつらは敵だ! 殺せ、殺れ、殺っちまえ!!)


 口頭で指示を出す訳にはいかないので、アイコンタクトで皆に伝える。

 もう、めっちゃ「バシバシ!」ウィンクしまくった。めっちゃ目蓋を開け閉めした。

 殆どヤケクソ気味に送ったその指示だったが、そこは流石の俺の愛すべき仲間達。俺の意図を見事に汲み取り、皆は一斉に生存者に突撃を始めたのだ。これは最早『テレパシー』の域である。


「く、来るぞ! 全員、構えろ!」


 教師の掛け声を合図に、先輩方は臨戦態勢をとった。


「君は、下がってろ! この怪物は、私達が引き受ける!」

 

 俺を介抱してくれていた先輩は俺を離して、向かってくるゾンビと対峙する。

 その時、彼女の右手周りが突然輝き出した。


「こ、これは!?」


 俺は、思わず驚声を出していた。

 彼女の右手の光。その光の中から一振りの『刀』が姿を現したのだ。

 いや、彼女だけではない。他の生徒達もそれぞれ、何処からともなく武器を顕現し出した。

 まるで、魔法のような現象。しかし俺は、その現象に近いものが自信にも備わっていることを知っている。


(そうか、『スキル』か! この人達も、俺と同じような異能の力を…………)


 先輩方が、何処でどうやって、その力を手にしたのかは不明だ。

 しかし、この人達が魔物を前にしても怖気付かないだけの『力』を持っているのならば、試したいことがある。

『戦闘力の調査』。

 俺の目的は情報収集。この人達が、どの程度の強さを秘めているのかを確認したい。

 俺は早速、アイコンタクトで仲間を操作する。数の優位を活かした一斉攻撃だ


「はあぁぁっ!」


 それに対して、先輩方も黙ってはいなかった。

 突撃する魔物達を前にして、手にした先輩は一直線に刀を振り下ろす。群れの先頭にいた一体のゾンビに斬り傷を負わせた。

 咄嗟にゾンビのステータスを確認すると、今のでHPの四分の一が減少した様子。LVの差か。武器によるものか。何れにせよこの先輩、なかなかのATKを持っている。

 先輩に続き、他の男性生徒もゾンビ達に攻撃を仕掛けた。武器のリーチを活かして一定の距離を保ちながらゾンビと戦っている。敵の数は多く、囲まれたら一巻の終わり。そうさせないための戦闘方法だ。

 おそらく、先輩方が戦うのはこれが初めてではないのだろう。何度と戦って、得られた知識でこの戦術を使っている。


(魔物が現れてから既に数時間。先輩方も、死線を潜り抜けてきたということなんだろうな)


 戦闘しているということは、その分経験値も稼いでいるはずだ。この人達が『ステータス』を持っているのなら、LVもそれなりに上がっているのかも知れない。

 俺のスキル『魔物鑑定』は、魔物のステータスは見れても人間のステータスを確認することは出来ない。

 しかし、これだけの数的不利でも優勢に戦う先輩方だ。ステータスは、LV1〜2程度のゾンビ達より相当上と考えるべきだろう。

 …………では、これはどうかな?


「ガギャギャギャァ!!」

「ワンワン!!」



 アーサーLV18

 HP135/135

 ATK25+21

 DEF13

 経験値4668


 スキル

 無し


 ラムレイLV13

 HP130/130

 ATK27

 DEF12

 経験値2500


 スキル

 無し



 リトルウルフの『ラムレイ』。それに跨り乗りこなすゴブリンの『アーサー』。

 いずれも、俺のパーティー内では随一の猛者だ。この二人を相手に先輩方がどれだけ渡り合えるのか…………見ものだな。

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