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第12話「このゲームのような素晴らしき世界」

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 俺としては、コトノハさんとの出会いはゲームのイベントのようなものだった。探索中に見つけた行き場の無い少女。彼女を匿ってあげようと一時的に同行はするものの、ある程度物語が進めば即お別れ。俺は、コトノハさんを安全な場所へ連れて行った後、また仲間達と一緒に旅立つつもりでいた。

 だけど、気まぐれな村娘は目的地へ辿り着いても勇者に付いていきたいと言い出した。何が彼女をそうさせたのかはわからないけれど、危険でも良いから一緒に行くのだと。

 まあ俺という勇者は名ばかりの、目的も成し遂げたいこともないただの風来坊なので、「付いていきたい」というのなら別に来ても構わないさ。でも、問題はコトノハさん自身のことだ。

 彼女が言った通り、外の世界は未知数。この学校より、もっと悲惨な現実、強い魔物が待ち受けているかもしれない。いや、そうに違いない。

 俺は、自他共に認める『自己中心主義者』である。何よりも自分のことを優先する男だ。しかし、だからと言って無垢な女の子を死地へと誘うのは気が引けた。

 なので、俺達は外へ出ることを一旦中止して、この学校で拠点を構えられる場所を探すことにしたのだ。身の危険を感じた際に逃げられる『安全スペース』。これが欲しい。


「コトノハさん。何処かに、魔物から身を隠せそうな場所の心当たりはないかな?」

「…………一つだけ。良さそうな場所を知っている」


 そう言ったので、俺はコトノハさんに案内された。

 校舎一階の事務室から鍵を借りて、俺達は廊下の奥を進んだ。

 他とは少し埃っぽく薄暗い廊下。確か、この辺りは物置部屋などがある場所だったはず。この辺りは、授業でも使われないし滅多に人が来ないので非常に俺好みなのだが、生憎どこも鍵がかけられているので入れなかったのを憶えている。もし、中に入れたら俺専用のスペースを作っていたところだ。

 コトノハさんは、いくつかある扉の一つの前に立つと、鍵を差し込むとゆっくりと扉を開いた。

 俺は、中の様子を見て驚く。


「…………座敷?」

「ここは茶道部の部室だよ。隠れるならここがちょうど良いと思って」


 見た所殺風景な場所ではあった。

 六畳部屋が襖を挟んで二つ。部屋の脇には小さなキッチンがある。しかし、それ以外といえば茶道で使われる道具だけ。後は、押入れに入ってあった何かの空箱くらいかな?

 それにしても、学校内にこんな場所があるなんて初めて知った。ていうか、茶道部があること自体初めて知ったぜ。


「コトノハさんは、茶道部員なの?」

「一応、ね。部員不足だって言われたから名簿に名前を書いただけ。通ったのは一、二回くらいしかない」

「そうなんだ。でも、ここなら誰からも居場所を気づかれなさそうだ。隠れ家としてはピッタリだね」


 コトノハさんのおかげで、申し分のない拠点を手に入れることが出来た。色々歩き回ったし、疲れを取るために少し休憩したいところだ。

 しかし、まだやり残していることがあるので、休むのはその後にしよう。


「さて、コトノハさん。このゾンビ映画みたいに荒廃した世界で、必要な物といえば何がある?」

「それは、色々と。まず、食料や水は必須よね? それから生活必需品に、病気や怪我になった際には医薬品も。人手もあるだけ欲しいし、後は…………情報も大事」

「そうそう。とにかく、目ぼしい物は片っ端から欲しいって訳さ。まあ大抵の物は、街に出ればスーパーやコンビニで調達出来るだろうね。ただ、外には何が待ち受けているかわからないので、迂闊に行動は出来ない。なので、この学校内を探索して手に入れよう」


 そう。これは争奪戦だ。

 他の誰かに奪われる前にこちらが奪う。一切の容赦は要らない! とにかく全部、自分達の物にしてしまうのだ!


「という訳で、コトノハさん。俺達は、これから効率性を上げるために二手に分かれよう。チームAは、『情報』を入手しに。チームBは、『食料』を入手しに行動を始めるんだ」


 情報と食料。

 生きるに必要な物は幾らでもあるが、まず重要なのはこの二つだろう。

 食料も情報も、鮮度が命。一刻も早く調達したい。


「食料がある場所といえば、食堂。そして情報がある場所といえば、人が集まる場所」

「人が集まる場所…………。校庭に集まった先生や生徒のみんなは、多分体育館か旧校舎辺りにいると思う。屋上で地上を眺めていた時、大勢そっちに向かっているのが見えたから」

「あそこにいる人達なら、俺達が知らない情報を持っているかもしれない」


 そうなると問題は、誰がどのチームに加わるかだ。

 まあ、言い出しっぺの僕が損な役回りをするとしますか。


「じゃあ、コトノハさんがチームA。食堂に行って、食料ありったけ持ってきてよ。後、ついでに冷蔵庫もお願いね」

「え、それだと二階堂くんが皆の所へ? いいの? あんなに行くの嫌がっていたのに」

「だって、コトノハさんも人が多い場所苦手なんでしょう? 女の子が嫌がることはさせられないよ」


 女の子前でカッコつけるのが男の花道ってもんよ。

 という訳で、方針は決まった。コトノハさんは、近くにある食堂で食料を。俺は、ここから少し離れた場所にある体育館・旧校舎に向かって情報収集だ。


「とはいえ、外は魔物だらけで一人で移動するのは危険だ。俺の仲間達を同伴させるから好きに使ってよ。荷物運びにもなるしさ」


 コトノハさんをエスコートするのは、スキル『火炎放射』を持つホワイトスパイダー。こいつなら、雑魚敵程度が相手なら一掃出来る。

 俺とは、アーサーとラムレイ。それから、屋上脱出の際に貢献したスライムをパーティーに加える。数は少ないけど、俺ならまた幾らでも仲間を増やせるので大した問題ではない。


「よし、じゃあ出かけるぞ。アーサー! ラムレイ!」

「ギャギャッ!」

「クゥーン!」

「…………その子達には、名前が付いているんだね」

「俺が名付けたんだ。その方が愛着を持てるようになるしさ」

「そうなんだ。…………ねえ。私も、名前付けて良いかな?」

「ああ、構わないよ」


 俺がそう言うと、コトノハさんはホワイトスパイダーの顔をしばし眺め、じっと黙り出す。おそらく、蜘蛛の名前を考えているのだろう。


「じゃあ、『リリー』」

「リリー? 良い名前だね! よかったな、リリー!」


 ホワイトスパイダーこと、リリーは名前を貰って嬉しそうしている。

 まあ、蜘蛛の感情なんて俺には読み取れないんだけどさ。多分、喜んでいるはず。


「ついでに、このスライムにも名前を付けよう。…………『スラタロウ』」

「安直過ぎない?」

「シンプルな方が却って良いこともあるのさ」


 さて、リリーとスラタロウ。二人に名前を付けたことだし、いよいよ分担行動に移りますか。

 これから始まるのは戦いでもLV上げでもなく、『収集活動』。

 俺は、大嫌いな人混みに行くことになった訳だけれども、一体どんなことが待ち受けてるんだろうか?

 それは、今は誰にもわからない…………。

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