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第七話 あっさりと正体に気付かれました


「お久しぶりです。イザベル様」

「アラン王子?」


エムロード城に到着して早速、王子直々のお出迎えとは、さすがにちょっとびっくりだ。

これってこの国の慣習的に普通のことなの?とちらっとハンナを見ると、彼女も驚いているようなので、やはりイレギュラーなんだろう。


「わざわざお出迎えありがとうございます」

「いえいえ、当然のことですよ」


さっきまで窓を閉め切っていたからわからなかったけど、ここはお城の前の庭園のようだ。

色とりどりの花が咲き誇る庭をバックに、白地に金の装飾がされた服を身に纏った美しい王子が自分に向かって手を差し出している。

夕陽のオレンジの光が王子の金髪に反射してキラキラと輝き、緑の瞳は優しい色を湛えている。


まるで映画の一シーンのような光景だ。

私が本当のイザベルだったら、この景色を目にした時点で胸のドキドキが止まらなかったことだろう。


しかし、実際の私は14歳のうら若き乙女ではなく、恋愛経験がそこまである訳ではないのに美形ばかりに囲まれる職場で目だけが肥えてしまったアラサー女。

悲しいかな、今目にしている夢のような景色よりも、どうしてわざわざ王子が迎えに来たのかに意識がいってしまう。


でもまあ、それはそれとして、ありがたく手を借りて馬車から降り立つ。


「長旅だったでしょう。急にお呼び立てすることになってしまい本当にすみません」

「とんでもないです。それに、ここまでの道中は初めて見る景色ばかりでとても楽しかったです」

「それはよかったです。港の様子はご覧になりましたか?」


当たり障りのない会話をしながら、美しい庭園をゆっくりと歩く。

宮殿からあと数十メートルとなった時、アラン王子がふと足を止めた。


「イザベル様、宮殿へ入る前に、少し二人きりでお話しする時間をいただけませんか?」

「え?別に構いませんが…ここで?」

「すぐそこに東屋があります。もしよろしければ、そちらで」


王子はそう言うと、右手で方角を指した。

その先には、確かに屋根のついた小さな白い東屋があった。


向きを変えて二人で東屋へと向かう。


なるほど、わざわざ迎えに来たのはこの時間を作るためだったのだろう。

でも、いったい何のために?

もしかして、「実は私には愛人が100人います」とかそういう告白じゃないよね。

王族なんだから愛人の一人や二人はいるんだろうけど、ちょっとハードだな。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか東屋に辿り着き、お付きの衛兵やハンナは姿を消していた。

見えないだけですぐに駆け付けられる距離にはいるんだろうけど。


「どうぞ、座ってください」


アラン王子がポケットから白い絹のハンカチを出し、ベンチの上に広げてくれる。

連日の晴れでベンチは汚れ一つなく綺麗に磨かれているというのに、さすがロイヤルな方々は所作が上品だ。

ありがたく座らせていただくと、アラン王子も向かい側のベンチに腰掛けた。


さっきまであんなに王子様然としていたのに、なんだかソワソワしている。

長い指を組み合わせ、目線はあちこちに揺れ、下げ気味の眉がますます下がっている。

初めて見たときに感じた自信がなさげな素顔が顔を出しているみたいだ。


「イザベル様、」


意を決してという雰囲気でアラン王子が口を開いた。


「なんでしょう?」


「今から私は少し・・・だいぶ、かなり突飛なことを貴女にお聞きします。

もしもご気分を害されるようなことがありましたら、大変申し訳ございません。

先に謝罪します」


「いや、そんなこと言われましても・・・その突飛なことというのは?」


もしかして、本当に愛人100人、いや1000人とかいるの?

お前の相手をしてる暇はないみたいな??


「はい、その・・・あのですね」


いつまでもはっきりとしたことを言わない王子の様子に段々とイラッとしてくる。

なんなんだ。

言いたいことがあるなら言ってくれ。

多少のハードな性癖ぐらいなら驚かないから。

会社の同僚に80デニールの黒タイツにしか興奮しない奴とかいたし。



「もしかして、今の貴女は昔のイザベル様とは全くの別人なのではありませんか?」


「ああ、なんだそんなこと・・・え?」


ブックマークありがとうございます。多忙につき先月は投稿できませんでしたが、再び週1ペースで続き載せたいです。

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