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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第2章 外の世界
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昇格と宴会と新人の試練

 「それでは、緊急依頼の達成と冒険者全員の無事の帰還、ついでにハルとセーラのDランク昇格を祝しまして・・・乾杯!!」


 「「「「「乾杯!!」」」」」


 クイーンを斃してから4日後、ハルたちはカシスの街の冒険者ギルドで祝勝会を挙げていた。クイーンを斃した後、拠点に戻り負傷者の手当てや遺体の運び出し――残念ながらカシス兵側にはかなりの死者が出てしまった――を終えたころには日が昇ってきており、疲労や、負傷者が多いこと、カシス領兵側に至っては部隊の運営に支障をきたすほどの打撃を受けており、すぐに探索の再開ができる状態ではなかったことからその日は休息に充てられ、翌日から探索を再開。放置してきたクイーンの解体と坑道内にわずかに残っていた討ち漏らしを掃討し、依頼の達成を確認したのが昨日の昼である。それから1日かけてカシスの街に戻ってきてそのまま祝勝会となった。なお、今回の依頼でギルドポイントが100を超えたハルとセーラは、カシスの冒険者ギルドに帰還するのと同時に無事Dランクに昇格した。さらに、まだ認可状の効力は続いており、2人のギルドカードにはD+と記されていた。


 「うおぉぉ!酒だぁ!!」


 「今日はぶっ倒れるまで飲んでやる!!」


 追加報酬がかなり出されたこともあってか多くの冒険者が祝勝会が始まって早々から酒を浴びるように飲んでいる。


 「昇格おめでとう、ハル、セーラ」


 「あ、ロクサーヌさん。ありがとうございます」


 「ありがとうございまーす、ってロクサーヌさんも随分飲んでるね」


 草原の花のリーダー、ロクサーヌがやってきた。その手には大きなグラスとそこそこ高そうな酒のボトルが握られている。


 「ふふ、当然でしょ。流石に今回の依頼は大変だったし自分にご褒美をあげないとね。どうせ、しばらくは依頼を受けるつもりもないから二日酔いの心配をする必要もないし」


 そういってロクサーヌはグラスに入っていた酒を一気に飲み干した。


 「え、しばらく依頼受けないの?」


 不思議に思ったハルが聞き返す。


 「そのつもりよ。大金が入ったからしばらくは依頼を受けなくても生活できるっていうのもあるけど、体と精神を休めるのも仕事の内だし、今回の依頼でかなり装備を酷使したから鍛冶屋に修理をお願いしたり、消耗した備品を買い足したりしないといけないからね。支援部隊の方に参加していた冒険者はともかく、討伐部隊に参加していた冒険者はみんなしばらくは依頼を受けないと思うわよ。あなたたちも装備の修理や備品の買い足しは必要じゃないの?」


 「そっか、確かにそういうのも必要だよね。セーラ俺たちもしばらくゆっくりする?」


 「そうですね。そろそろ装備の簡単な手入れだけでなくしっかりとしたメンテナンスをしておきたかったのでこの機会に休みをとってもいいかもしれませんね」


 ハルたちもしばらくは休みをとることになりそうだ。


 「そうと決まれば早速飲みましょ!!ドリスたちが席をとってるからね」


 ロクサーヌに引っ張られてハルとセーラは草原の花のメンバーが集まっているテーブルに向かった。


 「お、ハル君とセーラちゃんだ。ほら、ここに座りなよー」


 「ん、・・・待ってた。」


 「あ~、ハルとセーラだ~!あはははは!!」


 「お、ありがとうございまーす!・・・ってか既にドリスがかなり酔っている!?」


 「ド、ドリスさん?もう少しペースを落とした方が・・・」


 「らいじょーぶ。まら始まっら、ばかり、・・・らし・・・ZZZ」


 「もう酔い潰れた・・・だと!!?」


 「大丈夫ですか!?わ、私水を・・・!!」


 セーラが水を貰いに席を立とうとしたところでハルとセーラの肩に手が置かれた。何となく嫌な予感がしてゆっくりと顔をあげるとロクサーヌたちがなにやら黒い笑みを浮かべて酒のボトルを持っていた。


 「ふふ、次は君たちの番よ」


 「ごめんねー。けど、これが冒険者の暗黙の掟(ルール)だから!!」


 「・・・新人ルーキーは宴会の場では酔い潰れるまで呑まなければならない。・・・生き残りは既に2人だけ」


 「「なっ!!?」」


 周りを見てみると祝勝会に参加している冒険者講習の同期メンバーはテーブルに突っ伏したり床に倒れたりして全滅していた。そして、その場にいる冒険者全員が黒い笑みを浮かべてハルとセーラの方を見ている。


 「さて、それでは始めましょうか。ふふ、期待の新人ルーキーはいつまでもつかしら?」


 その日、ハルとセーラは酒という名の悪魔に屈した。







 「うーん、頭が痛い・・・」


 不快な頭の痛みに意識が徐々に覚醒してくる。その時ハルは自分が柑橘の様な爽やかな甘い香りに包まれていることに気付いた。その香りに意識を向けると不快な頭痛が和らぐような気がしてくる。


 (うーん、この香り、どこかで嗅いだような・・・。何だったかなー。んー?温かくて柔らかい・・・)


 ぼんやりする頭でそんなことを考える。何かとても柔らかいものに抱きしめられているようだった。


 (うーん、何だろ。まあ、何でもいいか。まだ眠い。昨日は確か宴会で遅くまで・・・遅くまで・・・。あれ、何かとても大切なことを忘れているような・・・)


 失われた記憶の残滓が今すぐ起きろと告げてくる。しかたなくハルは脱力感と眠気を振り払うように目を開けた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 見えてはいけないものが見えた気がしたハルは再び目を閉じ、自分が落ち着くのを待ってから目を開ける。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ハルの目には明るめの茶髪を短く切りそろえた同年代の美少女の寝顔が超至近距離にあるように映っている。とりあえずハルは自分の頬をつねってみた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ハルの全身から嫌な汗が流れてくる。つねられた頬は・・・痛かった・・・。


 (え、ちょ、待て待て、ななな何がどうなって!?え、嘘だろ、まずい、何も思い出せないっ!)


 戦鬼のダンジョンでSSランクの怪物と平然と戦っていた同一人物とは思えないほどの慌てっぷりである。


 その時、ハルの目の前の美少女セーラが目を開いた。互いに極至近距離で見つめ合う。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、あれ?」


 互いに見つめ合ったままフリーズしていたハルとセーラはほぼ同時に正気を取り戻した。


 「きゃあああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?」


 次の瞬間、セーラの悲鳴と頬を打つ乾いた音が部屋中に響き渡った。






 布団を被りしばらく中でごそごそとやっていたセーラが顔を出した。その顔には怒り、困惑、安堵、羞恥といった様々な感情が合わさった複雑な顔をしている。頬に真っ赤な紅葉をつけたハルはというと2人が寝ていたベットから降りて三つ指をつき、床に額を付けるように頭を下げていた。アキト国に伝わる最上位の謝罪方法のDO☆GE☆ZAである。セーラは最初ハルが何をしているのかわからず困惑したがその雰囲気から、謝罪であると察したらしい。いつもより若干硬い声でハルに問いかけた。


 「・・・それで?何故ハルが私と同じ部屋の同じベットで寝てたんです?見る限りここは清風亭の部屋の様ですが・・・」


 「ごめん、宴会の途中から目を覚ますまでの一切の記憶が無い・・・。その・・・オレはセーラに・・・」


 「その、あの・・・、私は何もなかった様でしたから」


 ハルが聞こうとしていることを察してセーラが少し赤くなりながら告げる。


 それを聞き、ハルは安堵のため息をついた。


 「ふう。私も宴会の途中から記憶が無くて何故こんなことになっているかわからないのでとりあえずここのご主人か女将のアンナさんにでも話を聞きましょう。今後の話はその後です」


 「・・・はい」


 ハルとセーラは部屋から出て一階に下りて行った。


 「おや、おはようお二人さん」


 「・・・おはよう、アンナさん」


 「おはようございます、アンナさん。お聞きしたいことがあるのですが今、少しよろしいですか?」


 「あたしは構わないよ。ひょっとしてさっきの悲鳴の件かい?」


 アンナさんは苦笑しながら2人を食堂の空いている席に案内する。


 「それで、聞きたいことっていうのは何故二人が同じ部屋に泊まっていたかって事かい?」


 「そうです。私もハルも昨晩はかなり酔っていて記憶がないもので・・・」


 「それなら、簡単さ。2人は昨晩の遅くにうちにやって来たんだが、宿泊客が多くて、一人部屋が1つしか空いて無くってねぇ。そう言ったらその部屋でいいって2人が言うもんだからさ。一応何回か確認はとったんだよ?」


 「なるほど、そういうことでしたか・・・。さっきは驚いてはたいたりしてすみませんハル。私の方にも責任があったみたいです」


 「いや、いいよ。前後不覚になるまで酔って判断力を失ったオレが悪い」


 「そんなことは・・・。いえ、それなら今回はお互いが悪かったということで水に流しましょう」


 「わかった。セーラがそれでいいのなら」


 こうしてハルとセーラは無事に和解することができた。その後、ハルとセーラは部屋を取り直した後、鍛冶屋に向かい装備の整備を行うことにした。少し時間がかかるとのことで冒険者の活動再開は数日後になりそうだ。ハルとセーラは一緒に買い物をしたりしてその日を過ごした。その際、さりげなくハルが奢ったり小物をプレゼントしてご機嫌取りをしたのは言うまでもない。


 その日の夜、一緒に夕食を食べている時にぽつりとセーラがハルに聞いた。


 「もし、昨晩ハルが私に手を出していた時はどうしました?」


 「そりゃ、とにかく謝って・・・、セーラが望む方法で責任をとったさ」


 「・・・そうですか」


 「うん?」


 「いえ、何でもないですよ?」


 そう言ったセーラの顔は少し赤くなっているように見えた。






今日の19時頃にもう一度投稿予定。ストーリーではなくこれまでに登場した魔獣のデータです。

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