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第0話『観測の階梯』
ダンジョンの奥。
何かが。
こちらを見た。
一つではない。
十。
百。
いや。
数え切れない。
視線。
悠真の背筋が凍る。
「……え?」
コメント欄が急速に流れる。
《待って》
《画面の奥に何かいる》
《目?》
《誰か今、見た?》
《怖い》
《なんだこれ》
悠真はゆっくり振り返った。
誰もいない。
なのに。
確かに。
見られている。
「……」
喉が鳴る。
「帰りたい……」
本音。
コメント。
《草》
《正直すぎ》
《でも逃げないの?》
悠真は暗闇を見る。
怖い。
足が震える。
それでも。
一歩。
踏み出した。
「……行く」
「怖いけど」
「知らないまま終わるのは、もっと嫌だ」
その瞬間。
遠い最深部。
まだ誰も知らない場所で。
何かが。
初めて。
悠真という存在を。
記録した。
――観測開始。
【対象:天野悠真】
【分類不能】
【観測結果】
【恐怖を認識】
【逃走せず】
【理解行動を確認】
そして。
ダンジョンの奥で。
何かが。
興味を持った。
『この人間は』
『私を見ている』
ーそして、時はさかのぼる。ー
観測の階梯 終




