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シスコンってなに?


次の日の朝、教室に入った俺は… クラスの半数以上の人に囲まれた。一応予想はしていた…


「山水、あの女の人とどういう関係? もう一度会わせて」

「山水、お願いだから写メ取らせてって頼んでみて」

「山水君、あの素敵な人の名前教えて」

「なんか噂で聞いたけど… あの人って山水の姉さんなの?」

「山水~ サイン頂戴って言って~」

「山水~ 変わって~」

「山水~ 死んで」


完全に俺を取り囲んでいろんな方向から好き勝手なことを言われた。

変わってって… 変われるわけないだろ? 死んでって… 俺、死んだ方がいいの?

最後に何か呪われたことを誰かに言われたような気がするが… 気のせいということにしておこう…


「あれは俺の姉さんだよ。また来るかもしれんから見たけりゃそのとき見ろ」


全てのやつに対してまとめて答えてやった。男子だけでなく女子も結構な人数が聞きに来てた。

やっぱり鈴姉の影響力はすごい。確かに俺も鈴姉より奇麗な人を今まで見たことがない


ようやく人混みを処理して自分の席に来ると、完全にうなだれた二人がそこにいた。朱莉は机に突っ伏しており、沙奈江は肘をついて首がカクッと折れ曲がった状態で下を向いている。


やっぱり昨日は鈴姉に来てもらってよかった。

なんせ俺の最終兵器だからな… あれを回避されたら俺には無条件降伏しか残されてない。


二人共この様子だったら、あと数回これを繰り返せば放課後は諦めるだろ… なんか悪いけど放課後だけは渡すわけにはいかない。早く俺のことなんて忘れて二人にふさわしい彼氏を見つけた方がいい。どう考えてもそっちの方が彼女たちのためになる。


俺が彼女たちに近付くと、朱莉と沙奈江はこちらのほうを向いた。


「おはよう、侑汰君」

「昨日侑汰君を迎えに来たの、侑汰君の姉さんなんだね…」


朱莉が元気のない顔をして聞いてきた。


「そうだよ。この学校の3年生にいる俺の姉さんだ」


「なんで昨日はいきなり侑汰君を迎えに来たの? 昨日が初めてだよね?」


どうしよ、お前らに拉致られるのを阻止するためって言えないし…


「昨日はちょっと用事があってね… いつもは俺のクラスまで迎えには来ないけど、結構一緒に帰ってるんだよ…」


「そうなの?」


「鈴姉は俺の保護者みたいなもんだから…」


本当は鈴姉と一緒に帰ったことなんて一度もないけどね… 姉ちゃん、目立ちすぎるから学校の近くでは近寄れない…


「ねえ、侑汰っていつも姉さんと手をつないで歩くの?」


沙奈江が怪訝な表情で聞いてきた。


「そうだけど… 何か?」


侑汰は平然とした表情で言った。“何かおかしいの?”っていった感じで…

朱莉と沙奈江はお互い顔を見合わせた。少し驚いた表情で…


「何かって… 高校生になって普通はそんなことしないよ?」


「そうなの?…」


あれ? 姉弟っていつも手をつないだり腕を組んで歩いたりするのが普通じゃないの?


「姉弟でそんなことやってたらシスコンって思われちゃうよ?」


「シスコン… ってなに? なんかのコンテスト?」


朱莉と沙奈江は目を合わせて… 固まった。侑汰にそういう常識が全くないのに驚愕している。


「本当に知らないの? 聞いたことない?」

沙奈江が驚いた表情で侑汰に詰め寄った。


「そんなの聞いたことないよ」

侑汰の言葉を聞いて二人とも頭を抱えた。侑汰は天然のシスコンだ、しかも重症…


「侑汰君、一応聞くけどさ… 姉弟で結婚できないって知ってるよね?」


「そんなのあたりまえだろ?」


朱莉は思った。(そこは大丈夫なんだ… それじゃ、この辺はどーかな?)


「だから、姉弟でエッチなこともしちゃいけないんだよ…」


「当たり前でしょ」侑汰は即答する。


(その辺も大丈夫なんだ… だったら手をつないだりするぐらいの可愛いものか…)


「そうだよね、姉弟で抱き合ったり一緒にお風呂入ったりとか、大きくなったらしないよね」


朱莉は冗談のような感じで今でも手をつないだりする仲のいい姉弟だと思い始めた。


「え? 普通に毎日抱きしめたりするけど… あと一緒に寝たりとか… だめなの?」


朱莉の顔から血の気が引いた… 完全な無表情となる。

(それってエッチの一歩手前でしょ? ぎりセーフ?)

沙奈江は意識を失いかけている… 脱力感で腕がぶらんぶらんと揺れている。


侑汰の常識が普通とあまりにもかけ離れているので話が通じない。

朱莉は意を決して侑汰に言った。


「侑汰君、私が“抱きしめて”って言ったら抱きしめてくれる?」


「普通に抱きしめていいのは姉弟だけでしょ? 他人の女の子を抱きしめたらいけないでしょ?」


だぁー、違う違う!普通抱きしめるのは他人の女の子のほう!そこで姉弟を選ばない! 朱莉は発狂しかけた。


侑汰は二人が何を言いたいのか全く分からず首を傾げている。


午前の授業が終わり昼休みになった。すると朱莉は侑汰に向かって言った。


「今日は沙奈江と二人で用事あるから山縣君と二人で弁当食べてて」

そう言って朱莉は沙奈江を連れて教室を出て行った。



朱莉と沙奈江は屋上にきている。


「沙奈江、侑汰君のことどう思う?」


「まさか姉さんとそんな関係だなんて予想もしなかったよ…」


「私だってびっくりしすぎて言葉も出なくなりそうになったよ…」


「朱莉、侑汰ってさ… 私たちを女の子として見てるのかな?」


「私も思った。多分見てないと思う… てか、姉さん以外の女子全てを女の子として見てないと思う」


「こんなんじゃ付き合うとか以前の問題だよね… 朱莉はそれでも侑汰が好き?」


「好きだよ、侑汰君が私に優しくしてくれたのは事実なんだし… そういうことができるのも知ってるし…」


「私は分かんなくなってきた。好きなんだけど… 侑汰の気持ちが全く分からない」


「じゃ、沙奈江は降りる? それなら私一人でいけるから丁度いいけど…」


「ううん、絶対に降りない。私だって私を気遣ってくれていた侑汰のことが忘れられない」


「沙奈江、取り敢えず現状をちゃんと認識しよう。多分、侑汰君は私たちにそこまで特別な感情を持ってない。私たちに気を遣ったのは彼の人間的な優しさだと思う。それと、彼は女の子全てに対して本当の意味での恋愛感情を持てないと思う。侑汰君は女の子を愛するって意味が分かってない…」


「私も朱莉の言う通りだと思う。私は最初、侑汰が私の事を好きだから私も好きになったと自分でも勘違いしていた。侑汰に優しくされたことで、結局自分が侑汰のことを好きになっていったって今は思ってる」


「私も沙奈江と同じだよ。きっかけは侑汰君から好きになったと思ってたけど、今はそんなの関係なく侑汰君が好き。最初の理由なんてどうでもいい」


「結局、惚れたのは私たちの方ってことだよね」

沙奈江がそう言うと二人とも大笑いした。


「私ね、侑汰君に優しくされると本当に気持ちが満たされて幸せになれるの。だから、侑汰君が本気で私を好きになってくれたらその優しさを自分が独占できるってことになるよね… だから凄くやる気になれるの」


朱莉が自分の本音を語ると沙奈江も本音を言い始めた。


「侑汰の優しさに気づくとどうしても目が侑汰にだけ行っちゃうんだよね。それで期待しちゃう、もっとこうして欲しいとか… でも侑汰ってそれも分かってくれてその通りにしてくれる。だから侑汰から離れられなくなっちゃう」


「沙奈江、取り敢えず今は侑汰君に女の子を好きにならせることだよ。お姉さんとの関係とは別の男と女の関係があることをちゃんと知ってもらわないと…」


「朱莉、私たちって結構いけてる女の子よね… 私たちだったら侑汰に女の子を好きだって思わせることができるよ」



こうして二人は侑汰に恋愛感情を分からせることから始める事を目標とした。自分たちの容姿を利用して…

ただ、彼女たちは基本的に侑汰から嫌われていることに全く気付いてなかった… 今のところ完全な空回り状態だ。



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