40
「はぁ……はぁ……」
息があがる。視界がかすむ。
魔力が無くなっていく。
まだ、まだ終わらない?
ペタリ。
暖かい魔力が流れ込んでくる。みればユキの前足が膝の上にある。そこから、ユキの前足のぬくもりと魔力が流れ込んでくるのが分かる。心の中で、ユキに感謝して浄化に集中する。
スッと意識が冴えていく。私の周りではみんなが戦っている音がする。
カイルの氷でひんやりした空気をリア様の炎で上書きする。そして、その炎をエドガー様達が吹き飛ばす。かすかに聞こえる金属音はマクレウス様が剣を振るう音だろう。
それぞれが自分の役割をこなしている。
私だけがへばってるわけにはいかない。
組んでいる手に力を込めて祈る。
少しずつ湖の元の姿を取り戻して来てる。ドロドロとした嫌な感じも消えていってる。
だから、油断していた。湖から植物のツタようなものがでてくるなんて思ってもいなかった。
手をつかまれ湖に向かって引きずられる。ユキが何度切っても黒い瘴気が湧き出てすぐにつながってしまう。浄化をしようにも魔力も気力もギリギリでうまくいかない。
「クリスタ!!」
「っ、カイル!」
カイルが走ってきて手をのばした。
私も掴まれていない方の手をのばす。
けれど、その手は空をきり私は湖の底へ引きずり込まれた。
※※※
そこはとても暗くてとても寒くて。凍えてしまいそう。
「『光を』」
小さく呼べば白い光が手のひらに集まる。
ここはどこ? 湖に引き込まれたはずだけど、まるで別の場所のよう。
あたりを見渡してみてもそこにあるのは暗闇。光は私が持っている光しかない。
そういえば、ユキがいない。
私が掴まれたときまでは一緒にいたはず。
「ユキ? ユキいるの?」
返事はない。
だとしたらここにいるのは私一人。
不安が募る。
だけど、進むしかないか。
「行こう」
息を吐いて歩き出した。
どこに行くか分からない。でも、なにか行動しないとなにも進まない。
私をここに連れてきた犯人は見当がつく。
もしかしたら、進んだ先には彼がいるかもしれない。
「待ってなさい、魔王。今から、あなたのところに行くわ」
この先にいるであろう魔王に向かって、私は歩き出した。
※30話の前半部分を変更しました。




