幕間
今回はあまり話が動きません。
ルピナスの騒動から丸三日程経っていた。
俺たちは菫さんの遺品の整理が終わると、1日ほど各自でやりたいことをする時間を設けて、その後の出発にそなえた。
おれはもう一度魔人の文献を読み直し、ルピナスの体の一部である監視ツールを全てに点検、強化を施した。その後、目的地である帝国、帝国領についての文献も全て読む。『速読』があればどうってことない。
本を読んでわかったことといえば、帝国の歴史、歴代皇帝の名前、最近の情勢、とまあそれぐらいで(普通の人はこれぐらいしか求めない)、神殿について書いてあるようなことはなかった。
楓と琴美はルピナスと一緒に研究所を回って、武器やらなんやらを漁っていた。
まあ途中で試し打ちと称した戦闘訓練となっていたけど。うちの女子組は意外と血気盛んだった。
そんな1日を挟んだ俺たちは今、ジャングルを爆走している。
ルピナスはルピナスの希望から菫さんの使っていたというバイクに乗っている。やはり菫さんは色々と抜かりがなく、気体操作魔法で音を消す装置も作っていた。
ほかに特に壊れているようなこともなかったので、俺は部品全てを固くするだけで済んだのは有難い。
帝国は基本的に規制はゆるいが、唯一入国時には厳しい検問があるらしい。
この検問では積荷だけでなく出身地や入国理由など、様々なことを聞かれるらしく、この異世界で最も入りにくい国といっても差し支えない。
「ーーというわけで、今から設定を決めといたほうがいいと思うんだ。」
「それに関しては私も賛成ですね。一応、私たちは王国から亡命しに行くわけですから。」
「でも、設定ってどういうのを決めるの?」
「そうだな。例えば職業、読んだ文献から推測するに、治癒術師はレアの部類に入るらしくて、バレたら今ブームが来てる攻撃特化型のパーティーが黙ってないらしい。」
「治くん、ブームとかいってる時点でなんかもうだいぶ胡散臭いよ?」
俺がした説明に楓が突っ込む。
俺は少しムッとしたので言い返してやる。
「俺にいうなよ、この『初心者冒険者にオススメ!!今シーズン最も注目すべき冒険者グッズBEST10!!』に書いてあったんだから嘘ではない。」
「この世界でもこういう雑誌は売れるんだね……」
楓が苦笑いしている。まあ、俺も始めて見たときはそうだった。
「……それで、結局設定はどうなった?」
ルピナスが待ちかねたかのように聞く。
「そうだった。とりあえず楓、めんどうなことにはなりたくないから、お前は料理人を名乗ってろ。クリスタルの偽装は俺がやっとく。」
「?なんで料理人?」
「お前の料理なら疑われない。証明が必要になったらお前がみんなの前で料理すれば信じてもらえるだろう。」
「なるほど、了解ですっ!」
「次、ルピナス」
「……ん」
ルピナスは半開きの目でこちらを見る。余談だが、あれっきりこいつが笑っているのはみたことがない。やっぱり、俺の言葉ではあまり変わらなかったな。
「お前はきっとこの世界で最も貴重なオートマタだ。よって、バレると大変なことになる。」
「理解している……」
少し顔に影がかかる。
そのことが間接的な理由となってお母さんをなくしたんだ。無理はない。
「だからお前は人間、楓の双子の妹という設定で行く。」
「職業は?」
「お前がなりたいやつでいい。」
正直、俺のいろんな知識も積み込んだルピナスはなんでもできるような気がした。よって、こういう方法をとったのだ。
「じゃあ小説家」
「?なぜ?」
「治と一緒がよかった。」
しばらく、続く沈黙。
25行ぐらい前の言葉を訂正。こいつは変わった。脈絡もなくデレるようになった。
「オサムクン……?」
楓の顔が!!
ってかやめて?その白い般若のお面どこから持ってきたの?リアルで怖いからそれ。
「治くんがそんな見境のない人だとは思わなかったよ、まさか私の可愛い妹に手を出してたなんて!!」
「オイオイ会話の余地なしかヨォ。」
まあ、そんな感じで、俺たちは帝国に近づいて行っているのだった。
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◇視点王都のギルド
「今までお世話になりましたっ!!」
受付に女性の声が響く。
声を出したのはついこの前までは人気No.1だったリアナ。
ここ二日で王都は目まぐるしく変化した。
三日前にストーンタイガーのいると言われる洞窟に行った勇者たちのパーティーが帰ってこないのだ。
それにより、孝介氏が取り仕切っていた勇者たちは好き放題始め、王国は混乱。
そして、それは孝介氏を最後に送り出したリアナのせいにされ、リアナは帝国支部に移動となった。
これまでだったら多くの冒険者がこぞって反対しただろう。が、今はそこまでしてリアナを守ろうとするものはいない。これは勇者を送った日にあったあの事件が原因で。
「すまんな、国王の決定なんだ。」
「いいえ、私が迷惑をかけたのも事実ですし。」
このようにして、治たちとリアナ、お互いにはぶられたもの同士が出会うときはもう目前まで迫っている。




