勇者サイド 強欲の剣
あとがき長いです
ケルベロス。
ギリシャ神話などでよく聞く魔物で、頭が三つある地獄の番犬。
こちらの世界ではそれに加えて闇魔法も使うという凶悪さも備えている。
そしてこいつはなんといってもでかい。頭の高さが俺より高いから、図鑑に書いてあったやつの3倍の大きさはある。
「『魔力変異種』か……」
『魔力変異種』
なんらかの原因で膨大な魔力を取り込んだ魔獣が変異したもの。
通常はコアが膨大な魔力量に耐えられなくなり魔力暴走を起こすことで屍となるが、もともとの魔力量が多い上級以上の魔物がたまに死なずに体のどこかが変化した状態で発見されることがある。
「孝介!!」
謙介の声が洞窟に響く。
いままで上級魔獣を討伐するのに最低でも二人は必要だった。しかも今回の相手は変異種、叫びたくなる気持ちはわかる。
残念ながら謙介、文香、邦和の3人はこの戦闘では役に立たないだろう。
俺はその3人を目で制すと、王城の宝物庫から貰った黒い刀身の両手剣を構える。
特になにかが付与されているわけでもなく、ただ『切れる』だけの剣。
といっても、切れ味もそこまで良いということもない。ただ、なにかが他の剣と違うような、そんな感じがした。
俺はじっと目の前の敵を見据え、敵の足先から頭の頂点まで全てを見逃さないようにする。
次の瞬間、ケルベロスが動いた。
出てきたのは俺から見て左の前足。
大きくカーブしたその爪は構えていた俺の剣に弾かれる。
俺が危なげなく攻撃を躱すと、ケルベロスは反対側の腕を突き出し避けたところを狙ってくる。
それをまた今度は後ろに飛ぶことで避け、一呼吸置いてから突っ込んでいく。
三度繰り出される長い鉤爪。
俺は剣の鎬(剣の横、歯の付いていない平たい部分)でそれをそらし、『間合』を使う。
敵の懐に飛び込んだ俺は首元に刃を突き立てそして、弾かれる。
「しまっ!」
次の瞬間、俺は壁に打ち付けられていた。ケルベロスの爪のお土産をわき腹に突き刺して。
「孝介!!」
今度は美嘉の声がする。
視界が滲み始めた。
「(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、)」
額に脂汗を書きながら止まることなく流れてくる血液の源を手で押さえる。
「(欲しい、力が、この傷を塞いでもう一度戦えるようにしてくれる力が。欲しい、欲しい、欲しい!!)」
目の前のケルベロスはもう大丈夫と判断したのか、次の獲物つまり疲弊しきっている美嘉たちに狙いをつけた。
ケルベロスと美嘉の距離は後5メートルほど、
ケルベロスが腕を振りかぶる。
「俺に、俺に力をくれよ!!」
景色が暗転した。
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同じ時、
◇視点??
六年ぶりに反応があった。
いや、私があっち側にいた時間を合わせれば九十年ぶりだろうか。
私は唇を歪めて言う。
「まさかあの剣を勇者が選ぶとはね。なるべく見た目を地味にしたつもりだったんだけど。」
すると、今度は携帯電話から声が聞こえる。
『そういえば今、昔の基地で使っていたスマホが起動されたよ!』
「ほんと?じゃあやっぱり楓も来てるんだね!!」
久しぶりに娘に会えるのが楽しみで仕方がない。
『でも今は6歳の体なんだから、あんまり無茶しないでよ?』
「大丈夫、せっかくハーブに新しい命をもらったんだから、大切にするって。」
『それならいいけど……一応お母さんは帝国のお姫様なんだからね?』
「はいはい。あなたも教育係と同じこと言って。」
『だって私は転生前からSの助手としてすごしてたんだから、当たり前でしょ?』
ここでも一波乱ありそうな予感がする。
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◇視点孝介
そこは真っ暗な暗室だった。
そして、中央には何も照らしていない、ただあるだけのぼんやりとした光がある。
『ほう、二人目が来たか。』
光から声が発せられる。
俺は素直に聞き返す。
「どう言うことだ?」
『そうだな、これから自分のご主人様になろうと言う方に少し無礼だったかな?』
「?ますます分からん。」
『私はあなたの使っている剣、名を強欲の剣という。以後、お見知り置きを。』
「は?強欲?」
『おっと、これ以上いるとご主人様の仲間の命がないな。流石にわたしには時間を止める力なんてなくてね、意識をあっちに戻すから、質問は後で聞こう。』
「おい、ちょっとーー」
『そうそう、傷は治しておいた。また何か欲しいものができたら遠慮なく願ってくれ、わたしはご主人様の『欲望を叶える剣』だからな。』
急に目に飛び込んできたのはケルベロスが仲間を襲っている光景。
俺は急いで走り出す。
痛みは、ない。むしろいつもより速いスピードで走り出した俺は一瞬でケルベロスの首元に飛びつき、そしてまた刃を突き立てる。今度は『切れろ』と願いを込めて。
次の瞬間、ケルベロスは吠えた。
よく見てみると、今まで傷すらもつけられなかったその体から血が滴り落ちているのが見える。
俺は一旦距離を取り、背中に美嘉たちをかばうような格好になる。
「(欲望を叶える剣、なるほどな。)」
残念ながら今の俺には血が足りていない。
これ以上戦う事は多分無理だろう。だから、こんな重要な局面だけど、かけることにした。
俺は強く剣を握ると、祈った、願った。
「俺に『運』をください。」
と。
次の瞬間、壁から膨大な魔力の炎が吹き出て、ケルベロスを襲う。
より正確には山の外からの攻撃が岩壁を貫いてケルベロスを焼き尽くした。
「は?」
後ろの謙介達は間抜けな声を上げる。
俺は、それを鼻で笑いながらふらつく足で壁に開いた穴のところまで行く。この攻撃をしてくれた人の顔を見たかった、ただそれだけのために。
「ちょ、孝介どこ行くの?!」
美嘉が慌てて俺の肩を担ぐ。
外はもう日が傾き始めていた。急げば夕食に間に合うだろう。
「それにしてもすごいな……」
俺は攻撃の後をみる。
距離としては約40キロほどだろうか。
俺は魔力で目を強化し、攻撃の中心をみる。鍛錬の結果、美嘉は70キロ、俺は約50キロメートルまでなら顔を見ることができる。
もしもその人と会うことがあったらちゃんとお礼が言えるように。そう思いながらピントを合わせる。
そして……
「孝介、どうしたの?驚いた顔して。」
「美嘉、あそこ、この魔力を放った人」
「何言ってるの?これは孝介がやったんでしょ?」
「違う!これは俺じゃない、とにかく見てみろ!」
「わかったけど……」
美嘉は納得できないと言った感じで魔力を目に集め出す。そして、ピントを合わせた後、
「嘘……お、さむ?」
この攻撃をしたであろう人、治の名前を呟いた。
はい、だいぶ久しぶりです。
サボってすみません。ようやく宿題の山を崩し終えたので投稿しました。
唐突ですが、
カクヨムさんにて、新作書きました。
そこでこれを機に更新ペースを一新できるよう、何個かこの話を貯めておきました。これも更新が遅れた理由です。三日に一回ぐらいにできるといいな。
今はまだこの話はなろうオンリー、新作はカクヨムオンリーです。後でどうなるかはわたしにもわかりません。
新作は治くんの住むA市のとなりにあるB市に住む主人公の異能バトルものです。
いつかクロスオーバーできるのを目指して、頑張りたいと思います。
P.S.
カクヨムでのPNは『武田 凛』です。
なぜこれにしたか?
かっこいいからですよ。




