作戦開始 2(ちょっとだけリアナの話し)
楓が走り出すと同時に私も走り出す。
私の担当は眼鏡をかけた青髪の男。先ほどの大男より一間周り小さい外見をしているが、その男と口で張り合えたと言うことはそれだけ実力もあると言うことだろう。
気を引き締めて私は足を動かす動力源に全部の魔力を集中させて万全の状態にすると、男めがけて走り出す。そして男の目の前数メートルに出ると、知覚できる速度で横に飛び、今度は普通の人間には知覚できない速度で元の位置に戻り、一歩踏み込んでお腹に一発食らわせる。
知覚できるフェイントを必死に目で追っていた男はそれに痛みを伴うことでやっと気づいたのか、大軍の中から吹き飛ばされながら私に目を向ける。
男は視界から私を外すことなく吹き飛ばされると少し離れた地面に落下する。
その男は私へ向けた視線を一瞬も話すことなくたちあがると、吐血した際に血の滲んだ口周りを手の甲で拭きながら言葉を紡いだ。
「なるほど。先ほどあの脳筋を吹き飛ばしただけはあるということでしょうか。」
先ほどの攻撃を受けたところをさすりながら男が言う。そう、攻撃を受けたのに。
今の私は最大で象を10頭片手で持ち上げるだけの力を持っている。
それを踏まえた上で、この男は何かがおかしい。骨は普通におれるぐらいの力でお腹に一発。
それを受けたのに笑っている。
「それにしてもなかなかな力ですね。自動人形がこれほどの力を持っているとは、外見といい公爵家が国王軍を使っても手中に収めたがるのがわかりました。」
「私はお母さんに作られた。普通の自動人形を基準に考えないでほしい。」
「これは失礼。かの錬成師Sの作品でしたね。」
私は言いようのない不快感に襲われる。
自分の存在に対する疑問。途轍もない自己嫌悪。
何回も考えたことのあるこの感情はやはり自分で考えるより人に言われて考える方が胸にくるものが違う。
私は作品。この事実は揺るぎようのない事実。
私はお母さんの手によって生まれたもの。
最終的に自分を埋め尽くすのはいつも自分を否定するものばかり。
それがすごく悲しくて、そしてその『悲しい』もお母さんによって作られたものと言うことを考えるとやはり『悲しい』。
この言葉は決して私の心を攻撃するための言葉ではないだろう。でも、だからこそこの言葉は私に響く。
私はこんな言葉一つで揺らいでしまう存在なんだろう。
「おや、どうしました?もしかして私がここに立っていることが不思議で思考がフリーズしちゃったんですか?」
私が何の音も立てていないことに何を勘違いしたのかこの男は先程までのいかにも『できる』人のような姿勢をやめて人を見下したような態度を取り始める。
「無理もないですね〜この天才であるこの私の体は普通の人間では理解できないような特色を持っていますからね〜。」
「錬成師Sの作品と聞いて頭脳の面でも期待してたんですけど……やはり所詮は人形、この程度のことで動けなくなるとは。それとも、よほど自分の”お母さん”の力量を信じていたとかですか?」
男は次々に私の怒りの火力を上げていく。どこの世界に爆弾の処分のために可燃ゴミの要領で火をつける人がいるのか。
「そんな哀れな人形に教えてあげましょう!この私の体の秘密を!!」
そして自分の弱点をさらけ出し始める自称天才。今わかった、こいつバカだ。
「私は闇属性の適性を持っていました。ある時闇属性が覚醒し『暗黒属性適性』と名前を変えたので早速使ってみたんです。私は暗黒属性の魔導書の中から一番難しそうな魔術を選んで実際にやってみました。するとびっくり!さすが天才の私は一発で成功させてしまったんですよ!!」
男はどんどん話していく。じれったいことに先ほどの攻撃が効かなかった理由を聞かないとこいつを倒せないので、こいつが話し終わるのを待たなければいけない。
「そして私は”攻撃をされると体力が回復する”体に変質したんです!!」
「……ドM?」
思わず口走ってしまった。こいつを攻略する糸口を探さなければ……
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◇視点冒険者ギルド酒場のおっちゃん
今日は売れ行きがいい。
週末はいつもより1.5倍ほど人が増えるので、自然と収入も1.5倍になる。
さらに今日は勇者様がたがAランク冒険者”『豪傑』のサウロ”を吹き飛ばしたと言う噂が広まって、次々と客が入ってきた。
「おっちゃん、ビーラ(ビールだと思っておいてください)一つ!」
「おっちゃんこっちもだ!」
「はいよ!」
客引きもしなくていいなんて本当に今日はいい日だ。そうひとりごちていた時だった。
「大変だ!サウロがリアナちゃんを連れてこうとしてるぞ!!」
受付とこの店の間に壁はない。そのため、受付に向かって座っていた客の一人がすぐに叫んだ。
「さっきは……さっきはよくも俺に恥を書かせたな!!」
「やめてください!!」
サウロはその大きな腕で受付のデスクを叩き壊すとリアナちゃんを連れ出そうとした。
リアナちゃんはサウロの5分の1ほどの細い腕で必死に抵抗していた。
「さっさと来い!」
そんなリアナちゃんにサウロは怒鳴りつけるが、リアナちゃんは抵抗をやめない。
「仕方ねぇ、ちょっと眠ってろ!」
しびれを切らしたサウロが腕を振り上げる。誰もが我らがアイドルリアナちゃんを守るために動こうとしたその時だった。
「もう、何されても文句言える立場じゃねえからな。」
冷たい声が響いた。
声の主はリアナちゃん。
そのリアナちゃんはいつものブロンドの綺麗な長い髪を青色に変色させていた。
「う、うるせぇ!ちょっと黙ってろ!!」
「だからお前は雑魚なんだ。」
一瞬だった。
目を開けるとリアナちゃんを掴んでいた方の腕のひじがありえない方向に曲がっていると思えば、サウロは白目を向いて倒れた。
この日を境にリアナちゃんに声をかける人はいなくなった。
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