本当の歴史
『ふっハハハハハ、そうか、お前が、あなた様が継承者か。やっと見つけたぞ。』
狼はそんなことを言う。
「何言ってんだ、継承者なんてめんどくさそうなの、なった覚えないぞ。」
俺は答える。『継承者』なんて心底めんどくさそうなもの、誰が好き好んでやるんだ。
『いや、あなた様は継承者だろうよ。まず神気が見える時点で可能性はぐっと上がったんだ。その上で少なくとも10個はスキルを持ち、しまいには職業が小説家だときたもんだ。継承者以外ありえんだろ。』
「さっきから言ってる継承者ってのはなんなんだ?」
『そうだったな、我は銀狼。言語の神であり小説の神のカーム様の神獣、この神殿の守護者だ。』
「小説の、神?」
すると、銀狼は背景に溶け込むように消えていく。
「ちょ、まtーー」
『ここだ。』
と思ったら神殿の中から出てきた。
『これから少し継承者について説明させてもらう。中に入れ。』
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神殿の中は薄暗かった。まあ俺には神気(?)の光が見えるため眩しくて仕方がなかったが。銀狼を先頭に歩いているとき、不意に気になることを聞いてみた。
「そういえばさっき、お前が見えなくなったと思ったら神殿から出てきたんだが、あれはどうやったんだ?」
それが不思議だった。空間干渉の魔術はないことはないが、あんな風に溶けるように消えることはない。
俺の知らないスキルという線もあるがだとすれば俺には神気が見えるはずだ。
『あれはただ幻術を解除しただけだ。本体はずっと神殿の中にいた。』
「どうしてそんなことを?」
『それも含めて話す、入れ。』
銀狼は扉を開けて俺たちに入るように言う。
その部屋には二つの輝くものがあった。あまりにも眩しいので反射的に目を覆ってしまったが、神気が可視化されているものなので目を覆わなくても目にダメージはないことを教えてもらったので光源に目を向ける。
そこには光輝く金槌と一冊の本が置いてあった。
それらは厳重にガラスケースのようなもの中に保管されていて、目の前にある石版には文字が書いてあった。
『これらは職業の神ダンタ様と言語の神カーム様の神器だ。』
『神器』と言うのは文字のとうり神の使うものである。
実際見るのは初めてだが、この神気の量が神器ゆえだとすれば納得がいく。
『座れ、』
銀狼に言われ、俺たちは席につく。
『まずこの世界の神話についてどれぐらい知っている?』
それに答えたのは琴美だった。
「まず、創造神ラミナ様がこの世界を作りましたーーー」
少し長いのでわかりやすく要約する。
この世界は創造神ラミナの手によって作られた。だが、作る際に相当な力を使ってしまいラミナは寝たきりになってしまった。そこで急遽、次の最高神を決める戦いを始めることになった。その際、人族の発展に大きく貢献した時空の神、職業の神、命の女神、文明の神、そして言語の神の今の5新神と呼ばれるものたちが争うことになった。
そして200年に渡る戦いの末、時空の神が最高神として君臨することになった。だが、その時に言語の神だけは猛反対したらしい。時空の神が最高神になることが気に入らなかった言語の神は魔人を作り出し、人族を殲滅し自らを王としようとした。だが時空の神はいち早くそれに気づき、言語の神と魔人の軍勢を追い返した。
以来、言語の神は嫌われ者の神となり、時空の神は信仰の対象となった……
「ーーということまでは把握しています。」
『それはどこで聞いた話だ?』
「王城にあった本には全てこれと同じことが書いてあるはずです。」
『やはりか……』
それを聞いたとき、銀狼の顔が若干曇った。
『その話にはだいぶ嘘が混じっている。』
「どういうことだ?」
『今から本当の歴史を話そうーーー』
銀狼から聞いた話は先ほどとだいぶ異なるものだった。
5新神が戦うところまでは同じだったが、そこからが全く違う。
まず、明確に定義されていない『戦いのルール』について、創造神は5新神それぞれに種族を創造させ、直接手を出さない状態を200年続けて最も己の種族を発展させられたものを最高神とする、というルールでの争いだったらしい。
時空の神は人族、命の神は植物、文明の神と職業の神、言語の神は協力して魔族を作り、自らの力を分け与えてスキルのもととなるものを作ってから勝負に挑んだ。
結果は人族と魔族、その中でも言語の神が作った魔人がいい勝負だったらしい。だが、時空の神はルールを破り、時空の神自身が魔人の軍勢に攻撃をした。さらにあろうことかそれを全て言語の神の自作自演だと最高神に進言した。
それにより、言語の神は人族に非難され、この世界を追われた……
『ーーこれが真の歴史だ。』
「なんだよそれ、時空の神って本当に神様なのか?そんな小狡いことするのはどこかの悪い政治家だけだと思ってたぞ。」
「政治家でもここまではしないんじゃないかな?」
「それで、そのことと継承者の関係は?」
『そこで我が主人はこの世界を旅たち、お前らのいた世界に住み着いた。ところが主人が出て行かれて900年ほどたったある日、唐突に帰ってきたんだ。『継承者となる器を持つものを見つけた』と言ってな。』
「それが俺?」
『ああ、話が主人はその継承者に神スキルを与えたらしい。ゴッドスキルと言うのはそれぞれの神が与えなかったスキル、言ってみれば自分の宝物のようなものだ。そして、我が主人のゴッドスキルは『読解』と『執筆』。あなた様は持っていらっしゃるはずだ。』
「ああ、持っている。なぜわかった。」
『まずはゴッドスキルを持つものは神気を扱える。あなた様は神気が見えていただろう?そして次にスキルの数。秩序を守るために職業の神により一つの職業につき10個のスキルと言う縛りがあるんだよ。最後には職業が小説家だったこと。これが一番の決め手と言ってもいい。主人は小説の神だからな。』
「だからわざわざ幻術と俺たちを戦わせていたんだな。」
『さすが、もうわかったか。』
「治くん、どう言うこと?」
「どう言うことですか?」
「きっとご主人様に言われたんだろう。まず強力な幻術で神殿に近づけないようにする。すると神気を感じるものしか必然的に近づけなくなる。そしてそのあとに銀狼が戦い、スキルの数を数えるんだろう。」
『だいたいそのとうりだ。この神の加護の中ではスキルの数に縛りがなくなる。そこで戦うことで少なくとも10個ほど持っていたら継承者候補というわけだな。』
「それで、俺が継承者ということはわかった。俺は何をすればいい?お前は俺に何をさせたい?」
すると銀狼は真剣な顔でいう。
『時空の神を倒してほしい』
ご注文は神の討伐ですか……
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