☆第三話☆ 復讐
「炎破撃!」
「ま、待て! 僕だよ、オトナリだよ!?」
「サカモト! なぜオトナリ君を攻撃するんだ!?」
本田慶の声が森の中でこだまする。
ケイはMtF(♂→♀)のトランスジェンダーだった。そのことは学校では秘密だ。ただ、親友のオトナリにだけは打ち明けていた。オトナリはただ、「ま、そういうこともあるんじゃない?」とだけ言っていた。
「炎舞撃!」
オトナリからケイに標的を変え、サカモトの炎舞撃がケイに炸裂した。ケイはひとしきり苦しんだ後、その場に倒れた。ケイはオトナリが逃げようとしている姿を見て、時間稼ぎにはなれたかなと安心して死んでいった。
そう、オトナリはその様子も見届けることはなく、命からがらサカモトから逃げてきたのだ。しかし、なぜサカモトが僕を攻撃してくるのだろう。あんなに仲が良くて、生徒会でも僕を助けてくれるサカモトが--。オトナリは不思議でならなかった。
逃げた先は港の跡地だった。オトナリはそこに一艘のボートを発見した。これで逃げよう、オトナリはそう思った。"殺し合って生き残った一人しか島を出られない"というシロマの放送のことも忘れて。
ボートに乗り込み、オールで漕ごうとすると、晴れていた辺りの空に黒雲が立ち込めるようになった。いざ漕ぐと、上空から雷がオトナリの頭上に落ちてきた。そして、黒コゲになったオトナリはもう息をしていなかった。
3年B組の生徒達は、島から逃げようとしても雷に打たれ、島の中にいても殺し合いという、にっちもさっちもいかない状況にあった。そして、この状況下で順調に(?)殺し合いは進み、6日後の朝には、ユウト、ユカ、ユキ、ダイゴ、チャゲ、シマダしか生き残っていなかった。
「ユカ!!」
「ユウト君!!」
ユウト達とユカは島の中を6日間歩き回っていた。そうしたところ、お互いを見つけることができた。学校跡地から遠く離れた農園でユウトとユカは再会を喜び合った。
「ダイゴ君達も無事なのね!」
「うん。ユキの魔法でずっと眠らされているけど」
その様子を水晶玉で見ていたサトルは、憎々しげに「ユウトとユカを殺したい」とつぶやいた。
「この島に行くかい?」とシロマが聞く。
「僕の怒りは収まらねぇ。リンゴを殺された恨みを晴らしてやる!!」
「待って。このまま7日目が終わっても殺し合いをして一人にならなかったら、ユウトはどうせ死ぬから」
ユウト達は森の中にあった別荘に泊まり、7日目になった。
「殺し合いの期限は今日までだけど…」とユウトが切り出す。
「ユウト、私たちを殺せ。後で、ユカの黄泉へのキッスで生き返らせることができる」とユキ。
「そのことなんだけど…。黄泉へのキッスがなぜか使えないの! 何度も試したけどダメなの」
「えっ!? じゃあ、どうすればいいんだ!?」
困惑するユウト達。
「おそらく、シロマはユカ以外の生徒には"殺し合いをして生き残った一人しか島から出られない"という呪いをかけているが、ユカには"黄泉へのキッスが使えない"という呪いをかけているんだ。だから、私やダイゴ達が死ねばいい。そうすれば、ユウトとユカはこの島から出られる」とユキ。
「そんな訳にはいかないよ。ユキ達をみすみす死なすなんて--!」
ユウトが昂って言う。
「しかし、それしか方法がないだろう」
「くっ! でも、ギリギリまで待ってみようよ。何か策を思いつくかもしれないし」
サトルは水晶玉を覗きながら、「ユウトとユカは結局生き残るんじゃないか。僕もこの島に行く! ユウトとユカを殺してやる!」と叫んだ。
シロマは「いいでしょう。私も一緒に行こう」とサトルに同意した。
生徒達の殺し合いが生んだ感情エネルギーはたくさん吸い上げたし、あとのことはどうでも良い。ただ、サトルが死ねば、地球とブークモールの融合が解除されてしまうので、それは困る。"アースモール"となった混沌としたこの世界だからこそ、魔法軍からの逃げ場所が確保できるのだ。
そして、その晩--
「久しぶりだな、黒騎士、いやユウト!」
サトルとシロマはユウト達の前に姿を現した。
「サトルさん! どうして、こんなことを!?」
「リンゴを殺したことを忘れたのか!? 許さない!!」
「それはサトルさんに痛みを思い出してもらうためで--」
「僕の想像上の人間だったとしても、生きていたんだ! 僕の手は彼女の肌に触れた! とても柔らかで優しい肌だった!」
そう言い終わるや否や、
「雷帝の紅き咆哮!!」
雷鳴が轟き、ユウトに襲いかかる--!
「道化の臨終!」
間髪入れず、ユウトが叫ぶ。この特殊魔法により、サトルの特殊魔法は無効化された。
「サトルさん、地球とブークモールの融合を解く気はないんだね」
「僕を苦しめた地球なんて、どうなろうが構わない! 今の地球はいい気味だ」
「何億の人がサトルさんのせいで苦しんでいるんだよ!」
「ざまあみろ!」
「サトルさんは人としての心を失ったのかっ!」
「リンゴを殺しておいて偉そうに!」
「悪かった。悪かったよ。すまない。ただ、地球とブークモールの融合を解いたら、サトルさんの想像上の人物達はいずれにせよ、みんな消えるんだよ!?」
ユウトとサトルのやり取りが続く中、
「サトルさんっ! 私がリンゴさんを生き返らせるから!!」
ユカが一歩前に出て言う。
その言葉を聞き、首を前に垂れるサトル。
「シロマ、そうすることはできるか?」
サトルが問う。
「私が女神の科白の特殊魔法を解けば可能だ」
シロマが答える。
「解いてくれ。ダイゴ達生徒への女神の科白も。僕にも人の心はある。ただ、リンゴを殺したことを悔いてないユウトが許せなかっただけなんだ…」
苦しそうにサトルが言った。




