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☆第二話☆ 恋心

その時だった--!


凄まじい轟音が鳴り響き、辺り一面を爆風が駆け抜けた。校舎は破壊され、吹き飛ばされた生徒たちは散り散りになってしまった。爆風で亡くなった生徒はいなかったが、魔法で防ぎ切れずに重傷を負った生徒も何人かいた。


佐藤愛も重傷を負った生徒の一人だった。まずい--。この状態で襲われたらひとたまりもない--。


そこに、平和だった頃は佐藤と同じバンド"エンパイア"でベーシストをやっていた後藤ゆかりがやってきた。


「ゆかり!! 私だよ、佐藤だよ!!」


「水波撃!」


無情にもゆかりの水波撃が佐藤に炸裂した。


「ゆかり、嘘でしょ……」


佐藤はその場に倒れて動かなくなった。


種明かしすると、シロマが残りの一つの特殊魔法悪魔の白昼夢(デイドリーミング)を生徒の一部にかけ、遠隔操作で操れるようにしたのだ。ユウトとユカは魔力が強力であるため、この特殊魔法をかけられなかったが。


--と、そこに現れたのは佐々木篤史(ササキアツシ)。彼は佐藤のバンド"エンパイア"のファンだった。


「佐藤!? 佐藤!?」


佐藤は"愛"という自分の名前が恥ずかしいのか、苗字で皆に呼ばせていた。


アツシは混乱した。あんなに仲良く見えたエンパイアのメンバー同士が争ったのか!?


「大丈夫か、佐藤!?」


「水舞撃!」


佐藤を揺り起こそうとするアツシにゆかりの水舞撃が命中する。


「うわあっ!!」


アツシは佐藤たちの演奏を観にライブハウスに何度か足を運んでいた。行くたびにお客さんの数が増えていくことが自分のことのように嬉しかった。


高校生でライブハウスに出入りしているのは珍しいかもしれない。でも、お酒もタバコもやってないし、"健全"だろうとアツシは思っていた。そんなことよりも、クラスメイトの佐藤とゆかりの応援をしたい--。


佐藤とエンパイアのドラマーの男性は恋愛関係にあった。ドラマーは佐藤よりも年上の大学生で音楽のことも世の中のこともよく知っていた。佐藤はいろんなことを聞き、教わるうちに仲良くなっていった。


そして、実を言うと、アツシは佐藤に淡い恋心を抱いていたのだ。佐藤とドラマーの男性が恋愛関係にあるのを知りながら。僕は彼女の音楽のファンなのだからとアツシはその恋心を抑えていた。


水舞撃をくらったアツシはよろめきながら、それでも立っていた。


「どうして!? どうしてなんだよ!!

 ゆかり!! 目を覚ましてくれ!!」


「水波撃!!」


アツシの懇願もむなしく、ゆかりの水波撃がアツシに炸裂した。


アツシは佐藤の上に折り重なるように倒れた。


そして、アツシも佐藤ももう息をしていなかった。


シロマは操った生徒をわざとその生徒と仲の良い生徒に接近させ、攻撃させた。仲の良い生徒同士で攻撃し合った方が感情エネルギーがより多く吐き出されるためだ。そして、シロマはその感情エネルギーを自身の養分としていた。



そして、ユウトの前に現れたのは--!?


「ダイゴ!? シマダ!? チャゲ!?

 良かった、無事なんだね!!」


シロマの操るダイゴ、シマダ、チャゲがユウトの視界に入る。


魔法集積弾マジックザギャザリング!!」


間髪入れずチャゲとシマダによる合体魔法がユウトに襲いかかる--!


「どうしたんだ、チャゲ!? シマダ!?」


さすが、ユウト。魔法集積弾マジックザギャザリングをモロにくらってもビクともしない。


路上の戦士(ストリートファイター)!!」


今度はダイゴの特殊魔法だ。


道化の臨終(ピエロズエンド)!!」


ユウトの道化の臨終(ピエロズエンド)によって、路上の戦士(ストリートファイター)は無効化された。


「どうしたんだ、みんな!?」


ユウトは声の限り叫んだ。


「説得しようとしても無駄だ。その3人は操られている。気絶させるか、眠らせるかしかない」


そこに現れたのはユキだ。


雪原の(スノー・マジック)妖精(・ファンタジー)!」


ユキの特殊魔法により、ダイゴ達3人はその場に倒れて眠り始めた。


「私は元は惑星ババロアの人間だから、地球とブークモールが融合した後、ババロアに帰り、魔法軍として闘っていた。そこで得た情報なのだが、ルーシュの一族であるシロマが拘束を解いて逃げたようだ。人を一か所に集わめたり、遠くから操ったり、こんなことができるのはシロマくらいだ」


ユキが語っている間、ユウトはずっと不安そうな表情だった。


「そんなに心配しなくても大丈夫さ。これで生徒が何人か亡くなっても、ユカの蘇生魔法があれば全員生き返らせることができるはず」


相変わらずの凛とした表情でユキが言う。


「それもそうだな」とユウトは笑顔を作って言った。


「でも、心配にはなるぜ。クラスのみんながやっぱり大切だからな」

「そんなことを照れもせずに言えるのはユウトくらいだ」


そう言ってユキはふっと笑った。



遠くの風景を見ることのできる水晶玉でその様子を観ていたサトルは不満そうだった。


(あいつ!! 僕には痛みを知れと言っておきながら、自分は痛みを知ってないじゃないか!!)


「シロマ。ユカの蘇生魔法を使えなくしたい」

サトルがそう言うと、

「大丈夫。もう手は打ってある」

シロマはみやびやかな物腰で水晶玉に手を触れながらそう答えた。


「ユカに対しては、女神の科白(ラストボイス)を別な言葉にしたんだ。他の生徒達に対しては"島からは殺し合って生き残った一人しか出られない"というものにしたが、ユカは"特殊魔法を使えない"というふうにしたんだ」

「これからずっと特殊魔法が使えないのか?」

「ああ。私が生きている間は使えない。そして、私たちルーシュの一族は千年生きる」


その言葉を聞き、サトルはほくそ笑んだ。これでリンゴを殺された恨みを晴らせる、と。黒騎士よ、お前の大切なクラスメイトはもう生き返ることはないのだよ。

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