●第一話● 猫がしゃべった!?
第二部の始まり始まり!
舞台を地球に移し、地球に逃げ込んだ"ルーシュの一族"であるアカマとクロマを探すユウト達。
その後、悪魔と名乗る男と死闘を繰り広げる痛快ストーリー。
「えっ、こんな時間!? 寝坊していたら起こしてくれよ、母ちゃん! 行ってきます!」
慌ててパンを口にくわえて飛び出した、漫画やアニメのワンシーンかのような一日の始まりを迎えた彼の名は岩木太宗。
小学校時代はよく、「タイソウが体操する」と言われてからかわれたものだ。
今、彼は高校生。アイドルの大ファンで、日々のお小遣いはアイドルのグッズ、握手券やライブ代に消えていく。
学食代をケチってでも、アイドルに金を注ぐのだから、筋金入りのファンなのだ。
「タイソー、また時間ギリギリだな」
「さすがタイソー。またどうせ深夜までアイドルのYouTubeを観ていたんだろ」
教室に着いたタイソーの周りにクラスメイトがワサワサと集まってくる。
教室を飛び交う明るい声の中、窓際の席のタイソーは、何気なしに窓の外をのぞいてみた。
すると、血まみれの猫がヨロヨロと木々の緑の中を歩いているのが見えた。
(助けなきゃ…!)
担任教師が扉を開けて入ってくるのとすれ違いに、タイソーは教室の外に飛び出した。
「おい! 岩木、どこへ行く!」
教師が叱る。
「ちょっと急用ができて!」
校舎の外へ出て、猫が見えた場所へ行く。
しばらく走ると、先ほどの猫がいた…!
ん? 尻尾が三本あるぞ。突然変異か何かか? それに、身体が真っ赤な毛で覆われている。タイソーはその身体を見て血まみれと勘違いしたのだ。しかし、胴に傷があるのも事実で、出血している。
「猫ちゃん、こっちへおいで。助けてあげるよ」
タイソーが優しく小声で話しかける。
「逃げるのも、もう限界だ…。ニンゲンにかくまってもらうか」
「ね、猫がしゃべった!?」
タイソーは仰天して腰を抜かす。
「私の名前は赤魔。私の魔法を使わせてやる代わりに、お前の家で休ませてくれ」
「えっ!?えっ!?」
「お前の願いはなんだ、言ってみろ」
お、俺は夢でも見ているのか? タイソーは小刻みに震え出した。
「早く言ってみろ。時間がない」
「そ、それはアイドルの小野美雨ちゃんと付き合うことだけどっ!?」
「よし、叶えてやる。明日の土曜の朝、そいつがお前の家にやってくる」
「えっ!?えっ!?」
「うろたえてみっともないぞ。早く私をお前の家に連れて行け」
「わ、分かった!」
(この地球人、私を見つけて助けに来た優しさがあるし、この眼を見ていると、きっと熱さもあるはずだ。私の力も保てるだろう。)
アカマは自身の傷の苦痛で顔をしかめながらも、そう思って少しの間、微笑していた。
☆
一方、タイソーの学校から20kmほど離れたある場所で他人の苦しみを無上の喜びとする男がいた。
彼はアイドルのブログに辛辣なコメントを書き込むことを趣味にしていた。
あるアイドルにツイッター上で交通事故の動画を送りつけ、お前もこうなるぞと脅すことを繰り返し、鬱病に追いやったこともあった。
そして、次のターゲットに定めたのが、アイドル"小野美雨"である。
タイソーがこのアイドルを好きなことは、彼は知るよしもない。
タイソーがアカマと出会った日の夜、その男は勤務先から自宅に帰って私服に着替えると、早速パソコンを開き、小野美雨のブログにアクセスした。
ん? 誰かの気配を感じる。
「やあ、僕の名前は黒魔。あなたに僕の魔法を使わせる代わりに、あなたのそばにいさせてほしいんだ」
「お前は何だ…? 三本尻尾がある黒猫がしゃべっている…!?」
「まあ、ものは試しにあなたの願いを言ってみて」
「そうだな。このクソムカつくアイドルにできるだけ酷い苦痛を味わせてやりたい」
そう言って、この男はパソコンの画面の方を見た。それを見てクロマは三本の尻尾を揺らしながらほくそ笑んだ。
☆
話はまた、この日の朝にさかのぼる。
「おはよう、ユウト君」
「ああ、おはよう、ユカ」
惑星ババロアの件以来、付き合い始めたユウトとユカ。ユウト達は高校2年生から3年生になっていた。
しかし、クラスは三年間持ち上がり式なので、二人は3年生でも同じクラスだ。
それぞれの自宅の中間地点で落ち合って、今日も仲良く二人そろっての登校だ。
「今日からOC【オーラルコミュニケーション。英会話授業のこと】の先生が代わるのよね」
「えっ、そうなの?」
「もう、またユウト君は授業中に寝ていたんでしょ」
「ハハハ」
「一昨日のOCの時、ジョン先生が僕はイギリスに帰ります、明後日から新しい先生です、って言ってたよ」
二人が学校に着き、教室に入ると、ダイゴとシマダとチャゲがやってきて、ダイゴが「ヒュー、ヒュー、今日もお熱いねぇ」と定番の言葉で茶化す。
「美女と野獣だな。野獣ユウトは肉だけ食ってろ」
シマダがいつものように冗談を言うが、ユウトは「俺は肉食じゃなく雑食だ」とよく分からない冗談で返す。
しばらくすると、担任教師が教室に入ってきた。担任は女子生徒を連れていた。そして、その女子生徒、あれは……!
「転校生を紹介する。加藤雪だ。加藤はみんなも知ってのとおり、2年B組までみんなと一緒だった生徒だ。親御さんの転勤でまた埼玉に戻り、3年B組でも一緒に授業を受けることになった」
「加藤雪です。またよろしくお願いします」
クールな性格の美少女で、氷の女王と呼ばれるユキじゃないか…! 元から惑星ババロアの人間であり、最後の戦闘以来見かけていないが、それがどうしてここに!?
「ユキじゃん! 嬉しいけど、なんで!?」
モエコが席を飛び上がり、喚声を上げる。
「大曲、席に座りなさい」と担任が言う。
「詳しいことは後で説明するわ」とユキ。
その後、もっと驚くべきことが起こった。一時限目の数学の授業が普通に終わり、二時限のOCの授業の時、教室の扉を引いて現れたのは…!?
「シャノさん!?」
教室が一斉にざわつく。
そう、教室に現れたのは、惑星ババロアにおいて、魔法軍に所属することになったユウト達の指導教官のシャノだったのだ。




