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99話

 ええと……。すげえ。

 何がすげえって……これ社長が書いたっていうのもすげえし、その為に恋愛小説あいつが読んだってのもすげえし……これ鈴本がやるってのもすげえし……。

 ええと……ええと……。

「……なあ、舞戸」

「……ん?」

「お前はこのセリフを真顔で言えるか?」

「無理」

 最初っからハードル高すぎるんだよ!何が『月が綺麗ですね』だよ!流石社長だぜ!

 絶対に社長はコレ、真顔で書いてるからなっ!

「俺も言える気がしない。絶対途中で吐く」

 だよねえ。

「大体アリアーヌさんの反応に応じてこっちもセリフ変えるっていうのが難しすぎる」

 そうだね。返答の可能性は無限大だもんね。一応社長は刈谷とか加鳥とかから得た情報を元にアリアーヌさんの性格を考えて、そこから最も合理的な解を導いてる、みたいなかんじらしいんだけど、それにしてもなあ……。

「舞戸、お前アリアーヌさん役やれ。返ってきたことに対して返す練習がしたい」

 ああ、成程ね。そういう練習は一人じゃできないもんね。私のポンコツ頭じゃあアリアーヌさんらしい返答ができないかもしれないけども、まあ臨機応変の練習だと思えばそれもいいのか。

「はいはい。じゃあどうぞ。あ、黒板が礼拝堂の正面ね」

 立って少し距離を取って後を向く。

 一呼吸間をおいて、足音。

 この時点でアリアーヌさんが気づかない訳は無いから、振り返る。

「こんばんは。月が綺麗ですね」

 振り返ればそこにドヤ顔でジョジョ立ちしてる鈴本。

 吹いた。

 そして息吸った時に唾吸い込んだらしくて、噎せた。 

「……すまん」

 謝るぐらいなら最初から笑わせに来るなよ!




 一頻りげほげほやってから何とかTAKE2。

「こんばんは。月が綺麗ですね」

 振り返ると、今度は普通に立ってる鈴本が居た。

「あ、あなたは魔王軍の!」

 多分懺悔しにくる位だから、アリアーヌさんは自分の職務を全うする、最低でもそのポーズだけは取るはず。つまり、ここで絶対に敵対心を見せてくるんだと思うんだ。

「いいえ。今は……ただあなたを想う、1人の男として参りました」

 お、早速アドリブ入った!こいつ、いざとなったら割とそういう能力高いんだよなあ。

「じょ、冗談はやめてください!」

 ここでアリアーヌさんなら後退するな、きっと。

「あなたに初めて会った時に正体を偽ったことは謝ります。でも俺の今の気持ちは嘘じゃない!」

 お、シナリオに戻った。

「俺は……俺は神殿を……いや、あなたを守るために来ました」

 そしてまっすぐ見つめてくる鈴本。

 いかん、また笑いがこみ上げてきそう!

「……守る?」

 訝しげな表情を取ることで笑いを抑える。真面目に練習しようとしている鈴本に対して失礼だからなあ。……あれ、ここ、社長の予想だと絶句するところなんだっけ?

「魔王は早ければ明日にでも神殿に攻め込むつもりです。そして、そうなったら神殿の、罪の無い、多くの命が失われるでしょう」

「そ、そんな!」

「俺は神殿への侵攻をやめるよう魔王に掛け合いましたが魔王は聞く耳を持たず……」

「あ、ちょっとタンマ」

「……何だ」

 いきなり止めたのでギャップが凄い。いきなり素に戻られるとまた腹筋に負荷がかかるんだけどもそれはこらえて。

「ここでさあ、君が怪我してたらさ、アリアーヌさんも君心配ルートに入りやすいんじゃない?」

「……ああ、成程」

 分かりやすく脚に包帯巻いておくとか。……あ、いかん。『くっ、俺の右脚が疼く!』って頭の中で再生された。いかんいかん。

「夕方社長に聞いてみよっか」

「了解。じゃあ再開。……せめて大司祭が出てきてくれるのなら、一騎打ちに持ち込むように魔王に掛け合えるのですが」

 おおっ、いきなり戻りやがって。ええと、ええと。

「それはなりません!大司祭様1人で魔王と戦うなんて!」

「ええ。ですから、対策を考えたいのです。魔王は様々な技を使いますが、中でも強力なのは状態異常を引き起こす技でしょう。大司祭はそれに対策する術を持っていますか?」

 お、早速情報ターンに入った?じゃあここから後は多分アリアーヌさんが『誘惑』に完全にかかった後だと思われるので大丈夫だろう、という事で。

「はい、カット。どうする?ここから先も練習しておく?それともその前もっかいやる?」

「……大事なのはここから先じゃないのか?」

「いや、ここより前でアリアーヌさん完堕ちさせとければもうここより後何言っても大丈夫だろうから」

 一応、既に一回『誘惑』にかかった後なはずだから、多少情報収集ターンがお粗末でも大丈夫なはずだ。

「そうか、じゃあもう一回」




 そして、何回か練習している間にそれは起こった。

「ひ、人を呼びますよ!」

「信じてください、俺の気持ちは……あ」

 数歩近づいてきて、そこで鈴本はぴしり、と固まった。

「……なあ、舞戸」

「何さ」

「俺、前、お前の肋骨へし折ったことあったよな」

 あったねえ。忘れてないよ。大丈夫だよ。うん。その結果が君の現在の着物だからね。

「……力加減が分からん。怖い」

 お、おお!?こ、怖い、とな!?……こいつにしては珍しい表現だな。

「かといって私で練習するのは嫌でしょ?」

「……お前、人の肋骨折った時の感覚って、知らないだろ。凄く、嫌な感触だぞ?……っていうのは置いておいても、これ、やらないと駄目か?」

 私の肋骨は幾らでも治るからいいんだけど、そういえばこいつ触るのも触られるのも嫌いだもんね。うん。

「社長に相談だね」

「だな」

 成程、こいつら、いかにイケメン補正が掛かっていてもどうしようもないことも有ったんだなあ。強すぎるのも問題だね、どうも。




 という事で、この後何回か練習したり、何回か腹筋が崩壊したりしながら夕方を迎えた。

『テステス、こちら『ミナモ』!皆さん報告をどうぞ!』

「はいこちら『メイド長』。侍殿の本日の演技の練習をしておりました。腹筋が痛いです。で、『サクラ』に質問。ターゲットに侍殿の身を案じてもらうために侍殿に怪我してるふりしてもらおうと思うんだけど、するとしたらどこがいいかね?」

『顔ですかね。目立つ方がいいですから。包帯でも巻いておいてください』

 お、おお……。容赦ないな、社長。

「ええと、それからだね、我らが侍殿、力加減が分からなくて『抱きしめる』ってのができないみたいなんだけど」

 言うと、暫く社長も無言だった。考えているらしい。

『しょうがないので抱きしめようとする自分を理性で制御してるふりでもしておいてください。その位の演技力はあるでしょう』

「……了解」

 流石社長!代替案が割と説得力あるね!

『礼拝堂近辺の仕込みは完璧です。あとは侍殿の活躍に期待します。それから、終了に関してですが』

 あ、そういえばあのシナリオ、開始はあったのに終了は無かったね。

『『メイド長』がステルス状態で礼拝堂内にて待機していてください。それで、そろそろ潮時だと思ったら、さくらを操作して俺に合図をお願いします。そうしたら外で俺達が少し騒がしくしますので、「誰か来る!」ということで侍殿は逃げてください。逃げ方は勿論『転移』です』

「風邪ひきそう」

『『温冷耐性』がある以上多分そこまででは無いと思います。もしひいたら薬を処方します』

 流石社長。酷い。

『では他に報告等ある人は居ますか?』

 社長が言ってから特に誰も何も報告しないといけないような事は無かったようなので、これで終了。

『では時間になったらまた。健闘を祈ります』


 さて。……風邪ひいた時用に、もうお粥でも作っとくかな……。




 針生をタクシーして連れて帰って来て、晩御飯にあったかいシチューを食べて、針生と一緒に鈴本の頭にああでもないこうでもないしながら包帯巻いてみたりして、そして夜がやってきました。

 21時35分になった辺りで3人とも神殿そばの丘まで『転移』。

「さて。じゃあ俺行ってくるから」

 私が火魔法で作った影の中に針生が沈んで礼拝堂へ向かった。

 因みにこの時点で私は全裸ステルス発動済みであります。装備は『転移』のバレッタと元凶とMP回復用のミント抽出液以外全部実験室に置いてきた。さて、しかしここで1つ面白いことが発覚した。元凶の事である。元凶って、何故か私の一部扱いになるらしく、ステルスモードになったら透明になってくれるのだ。腕輪ごと。……なんかあるのかな。よく分からんけど、これはちょっと重要な気がする。

 まあいいや。とりあえず他の装備は置いてきちゃったっていう事の方が重要だ。よって現在、寒い。何故か寒い。何故だ。私は確かに『温冷耐性』持ってたよね?

「舞戸、寒くないか?」

「寒い」

「……お前の『温冷耐性』は仕事してるのか?」

「してないんだよおおおおお!なんでだよ!」

 くっそ!お前はきっちり新しく仕立てた『誘惑』の羽織まで着て暖かそうだよなあ!

「知るか。とりあえずこれ羽織ってろ」

 と思ってたら、羽織脱いで貸してくれた。

「……どうも」

 他人の体温が染みた服って温いね。


 そのまま5分ちょっと待機してたら、やっとこさ針生からOKが出たんで、みなもの視界を借りてから『転移』。

 礼拝堂の中は月光がステンドグラス越しに差し込んで凄く綺麗だ。成程、社長はこの効果も狙ったのね。

「舞戸さん、じゃあ俺もう丘に戻ってるから。頑張って」

 針生が呟いてまた居なくなった。さて。後はここで気配を殺してじっとしているのが私の仕事だね。

 鈴本に羽織を返して礼拝堂の一番後ろの席の上に縮こまっておく。布張りの長椅子だから床よりはよっぽど暖かい。

「舞戸」

「もう黙ってた方がいい」

 鈴本が何か言いかけたけども小声で注意すると「そうだな」と口の動きだけで返して、それきりドアの横の柱の陰になる位置で壁に凭れて目を瞑っていた。

 私も手の中に握りこんで隠したミント抽出液の小瓶に意識を集中させることで寒さから意識を遠ざけながらじっとアリアーヌさんを待った。




 暫くして、ぎい、と遠慮がちな扉の開く音と共に、美女が現れた。アレがアリアーヌさんかあ。相当な美人さんだなあ。

 アリアーヌさんは祭壇の前まで進み、そこで膝をつくと、懺悔を始めた。

「私は許されない恋をしてしまいました……。何度懺悔してもこの心を断ち切ることができないのです。忘れることができなくて……」

 以下こんな感じのが延々と続いたのでそこは省略。

 そして、鈴本は暫くしてから意を決したように一歩、進み出た。

 からり、と下駄の歯が石の床に触れる音にアリアーヌさんが振り返ると、その顔は一瞬で驚愕に彩られた。

「あ、あなたは!」

 そして、鈴本は……多分、その顔面を有効利用しながら、言った。

「こんばんは」

 あれえっ!?お前、漱石はどうしたよ!まさか忘れたとかじゃあないだろーなっ!

 早速台本から外れた事やってる鈴本にこっちとしてはヒヤヒヤもんである。やめてよー、物理的にも今ひやひやしてるんだからさ!

 アリアーヌさんはびっくりしちゃってか、喋らない。

「驚かせてしまいましたか」

「だ、だって、あなたは、魔王軍の……!」

 そう言いつつ、特に逃げる様子も無いあたり、もう半分は転がってるんだろうなあ、アリアーヌさん。

「突然で申し訳ないが、時間が無い。聞いてください。アリアーヌさん。俺は神殿を守るためにここに来ました」

 今までの柔らかい雰囲気を真剣なものへと変えて鈴本が言葉を重ねると、前羽ヶ崎君の様子を見てた時にも感じた違和感。多分今、『誘惑』が発動した。早いな!

 アリアーヌさんの目も、どこか熱っぽく潤んだようなものになっている。す、すげえ……。

「神殿を……?」

「魔王はこの神殿に侵攻するつもりです。早ければ、きっと明日にでも」

「!なんてこと……」

「そうすればこの神殿の、多くの罪のない命が失われることになる。俺はそれに耐えられない!」

「だって、あなたも、あなたも魔王軍なのに」

 ここでそういうセリフ挟んでくるとは想定してない。しかし鈴本、慌てない。

「俺は……歪んだ世界に1人立ち向かう魔王の姿に憧れたんです。ふとした時に垣間見える魔王の見ている世界を、もっと見てみたいと思った。それは凄く真っ直ぐで、鋭くて……尊敬に、値するものでした。……でも、それとこれとは全く無関係です。人を無意味に殺すことに、俺は意義を見出せません」

 ……すげえ。ホントにすげえ。こいつのアドリブ力を見習いたい。

「……あなたは、魔王とは違うのですね」

 そしてアリアーヌさん、軟化。これはいける!あと一押しっ!

「……ついさっき、魔王に掛け合ってきました。せめて、大体的に神殿と衝突するのではなく、大司祭との一騎打ちで事を収めてくれるように、と。……しかし魔王は聞く耳を持たず、掛け合った俺はこの様です」

 鈴本が前髪を掻き上げて額から右目辺りまでを覆う包帯を見せるようにすると、アリアーヌさんは口元を覆った。

「なんて酷い……」

 ごめんなさい、怪我はしてないです。掛け合った魔王に包帯ぐりぐり巻きの刑にに処されただけなんです。

「このままだと明日、神殿は落ちるでしょう。……とてもじゃないが、魔王の前には一万の傭兵も無意味でしょうから」

「そんな!どうしたら、私はどうしたらいいのですか!どうしたら神殿を救えますか!?」

 ……ここが社長の巧い所兼怖い所なんだけど。……背徳心を超えて何かを人にさせる時、それの言い訳、というか、大義があれば、その人は自分に言い訳できるから、信念とか規則とかに背いてくれやすい。

 今回は『鈴本に恋をしている』を、『神殿を守りたい』にすり替えられるように逃げ道を作ってあるんだよね。

 そして現在アリアーヌさんはその方向へ進んでいる。社長の能力の恐ろしさが見えるよ、まったく。

 ……それにしても、鈴本は色々セリフ飛ばしてる気がする。あれで案外テンパってるのかもしれないね。

 鈴本はあれで案外、小心者な所あるし。……それが外面に出ないのは本当に称賛に値すると思うよ。

「アリアーヌさんは神殿に居る人たちを連れて逃げてください。明日の朝出ればきっと間に合う。……俺は魔王を止めます。時間を稼ぐために命を賭けます。あなた達が逃げ終えるまでは、何としても神殿に侵攻させません。しかし……説得する材料が足りなすぎる。……せめて、大司祭が出てきてくれれば……いや、仕方のない事ですね」

「大司祭様なら!大司祭様なら……明日の朝にはこちらへお戻りになります!」

 お、これはいいかんじだ。

「それは、魔王を迎え討つために?」

「はい。こちらから文を出して、それが今日の夕方ごろ、返事が返ってきたのです。『明日の朝には戻れる』と」

「……大司祭は魔王との一騎打ちに応じてくれるでしょうか」

「分かりません……。大司祭様は騎士団と傭兵たちを使い捨てるおつもりなのかもしれない」

 そいつぁークズ以下の匂いがぷんぷんするなあ。

「魔王から一騎打ちの要請があれば?」

「そうなれば、流石に応じられると思います」

 ……まあ、この時点でもしそういう事やるとしたら、多分、一騎打ちしに出てきた魔王に対して矢を一気に射掛ける、とかするかもね、その人。

「そうですか。なら、あとは俺の腕次第、という事ですか。……アリアーヌさん。アリアーヌさんは魔王の能力についてどの程度ご存知ですか?」

「え?ま、魔王の?……分かりません」

「魔王は人の精神に強く働き掛ける技を使うのです。大司祭はそれに抵抗する力がありますか?」

「それなら大丈夫です。大司祭様と騎士団長と……私には、精神を強く保つアミュレットがあるのです」

 え、ええええええええ!?

 じゃ、じゃあ、アリアーヌさん、司祭長なのっ!?

 アリアーヌさんは胸元から鎖を引き出すと、その先にぶら下がるアミュレットらしいものを見せた。ここからだとちょっと良く見えないんだけども……。

「……成程、ならば、魔王の主な攻撃は封じられるでしょう。しかし、大司祭は恐らく魔法を使うのでしょうね?」

「はい、光魔法をお使いになります。大司祭様にしか使えないという古の魔法も」

「そうですか、光の魔法を。……ならば大丈夫でしょう。魔王はあらゆる魔法が効きませんが、それでも光魔法にはあまり強くない。できれば物理的な攻撃手段が望ましいのですが……」

「それは厳しいかもしれません……大司祭様にも剣の心得はあるのですが……騎士に勝るかというと……」

 ふむ、たしなむ程度、って事かな。それでも私には脅威だけどな!

「そうですか……。では、光魔法を増幅させるような『失われた恩恵』が付いた装備をすることをお勧めします」

 うん。光魔法の増幅、おすすめ。超おすすめ。

 増幅されても大丈夫。そう、『魔法無効』ならね。


 それからも暫く大司祭の情報を得て、そろそろ潮時かな、という雰囲気に。

「ところで……あの、これから魔王に……?」

「はい。大司祭との一騎打ちを勧めます。それが叶わなくても、せめて時間稼ぎ位にはなってみせるつもりです」

「……魔王はあなたにも精神攻撃を?」

 ……お?これは……?

「はい。……精一杯抵抗はしてみますが、今度こそ耐えきれるかどうか……」

 鈴本は包帯を抑えるような仕草をしてみせる。

「でしたら、これをお持ちください」

 なんと、アリアーヌさんはアミュレットを首から外して鈴本に渡した。

 よし、そろそろ頃合いでしょう。

 メイドさん人形を……あれ、なんか遠い。えっと……さくら、さくら、と……あ、いた。

 さくらを動かして社長とつんつんつついてから親指を立てて見せると、社長は加鳥と動き出した。

 そとからかつ、かつ、という足音と話し声。

「誰か来る!アリアーヌさん、俺はもう行きます。くれぐれも、お気をつけて」

「はい、あなたも……っ!」

 よし、MP回復してから、鈴本を巻き込んで『転移』。

 これにてミッションコンプリート。お疲れ様でした!




 という事で、針生との合流の為に神殿そばの丘まで移動。

 ……あれ、体が変だ。重くて硬くて、冷たい。

 それでももう一回『転移』しないと帰れないので、鈴本と針生を巻き込んで、また『転移』した、つもりだったんだけど……発動しない。

「……あれ、舞戸さん、居るよね?」

「あー……ええと、針生、MP回復するの、何か持ってる?」

「え、あ、うん。使う?はい」

 私が見えない針生が虚空に向けてミント抽出液の瓶を差し出してくれたので、それを受け取って飲む。

 よし、これでいけるはずだ。

「じゃ、いくよ。『転移』」

 ……発動、しない。

「ま、舞戸、さん?」

「……お前まさか、発動しない、とか言わないよな?」

「……言う」

 ……。さて、穴があったら埋まりたい気分だ。どうしようか。


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