第1話 パーティーからの追放
「エルナ、今日限りでこのパーティーを出て行ってもらう」
最難関ダンジョン『竜の滝壺』の入口前。
リーダーのガロンは、鼻で笑いながら私――エルナに追放を言い渡しました。
「えっ、理由をお聞きしても?」
「理由?決まってるだろうが。お前の鑑定スキルは『ステータスの数値』しか見れん無能だからだよ! それに見てみろ、今日から入った新人鑑定士のミリアちゃんを……。可愛い上に、アイテムの希少度まで一目で判別できんだぞ?」
「エルナさ〜ん、今までお疲れ様でしたぁ」
ガロンの隣で、ミリアがキャピキャピと手を振る。
後ろにいる仲間たちも「今まで足引っ張りやがって」「数値を見るだけの歩く計測器はいらねぇんだよ」とクスクス笑ってます。
(……はあ。またこれですか)
今まで散々「歩く計測器」、と言われてた私はため息を吐きました。
私の鑑定能力は、『数値』しか表示されない……と彼らは根本的な勘違いをしています。
私の能力の真価は、ステータス数値の測定などではありません。
世界のあらゆる概念を読み解き、書き換える【概念の鑑定・改変】なのです。
このパーティーが今まで無事だった理由……
それは、ガロン達の「危険」や「致命傷」「状態異常」という概念を、私が裏で『無効』に書き換えてあげていたから。
毒のトラップを踏んで「奇跡的に軽傷」で済んでいたのも……魔物のブレスを食らってなぜ「無事だった」のか。
すべて私が裏で『死』の概念を消していたからなのです。
「……わかりました。そこまでおっしゃるなら、本日限りで脱退させていただきます」
「ハッ、強がりやがって! 後から泣いて戻してくれと言っても絶対に許さねぇからな!」
私は平然と頷くと、すれ違いざま静かに呟きました。
『概念改変』発動――
『ガロン、およびパーティーメンバー全員から、私が付与していた【安全】と【幸運】の概念をすべて解除・消去いたします』
パチンっ……と小さな音が弾けました。
これで彼らは、明日から「自分たちの本来の能力」と「ダンジョンの本当の恐ろしさ」身をもって知ることになります。
「皆さま、今までお世話になりました……お元気で」
背を向けた私に、ガロン達の品のない笑い声が追いかけてきますが、私は一度も振り返りませんでした−−




