【No.83】最初からカサカサ カワラハハコ
摘んだ花を保存したいと思った時、一番簡単な方法は押し花ですね。紙に挟んで素早く乾燥させれば、色も鮮やかなまま残ります。ただぺちゃんこになるのがちょっと、というのであれば、シリカゲルなんかの乾燥材に埋め込めば、立体的なドライフラワーの出来上がり。
でも、中には最初からドライフラワーみたいなカサカサの花を咲かせる植物があります。
カワラハハコ(キク科)
Anaphalis margaritacea subsp. yedoensis
カワラハハコです。河川中流部の、礫の間に砂が溜まったような場所に生えます。葉は細長くて白い毛が生えています。茎は分岐して全体に丸い形になり、高さ30~50cmくらい。大きな株を遠くからみると、灰色のコキアみたいな感じ。これに上の写真のような、白い花が沢山咲きます。開花期は8~10月頃。ひとつの花(というか花序ですが)の大きさは1cmないくらい。
<カワラハハコの花>
この花の白い花びらみたいな部分、実は花弁でも舌状花でもありません。キク科特有の「総苞片」と呼ばれるもので、そうですね‥‥アザミの花の下にあるイガイガの部分、と言えばわかりやすいでしょうか。あの部分が白い花びら状になったものが、このカワラハハコの花だと思ってください。ちなみに本当の花は、真ん中の黄色い部分です。
山地の草原には、これの近縁種で、葉がやや幅広く、毛が生えていないヤマハハコという種が生えています。
ヤマハハコ(キク科)
Anaphalis margaritacea subsp. margaritacea
まあ、花はほぼ一緒ですけどね。
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それにしても、なんでカサカサの花を咲かせるんでしょう?
乾燥した所に生えるから?そうかも知れません。でも、もっと乾燥した所に生えるサボテンなんかは、みずみずしい花を咲かせますから、乾燥はあんまり関係なさそうです。
そもそも、硬くてイガイガの総苞片を花びら状にしたからで、カサカサなのはたまたま?うーん、それはちょっとありかも知れません。
いろいろ考えたんですが、ちょっと今回は結論が出ませんでした。
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カワラハハコの写真は、黒部川の河原で撮影したものです。ここは有名な急流河川なので、中~下流部にカワラハハコの生育に適した、間に砂が詰まった礫原が広くみられます。カワラハハコの個体数も多く、橋の上から見ると、「灰色のコキア」みたいなものが沢山生えているのが確認できます。
まるで賽の河原に咲く花のような、ちょっと寂しげな趣の花ですが、近くで見ると、なかなか可愛らしいものです。




