【No.112】栽培種の起源3 渓流に生きる サツキ
サツキ(ツツジ科)
Rhododendron indicum
5月になりました。
5月は、皐月、皐月に咲く花といえば、やっぱサツキでしょう。朱色や赤紫色、白、そしてそれらが絞り模様や覆輪になった豪華な花を咲かせる人気の花木。庭木や鉢植えで楽しまれるほか、公園や道路の植栽にも良く使われます。栽培されるツツジには他にもクルメツツジやヒラドツツジなどがありますが、サツキは、これらの栽培ツツジ類のなかでも、ちょっと華やかな独特の雰囲気があります。
分布は関東以西の本州、九州、屋久島などの河川の渓流域。冒頭の写真は大井川上流で撮影した野生のものです。野生のサツキは、渓流の岩の上などにしがみつくようにして生えます。そこは増水時には水没するような場所。そんな環境でも流されないように、葉は細く、水の抵抗を受けにくい形をしています。
花は、色といい形といい、以前にご紹介したヤマツツジに良く似ています。また、年二回、春と夏に葉が出て、夏に出た葉の半分ほどが落葉する「半落葉性」という少し変わった性質も共通です。実際、系統分類でもヤマツツジとサツキは近縁であるとされています。
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ところで、野生のサツキの花色は朱色。栽培品種にみられるような赤紫系の花は咲きません。この赤紫系の色の花を咲かせる遺伝子は、実は近縁の別種に由来するものです。それは、マルバサツキ。
マルバサツキ(ツツジ科)
Rhododendron eriocarpum
マルバサツキは、九州南部、屋久島、トカラ列島の海岸の岩場などに生えます。サツキに比べると分布域は限られています。その名の通り、葉はやや丸く、サツキほどは尖っていません。このマルバサツキがサツキに交配されることで、朱色〜紅紫色の豊富な花色の変化が得られたのです。
でも、これは日本の古典園芸植物としては割と珍しい例です。桜草や撫子がそうですが、日本の園芸植物の品種改良は、普通は他種間の交配を良しとせず、1種類の中での変異を追求するような純血主義的な所があります。花菖蒲も、最近では外来のキショウブが交配されて黄色い花菖蒲が出来てきましたが、それまではノハナショウブ1種のみの種内交配で作られた純血主義的な世界でした。
ところが、何故かサツキの品種改良ではマルバサツキの血を入れて、多様な花色を求めることにしたようです。結果、現在のような多様で華やかなサツキの世界が出来上がったのですから、その判断は成功だったと言って良いでしょう。
道路や公園の植え込みに使われるサツキは、その多くが「大盃」と呼ばれる普及品種。野生のサツキの花色だけを紅紫色に置き換えたような姿をしています。刈り込みに強く丈夫なツツジなのですが、他のツツジ類と同じく水切れにはやや弱く、雨不足が続くと突然バッサリと大きく枯れ込むことがあります。そこだけは気をつけたいものです。
以上、皐月に咲くツツジ、サツキの話でした。




