星明、絶叫する
『超・・・快感~』
家宝にしているファッション雑誌の表紙を飾るモデルの実物、
僕が星のビーナスと憧れる星明と体を重ねているんだから、
興奮するなって言う方が無理でしょ。
制服の上からとはいえ、生まれて初めて女の子の胸に
触ってしまった。柔らかくて弾力があって、形の良さがわかる。
これが本物かとしみじみ感動してしまう。
ファーストキッスは龍美に奪われたが、これこそキス。
優しくて甘い。頭の芯がしびれて、胸が幸せ一杯になる。
星明の艶やかで長い黒髪の匂いだけでなく、全身から
漂うすごく良い匂いに、女性らしい柔らかい感触と体温に、
僕は心の底から、この世に生まれて来て良かったと、神様、
仏様、源義光様に感謝した。これぞ、眠れる森の美女か。
「ひええええええええええええええええええ~」
時間にしたら、ほんの13秒ほどで気持ちの良い
気絶から目を覚ました星明は、ガチで悲鳴をあげた。
絶叫と言ってもいいだろう。
無理もない。目を覚ましたら、両胸を握られ、おまけに
キッスまでされているんだから、誰でもそうなるわな。
下半身が接触していなかったのが、不幸中の幸いだ。
確実に、速攻で男とバレたね。
星明は、慌てて立ち上がると、女の子座りをした僕を
涙ぐんだ瞳でキッと睨む。上から目線なんだけど、怒りと
羞恥心で困惑した表情が、たまらなく愛おしくなる。
「この助べえ野郎。」
女の子座りをしている僕の延髄に蹴りを放ってきたのは、
星明ではなく、龍美だった。
「何するのよ。」
咄嗟に、前回り受け身をしてかわしつつ、龍美から
離れて、立った。何で、僕がこんな目にあうのか、全く
分からない。僕が勝ったんだから、感謝とねぎらいの言葉が
あっていいはずなのに、いきなり延髄蹴りって酷すぎる。
龍美の前世は、きっと鬼に違いない。
僕と龍美は、ガチでガンを飛ばし合った。
その間にかろうじて落ち着きを取り戻した星明は、武の元に
歩み寄り、可哀そうなくらい肩を落として尋ねた。
「私、どれくらい意識を無くしていたのかしら。」
「13秒ほどかな。」
武とて、武道家の端くれ、質問の意味が理解できる。
「そう、それだけあったら、余裕で首を狩られるわね。
私の負けね。かたき討ちをお願いできるかしら。」
「それは、ちょっと・・・・、女を斬る刀を持っていない。」
「武なら、きっとそう言うと思った。」
星明がまだガンを飛ばし合っている僕たちの方に振り返り、
「悔しいけど、私たちの負・・・・」と、言おうとしたところで、
とんでもない邪魔が入ったのである。




