8話「妹は至高です」
ラミアの言葉の意味に気づき、タウロさんはハッとした。
タウロ「なっ…ち、違っ!こ、これは部屋にあったんだ。」
ラミア「乳揺らすな。」
タウロ「な、なんか怒ってないか?」
仕方なく仲裁に入ってみる。
俺「ラミアさんも立派だよ。」
ラミア「…それって慰め?」
俺「そんなことないよー。」
実際、大きい方だと思う。
ただ、比較対象が悪いのだ。
リンゴとメロンくらいの差があるのだ。仕方が無いだろう。
ヴァンプ「こんなところで変な話をするなよ(ムシャムシャ)」
オオカミ「お前は食いながら話すな。」
話に入ってきたのは、銀縁の眼鏡をかけたくせのある栗色の髪の少年だった。
俺「オオカミくんだっけ?久しぶり。」
オオカミ「あぁ、こいつが世話になってるみたいだな。」
顎でヴァンプの方向を指す。
俺「いや、俺の方が世話になってるよ。今も代食してもらってるし。」
しかし、困った。
何も食えない。
オオカミ「…なあ。確かあっちに野ウサギのシチューがあったぞ。」
俺「察してくれてありがとう。でも、今夜も自分でなんとかするよ。」
妹が来るまでになんとかしないと…
…妹?
俺「あっ。」
タウロ「どうしたんだ?」
俺「あなたこそ蛇を身体に巻きつけて、どうしたんですか。星座にでもなるつもりですか。」
ヴァンプ「なるほど、上手いな。」
タウロ「いやこれはだな。巻きつけてるというより、締められてるんだ…じゃなくて、俺くんはどうした?」
俺「あ、いや。なんでもない。」
妹に伝えるの忘れてた。
勝手に決めちゃったけど、良かったかな…?
******
日本 妹の友人の家
妹「ごめんね、エリちゃん。ご飯も食べさせてもらって。」
エリ「気にすることないよ。ね!お母さん。」
エリ母「そうよ、一層の事今夜泊まったらどう?」
妹「…そ、そんなあの…いいんですか?」
エリ母「気にすることないわよ。お兄さんが遠くに行って気が晴れないだろうし。」
妹「あ、ありがとうございます。じゃ、あの大家さんに連絡入れます。」
私は携帯を取り出し、大家さんに電話を入れようとした。
その刹那、私の携帯からベルの音がなり出した。
妹「あれ?…お兄ちゃんからだ。すいません、少し出させていただきます。」
一応断りを入れて、液晶に浮かび上がる電話マークに触れる。
妹「もしもし?」
********
門星学園 自室
俺「あ、繋がった。聞こえる?」
妹『うん…電波、通るんだね。』
俺「あぁ、俺もびっくりした。今日は何かあった?」
妹『ううん、大きな変化はお兄ちゃんがいなくなったことくらい。…あ、そだ今晩は友達の家に泊まることになったよ。』
俺「そっか…。」
暫しの沈黙
切り出したのは、15秒後だった。
俺「なあ、聞いてくれ。」
妹『?』
俺「今日、学園長に頼んでお前も俺と暮らせるようになった。」
妹『えっ!?ちょ、ちょっと待って!嬉しいけど、少し急すぎるよ!』
…やっぱりか。
俺の都合のいいようにして、相手のことを考えなかったというのもあるが。決めてしまったことだ…。
今更、はい辞めますって言っても妹は『嬉しい』と言ってくれた。
一緒に暮らすことには賛成らしい。
俺「…ごめん。」
妹『そ、そんな!謝らなくてもいいよ。私のこと思って決めてくれたことなのに。』
どうしようか…。
そういえば、確かに他の人たちにも何も言ってないや。
俺「…よし。明日もう一度元の世界に帰るよ。」
妹『えっ!?』
俺「えっと、準備手伝うのもあるけど…他の人たちへ挨拶まだしてないから。」
妹『あ…そっか。そだね、挨拶しておかないとね。』
俺「うん、じゃあ続きは明日直接伝えるよ。」
妹『うん、わかった。待ってるね。」
こうして眈々としたまま会話は終了した。
俺「…ふぅ。」
ラミア「何してるの?」
俺「ぬわあああああああ!!?」
後ろを見るとラミアがいた。
他人の部屋なのに何の躊躇もなく入ってきて…ここのセキュリティーはどこに行ったんだ。
俺「妹と話してた…あ、そうだ。」
ふと思い立ち、部屋を出る。
ラミア「えっ?どこ行くの?」
俺「あぁ、少し用があって。ラミアさんも出てってよ。他人の部屋なんだから。」
ラミア「いや、私はえっと、俺くんの部屋を護らないと!」
俺「…」
ラミア「…ん、わかった。」
素直に言うことを聞いてくれたようだ。よかった。
さて、用事を済ませたら早速行くか。現世界へ。
********
日本 主人公宅
妹「…えっと、あとコレ…と」
俺「…ふぅ。」
妹「…あれっ!?お兄ちゃん?なんで?休日にしか帰らないんじゃ。」.
そこには、軽く目に涙を浮かべてる妹がいた。
…多分感動ではなく、あくびだろう
俺「おまえなぁ…もっと早く寝ろ。今日が休日だ。」
妹は驚いた様子で上にある時計を見る。
時間は既に26時、小学生にとっては少しきつい時間だ。
妹「えぇっ!?う、うそ!」
俺「本当だ。ついでに今日は休日だ。」
また慌てる妹。今更フトンを出し始めた。
俺「えぇ〜…」
思わず息が漏れるような声が出る。
妹「…だってさ。準備してたんだよ。」
俺「…ふーん。でも寝ててもいいよ。」
妹「ええーっ!でも、話聞きたいよ!」
そっちか。
俺「…じゃあ、ちょっとだけだよ。」
妹「よしきた!」
…………………
………
ちょっとだけと言いながらも、かなり長い時間話したようでテレビは既に砂嵐の時間にまでになった。
俺「それで、学園長に転送されて…」
妹「…スースー」
俺「あっ…話しすぎたかな。」
これ以上起こす理由もないので、そのまま布団まで運び寝かしつけた。
そういえば、俺も疲れてた。
吹っ飛ばされて頭ぶつけたり、吹っ飛ばされて嘔吐したり。
なんだこれ、ろくな目にあってないな。
まあ誰も酷いやつはいないんだが。
しかし、妹の種族を考えないと…人間以外で。
「ヒト」?
いや言い方変えただけじゃないか。
「妹」?
いやいや種族でもなんでもない。
ならば「少女」とか…いや、種族じゃなくてそれは性別だ。そもそもラミアもタウロさんも少女だし…。
いや、待てよ?
今年ダークエルフが入学したんだっけ。
ダークエルフといえば、闇堕ちしたエルフだよな。
なら、天使がいるんだから堕天使もいる。しかも、どちらも天使。
悪魔って名乗ってたけど、今朝あったコカトリスだって悪魔だし。
俺「(まさか、もしかすると…)」
急いで生徒手帳を開く、魔晶で動くと聞いていたが無事開いたということはこの世界にも魔力はあるのだろう。微かだが。
次に手帳の中の生徒一覧を調べる。
狙いは決まっている、俺も考えが当たっているとしたら…
俺「…あ」
思わず声が出てしまった。
やはり、考えは当たっていた。
これなら、妹の種族も…!
…………………
…………
朝になった、春の長閑かな温かさが眠気を誘うが顔を洗って振り払う。
今日は、昔からの友人に会う日だ。
だらしない顔を見られる訳にはいかない。
妹「おはよ、お兄ちゃん。」
俺「あぁ、よく眠れたか?」
妹「んー、何時から寝てたんだろ?」
俺「そんなことより、顔洗って髪整えな。友達に会うんだろ。」
妹「んー…そだ、久々に髪セットしてよ。」
俺「…そういや、暫く手伝ってなかったな。んじゃ、頑張らせてもらうよ。」