33話「休日は退屈です」
門星学園 自室
今日は授業がない。
生徒会も休みで、アイドル研究部もETOというグループとして早速活動を始めたらしいので俺が出る幕もないということだ。
つまり今日は久々にゆっくりと出来る日ということになる。
俺「……しかし、何もないっていうのも暇だな」
妹は友だちと城下町へ出かけると言ってたし……
まあいいか。今日は一日ゴロゴロしよう。
…………
……
……ダメだ、この世界の時間はゆっくりと進む所為で一日が長く感じる。まだ朝だというのに無駄に過ごしてしまいそうだ。
俺「……仕方ないか」
俺も買い出しついでに町へ出ることにしよう。
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城下町 広場
相変わらずの賑わいだ。
まあ比べるものが前回行ったときのものしかないけど、賑やかなのは間違いない。
俺「……ん、もしかしてタウロさん?」
タウロ「お、俺くんっ!?どうしてこんなところにっ!」
こっちの方が聞きたいけど、タウロさんの右手に大量のパンが抱えられているのを見ると……オヤツでも買いにきたのだと思う。
俺「俺は気まぐれ。暇つぶしに買い物でもしようかなと思って」
タウロ「そうか、なら私も付き合おう」
俺「え、でも悪くないか?タウロさん、荷物持ってるし」
タウロ「そ、そうか……?なっなら少し待て!……少しでいいからなっ!」
そう言い残すとタウロさんは全速力で学園へ向かって行った。
…………
……
5分後
タウロ「はぁ……はぁ……す、少しと言ったのに待たせてしまった。悪かった」
俺「い、いや5分くらい別に待つような時間じゃないし……」
しかし、汗をかいてるとはいえ、すごい速さだ。
確か、ここから学園まで5キロくらいはあったと思うんだけど。学園に入ってタウロさんの部屋で荷物を置く。
それを踏まえても5分というのは流石タウロさんといったところだろう。
俺「とりあえずタウロさん疲れただろうし、どこかで休憩しようか」
タウロ「わ、悪いな……俺くんがいいのならそうさせてもらう」
しかし、タウロさんも変わったな。
前までだったら、「いや俺くんの目的が優先だ」とか言ってそうなのに。
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城下町 カフェ
ちょうど中央広場の近くにいい感じのカフェがあったのでそこにすることにした。
まぁタウロさんの体が大きすぎて店内に入らないため、屋外席だけどこういうのも悪くない。
タウロ「すまない……私の体の所為で屋外になってしまった(俺くんと買い物ついでにお茶……これって俗に言われるデートというものではないのかっ!?)」
謝罪する割には嬉しそうに尻尾をブンブン振っている。
そんなにここの雰囲気が気に入ったのだろうか。
俺「それはいいけど……タウロさんは何にする?」
タウロ「私は……アイスコーヒーにさせてもらう」
俺「うーん……タウロさん。もっと高いものでもいいんだよ?俺の奢りだし」
タウロ「し……しかし」
すると近くを店員さんが通ったので呼び止めた。
俺「すいません、アイスカプチーノとショートケーキを二つずつお願いします」
タウロ「なっ!?」
店員「はい、かしこまりました。しばらくお待ちくださいね」
タウロさんは店員さんが立ち去ってからも呆然としていたが少し経つと口を開いた。
タウロ「お、俺くん……私はアイスコーヒーでいいのに。それにケーキまで」
俺「タウロさんって、でも確かブラックじゃコーヒー飲めないんじゃなかった?」
タウロ「そ、そんなこといつ言った?」
俺「前に皆で夕食食べたときに言ってたよ」
そういうと思い出したのか顔を赤くして俯いた。正直結構可愛い。
俺「あとケーキは俺の買い物に付き合ってくれるお礼、あと走ってくれた分の労いだよ。糖分は摂らなきゃ」
タウロ「むむう……」
俺「これは俺が好き勝手にしたことだよ。俺が良いならタウロさんは別にいいよね」
タウロ「……わかった」
なんだか不服そうだが了承得ることができた……まあ尻尾は正直に横振りしているけど。
…………
……
俺「どうだった?」
タウロ「おいしかった……しかし、次からはカフェラテを頼む」
カプチーノでも苦かったか。
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城下町 雑貨屋
俺「おおっ!このフライパン軽いなぁ、使いやすそうだ」
タウロ「……俺くんは普段から料理をするのか?」
俺「うんまあね、ここに来る前から妹と二人暮らしだったしそれなりにはできるよ。今度タウロさんにご馳走しようか?」
タウロ「……か、考えておこう」
なんだろ、不安なのかな。
ラミアもがっつり食べてたから、異種族に害があると言うわけは無いと思うんだけど。
俺(タウロさんはケンタウロスだから、人参メインがいいかな。サラダとか)
タウロ(俺くん、なんだか真剣に悩んでいるな。主夫みたいだ)
とりあえず包丁も見ておくか。
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城下町 銀行
タウロ「銀行? 何か用があるのか?」
俺「うん。ヴァンプやオオカミがよく俺のゲームするから、せっかくだし新しいゲームでも買おうかなと思って」
タウロ「ああ、俺くんの世界の通貨に変えてもらうのか」
俺「うん、まあどうせ5000円くらいしか落とさないけどね」
そう言いながら俺はATMで指を動かした。
タウロ「そ、その俺くん」
俺「なに?」
タウロ「わ、私も練習したんだ。人間になれる魔法」
俺「へえ〜、タウロさんの人間姿か。想像できないな」
俺がそう言うとタウロさんは一歩下がったところでゆっくりと息を吐いていることがわかった。
タウロ「よ、よかったら今度俺くんの世界に連れて行って欲しい。……興味だけではダメか?」
俺「……うーん、難しいな。考えておくよ」
日本人のこのパターンは大体ダメということなんだが、タウロさんはそれを知らないためか尻尾のスウィングが凄いことになっていた。
……本当に考えておこう。
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城下町 映画館前
妹「あ、お兄ちゃん」
俺「なんだ映画に行ってたのか」
ウロス「こんにちわー」
偶然にも妹と遭遇したので足を止める。
妹「へーお兄ちゃんは買い物かぁ。……そうだ!もし服買いに行くんだったら店前のクレープ買ってきてよ!持ち帰りできるらしいし」
俺「……あー予定になかったけど、まあいいか。寄って行くよ」
タウロ(俺くんは寛容だな。……しかし、あのウロスという子。俺くんの妹の友だちということだが、私よりも胸がデカい。……俺くんはどう思っているのだろうか)




