17話「スライムさんは酸性です」
門星学園 高等部βクラス
ラミア「んーっ今日も無事終わったぁ。」
魔法の授業まであと4日となった日
いつもと変わらず、変わった生活が日常となりつつあるなか、今日もラミアは決まったセリフを言う。
俺「…そういやさ。なんでこの学園って4時限授業しかないのかな。俺の世界は午後からもあったぞ?」
対して、オオカミが答える。
オオカミ「さあな。世界が違うと時間も変わったりするんじゃないか?」
相変わらずオオカミくんはマクロな目線で考えていると思う。
そんなことを考えながら、教室を出ようとする。
その時、いつもの癖のある声が聞こえてきた。
ケットシー「あー、そうにゃ。そこの6人、ちょっとこっち来てにゃ。」
6人といっても、もうすでに教室にはいつメンの人たちしか居ない。
ラミア「な、な、なんですか。ま、まさかまた補習ですか!?」
ケットシー「あーそれもあるけど、今回は違うにゃ。」
後ろから、ラミアを哀れむ声が聞こえた気がするが無視をする。
ケットシー「スライムさんが居ないようだけど、まあ仕方ないにゃ。えっと、この間の学外トラブルにゃんだけど…」
皆「「すいませんでしたっ!」」
自分も発したが、こんなに声って揃うものなのかと思う。
先生は少し戸惑い肉球を胸の前で振る。
ケットシー「違うにゃ違うにゃ、説教じゃなくて…まあいいにゃ。ほれ、お前たちの呼び出しにゃ。」
見るからに貴族臭がする筒状の羊皮紙を渡される。
入学案内のときみたいに蝋印がついているが、デザインが違う。
すると、それを開いて先生はナ行を崩しながらも読み始めた。
ケットシー「『4丁目の純喫茶で喧騒を鎮めた学園生よ。上弦の月が浮遊大陸と重なる時、今晩の舞踏会に間に合うよう王宮へ迎え。』とのことにゃ。」
…いや、わけわかんないっす。
ヴァンプ「なぁ、上弦の月の日って…」
タウロ「ああ、今日だな。」
上弦とか下弦とかってよくわからないけど王宮って、あの城のことだよな…。
ラミア「え、えっ!?なんで私たちが!?」
ケットシー「そんなの僕も知りたいにゃ。とにかく、学園の生徒としてふざけた真似はしないようににゃ。」
この人、地味に生徒をバカにするよな。
……………………
……
門星学園 自室
とりあえず、この先どうするかを考えるために、一番広い俺の部屋で話し合うことにした。
タウロ「つまり、このところで出された結論だとあの時、助けた女性が実は王宮の関係者で、お礼として舞踏会に招待したということだな。」
タウロさんは、どこから取り出したかわからないホワイトボードにマジックでまとめていく。
ちなみに、ラミアは予想通りそこらへんを漁っている。
もちろん変なものはないので困らないが、やはり落ち着かない。
ラミア「俺くん、何これ!?新しいゲーム買ったのなら教えてよ!」
あー、それが見つかったか。
タウロ「ラミア!今はそんな時間じゃない!…俺くんあとでゲーム少しやらせてくれ。」
…そうか。やっぱり、異世界のものだから珍しいのだろう。
オオカミ「ところでだ…舞踏会とか言ってたよな?…服どうするんだ?」
まあ制服でもいいだろうが、相手は王宮だ。
制服よりも位の高いそれなりの正装が必要だろう。
タウロ「…。そうだ、新入生歓迎週間の夕食のときの服はどうだろう。」
ヴァンプ「おお、なるほどな。」
これには全員が感嘆の声を上げた。
あまりあれから日は経っていないのだが、懐かしく感じる。
ラミア「…そういやさー。何か粗品でも持って行くべきかなー?」
ラミアの疑問に、再び悩み出す。
タウロ「…どうだろうか。そうした方がよい…とは思うが…」
俺「本当に粗品になるぞ?」
何度も言うが、相手は王宮だ。
ケーキや饅頭ていどでは釣り合わないだろう。
俺「そもそも、呼ばれ方も半端強制だしこっちから持っていく必要は…」
オオカミ「まあ、確かにそうだな。」
オオカミを含め、他の人たちも納得したようなので次の話題をする。
俺「えっとさ、気になってたんだけど浮遊大陸に月が重なるときって具体的には何時のことを言っているん
だ?」
すると、またオオカミが応えた…というか口ごもった。
オオカミ「えっと…俺は月に敏感だから分かるんだが…」
ヴァンプ「なんだ、はっきりしないな。」
オオカミ「…この部屋の時計で4時だ。」
一瞬静まり返ったあと、全員時計を見る。
そのとき、丁度いいタイミングで時計の鐘が3度響いた。
ヴァンプ「…ヤバいんじゃないか?」
俺より先にヴァンプが囁く。
タウロ「…と、とにかく…15分までに支度するぞ!!」
タウロさんが叫ぶと、みんな一斉に部屋を飛び出した。
……………………
……
門星学園 校門
15分後に集まることになったもののラミアが髪を整えるのに遅れたせいで30分になってしまった。
俺「ど、どうする!?残り30分だよ? 」
タウロ「全くだ!!ラミア!だからお前は…」
?「なんだ。困りごとか?」
タウロさんが怒り心頭しかけた瞬間、あるときお世話になった生徒が声をかけてきた。
俺「あ、ケルベロスさん!あのときはどうもです。」
ケルベロス「ん?あぁ、あの時の。足は大丈夫のようだが、また何か問題が出来たのか?」
皆は冥界の番犬を目の当たりにして呆然としているが、俺はなんとか王宮に行くことを短くまとめて話すことが出来た。
ケルベロス「な、なに!?それは大変じゃないか!立ち話をしている場合じゃない!しかし、6人か…」
ケルベロスは少し悩んだ後、何かを思いついた。
ケルベロス「よし、女は背中に乗れ!男は…悪いがーー」
俺はそれを聞いて、フラッシュバックというものはこれかと思った。
……………………
……
城下町 王宮前
間近で城を見るのは初めてだけど、ここが数ある城の中でも立派な方に入るのは見てわかった。
現世界で昔行った某テーマパークの城をそのまま大きくしたような姿は見るものを圧倒させるという表現がまさに似合っている。
それにしても、またケルベロスさんに助けられるとは…
俺「ケルベロスさん、ありがとうございます。」
ケルベロス「いや、問題ない。それじゃあ、健闘を祈る。」
そう言い残してケルベロスさんは走り去った。
ラミア「俺く〜ん。気持ちわるいよぉ…」
タウロ「ま、全くだ…。私は身体が大きいからまともに捕まることも大変だというのに…」
オオカミ「いや、あんたらはいいよ…。俺も他の狼に喰われることは初めてだったわ。」
ヴァンプ「俺くんよ…。服、少し湿っぽいんだが。」
残されたのは、言葉だけじゃなかったようだ。
俺「…ん、まぁ仕方ないよ、時間なかったんだし。服も意外とすぐに乾くから。」
…臭いは保証出来ないけど。
妹「それにしても、すぐだったね。何分くらい?」
一応忍ばせていた携帯を手に取る。
俺「…5分しか経ってない。」
ラミア「ええぇっ!?じゃあ後…25分もあるのか!」
ケルベロスさん…早すぎっす。




